えんぱいあな日々 みにまむ! 第六話「陽菜乃とご主人様と資本論?」
フランソア:
ご主人様まだできないの?待ってるんだけど
瑠莉:
ぐぬぅっ!
瑠莉:
これ取引の関連法律が六か国でかなり複雑に絡まっていてに…矛盾もあるし
フランソア:
だから注意したのに「大丈夫です週末までに契約書は作ります」とか言って。どうするの?
瑠莉:
フランソアさん手伝っていただけないでしょうか?
フランソア:
イヤダ。というより無理。フランソアは国際流通取引の法律は専門外。ちなみに紅葉もまだ勉強中だからそれほど詳しくないから頼んでも無駄だからね。
瑠莉:
だったら…どうしろと
フランソア:
お客様にちょっと待ってもらうしかないじゃない? 土下座でもして
瑠莉:
えっ‥‥それは…
フランソア:
これだけの大きな流通取引なら流通契約の専門家でる紅葉のパパか、最低でも楓にコンサルティングを頼むべき。 もし失敗したらうちのグループの資本、かなり失うよ? リスクは取るべきではない
瑠莉:
そうだけどさ…せっかく楓と沙織が源蔵閣下のスコットランドの別荘で閣下達と家族団らんしてるじゃない…邪魔したくないし。
瑠莉:
でもさすがに契約決まってて伸ばすは…来週は先方もクリスマス休暇に入っちゃうし
フランソア:
仕方ないな…ちょっとまって
・同時刻 Club GreenWood's
凛空:
エトワール料理長のなべ焼きうどんと山菜おにぎり美味しかった~♪。とくに冬の山菜はしっかり味がしまっていて絶品
穏海:
凛空、顔が緩み切ってだらしがありませんわよ。 メイド長なのですから何時(なんどき)も他のメイドに観られたとしても威厳を失わないように
凛空:
そういう威厳とか? は凛空にはもともと無いから、親しみかがる路線で行くと決めているし!
穏海:
うちのクラブも以前とくらべ大人数になっておりますので、少しは威厳を付けてください!
凛空:
そういうのは副メイド長の穏海に任せるから。 あっフランソアちゃんから電脳通信?
穏海:
フランソアさんですか?
フランソア:
ということで、ちゃんとした依頼なので費用は払います! どうか凛空お姉ちゃんチカラになってもらえない?
凛空:
お金とかはいいんだけど…それより凛空が瑠莉オーナーのコンサルティングとかできるのかな?
穏海:
妹のお願い、断わりませんわよね? 愛理さんに連絡いたしましたら今は時間は取れるそうなので送迎は大丈夫だそうです。
穏海:
本日のメイド長業務はわたくしがやっときますので、ほら凛空
凛空:
チカラになれるかわからないけど、できるだけ頑張る! すぐ行くからまっててね
フランソア:
お願いします!
・同時刻 Club Forest図書室
里穂:
まだかかりそう?
ロッテ:
日本語が…フランス語で書いたらダメ?
里穂:
ダメ♪
陽菜乃:
わたし‥わたし‥うっ…
里穂:
陽菜乃? どうしたの? 身体の調子でも悪いの?
陽菜乃:
わたし!日本人なのにこの本、日本語で書いてあるのに! 何が書いてあるのかさっぱり読めません! わたし本当は違う言語で生きてたのでしょうか!
里穂:
!!
ロッテ:
どういうこと? 今回のレポートの陽菜乃の担当の本が読めないってこと?
陽菜乃:
わたしやっぱり馬鹿なんです! この本に何が書いてあるのか理解できないとか! ロッテはフランス人なのにちゃんと読んでレポート書いてるのに…うぅう…(涙)
ロッテ:
わたしレポートの本はフランス語訳が図書室にあったからフランス語で読んだけどね。あと参考文献の方は英語…
陽菜乃:
うわぁ~ん!(涙)
里穂:
陽菜乃! 泣く事ないじゃない? 落ち着いて、わたしもうレポート終わってるから陽菜乃を手伝うから、ロッテは自分のレポート進めて!
ロッテ:
うんできるだけ早くやって私も陽菜乃の事手伝うから!
里穂:
えっと陽菜乃はクジでどんな本があたったんだっけ? テーマ
陽菜乃:
私はカールマルクスの資本論になったんです。
里穂:
うわ…教科書にさくっと載ってたけど‥あれがテーマ? まあわたしもアダム・スミスの国富論だったからあの先生ならありえるか。それで?
陽菜乃:
図書室で日本語訳はやっと見つけて読みはじめたんですけど…英語とその横に日本語訳がついてるけど…第一部から何がなんだか…もうこれわたしの知ってる日本語じゃないです‥‥
里穂:
なになに?
(8 ) 商品の相対的価値形式-例えばリネン-は、ある商品の価値を表す。
そのある商品は、その物質や性質とはまったくかけ離れた何か別の物で、例えば、上着のようなものである。このそれ自身の表現が、そのものの底に横たわる、ある社会的な関係を指し示す。 等価形式は、その逆である。
この形式の神髄は、物としての商品自体-上着-であり、そのままで、価値を表す。そして、自然的自体のまま価値形式が付与されている。
勿論、このことは、価値関係が存在している期間に限って、うまく維持されるもので、その時、上着は、リネンに対して等価の位置に立っている。
だから、ある物の特質は、他の物のそれらとの関係の結果である、ではなくて、それらが、価値関係にあることのみを明かしているだけなのである。
里穂:
にもかかわらず、上着は、その特質が直接的に交換可能であるとか、重さがあるとか、我々を暖かく保って呉れる能力があるとかの、それらの特質がごく自然に付与されているからこそ、等価形式が付与されているかのようにある人の目には現われる。 この形式は、その謎めいた性格ゆえに、その形式が完璧な発展を経て、貨幣の形で、彼らの目の前に現われるまでは、ブルジョワ政治経済学者の注目からは、逃れていたのである。
彼は、黄金や銀の不思議な性格をなんとかうまく説明しようと試み、あまり目映えのしない商品に金銀の代理をさせてみたり、あの時この時で等価の役割を演じた可能性がある全ての商品のカタログを列挙したりして、満足を更新し続けるばかり。
彼は、この 20ヤードのリネン= 1着の上着 という最も単純な価値の表現が、すでに、等価形式の謎の解法として提示されているにもかかわらず、僅かな推察力すら持っていないのである。
カール・マルクス 「資本論」
第一部 第三節 価値の形式、または交換価値 より
里穂:
えっとリネンは‥上着で上着が等価交換? 等価形式で…え~と…
陽菜乃:
こう文字は読めるんだけど…何を書いてあるのか読めないの…里穂わかる?
里穂:
えっとブルジョワ政治経済学者…ってそもそも何? えっとそれが‥これから目をそらし…えへへっ…
陽菜乃:
えへへっ…
ロッテ:
二人とも! シッカリして! 変な声でてるよ!
ロッテ:
二人とも良く聞いて! 紅葉お姉さまは商談でいないけどフランソアお姉さまとご主人様は執務室にいるはず!こういう時は教えてもらうのが一番
里穂:
そっかご主人様やフランソアさんならわかるよね確かに、オーナー業って経営者だものね!
陽菜乃:
でもご主人様もフランソアさんも忙しいし
ロッテ:
ほら読み解き方とかだけでもアドバイス貰った方がいいよ! 何も手がかりが無いのは厳しいでしょ?
里穂:
うん! アドバイスだけとかなら時間もそんなにかからないだろうし! ねえ陽菜乃!
陽菜乃:
それくらいならご迷惑にならないかな? …そうだね