みにまむ 第六話「陽菜乃とご主人様と資本論?」その2

 
・同時刻 Club Forest図書室

里穂:
まだかかりそう?

ロッテ:
日本語が…フランス語で書いたらダメ?

里穂:
ダメ♪

陽菜乃:
わたし‥わたし‥うっ…

里穂:
陽菜乃? どうしたの? 身体の調子でも悪いの?

陽菜乃:
わたし!日本人なのにこの本、日本語で書いてあるのに! 何が書いてあるのかさっぱり読めません! わたし本当は違う言語で生きてたのでしょうか!

里穂:
!!

ロッテ:
どういうこと? 今回のレポートの陽菜乃の担当の本が読めないってこと?

陽菜乃:
わたしやっぱり馬鹿なんです! この本に何が書いてあるのか理解できないとか! ロッテはフランス人なのにちゃんと読んでレポート書いてるのに…うぅう…(涙)

ロッテ:
わたしレポートの本はフランス語訳が図書室にあったからフランス語で読んだけどね。あと参考文献の方は英語…

陽菜乃:
うわぁ~ん!(涙)

里穂:
陽菜乃! 泣く事ないじゃない? 落ち着いて、わたしもうレポート終わってるから陽菜乃を手伝うから、ロッテは自分のレポート進めて!

ロッテ:
うんできるだけ早くやって私も陽菜乃の事手伝うから!

里穂:
えっと陽菜乃はクジでどんな本があたったんだっけ? テーマ

陽菜乃:
私はカールマルクスの資本論になったんです。 

里穂:
うわ…教科書にさくっと載ってたけど‥あれがテーマ? まあわたしもアダム・スミスの国富論だったからあの先生ならありえるか。それで?

陽菜乃:
図書室で日本語訳はやっと見つけて読みはじめたんですけど…英語とその横に日本語訳がついてるけど…第一部から何がなんだか…もうこれわたしの知ってる日本語じゃないです‥‥

里穂:
なになに?

(8 ) 商品の相対的価値形式-例えばリネン-は、ある商品の価値を表す。

そのある商品は、その物質や性質とはまったくかけ離れた何か別の物で、例えば、上着のようなものである。このそれ自身の表現が、そのものの底に横たわる、ある社会的な関係を指し示す。 等価形式は、その逆である。

この形式の神髄は、物としての商品自体-上着-であり、そのままで、価値を表す。そして、自然的自体のまま価値形式が付与されている。

勿論、このことは、価値関係が存在している期間に限って、うまく維持されるもので、その時、上着は、リネンに対して等価の位置に立っている。 

だから、ある物の特質は、他の物のそれらとの関係の結果である、ではなくて、それらが、価値関係にあることのみを明かしているだけなのである。

里穂:
にもかかわらず、上着は、その特質が直接的に交換可能であるとか、重さがあるとか、我々を暖かく保って呉れる能力があるとかの、それらの特質がごく自然に付与されているからこそ、等価形式が付与されているかのようにある人の目には現われる。 この形式は、その謎めいた性格ゆえに、その形式が完璧な発展を経て、貨幣の形で、彼らの目の前に現われるまでは、ブルジョワ政治経済学者の注目からは、逃れていたのである。 

彼は、黄金や銀の不思議な性格をなんとかうまく説明しようと試み、あまり目映えのしない商品に金銀の代理をさせてみたり、あの時この時で等価の役割を演じた可能性がある全ての商品のカタログを列挙したりして、満足を更新し続けるばかり。 

彼は、この 20ヤードのリネン= 1着の上着 という最も単純な価値の表現が、すでに、等価形式の謎の解法として提示されているにもかかわらず、僅かな推察力すら持っていないのである。

カール・マルクス 「資本論」
第一部 第三節 価値の形式、または交換価値 より

里穂:
えっとリネンは‥上着で上着が等価交換?  等価形式で…え~と…

陽菜乃:
こう文字は読めるんだけど…何を書いてあるのか読めないの…里穂わかる?

里穂:
えっとブルジョワ政治経済学者…ってそもそも何? えっとそれが‥これから目をそらし…えへへっ…

陽菜乃:
えへへっ…

ロッテ:
二人とも! シッカリして! 変な声でてるよ!

ロッテ:
二人とも良く聞いて! 紅葉お姉さまは商談でいないけどフランソアお姉さまとご主人様は執務室にいるはず!こういう時は教えてもらうのが一番

里穂:
そっかご主人様やフランソアさんならわかるよね確かに、オーナー業って経営者だものね!

陽菜乃:
でもご主人様もフランソアさんも忙しいし

ロッテ:
ほら読み解き方とかだけでもアドバイス貰った方がいいよ! 何も手がかりが無いのは厳しいでしょ?

里穂:
うん! アドバイスだけとかなら時間もそんなにかからないだろうし! ねえ陽菜乃!


陽菜乃:
それくらいならご迷惑にならないかな? …そうだね

その3へつづく