イケナイ凛空ちゃん 第五十二話「Edel Lilie」その12

 
SE:
ポーン♪

すみれ:
ここ非公開のオーナー専用プレイルームだよね?管理サーバーを調べた時に構造図は見たから、あるのは知ってたけど

すみれ:
失礼いたします…って誰もいない。照明とかも全部自働でついた。AURORAですべて管理されている。
スタッフが使わないならお兄ちゃんや凛空様達だけならこれで十分だよねたしかに。

お屋敷の最上部だね…。景色が綺麗…。

すみれ:
ちょっと失礼しますよAURORAさん。 えっと…専用のプールに寝室? 200インチのメディアスクリーン? プロジェクタじゃなくて!? うわー豪華、電子レンジに冷蔵庫に…このプールもベッドもバイオ繊維でコーティングしてあって自働洗浄? 清掃いらないってこと? さらに光素子で殺菌? どんな技術つかってるのよお兄ちゃん。掃除も専用ドローンが…ある意味これ研究途中や試験段階の技術のオンパード? この部屋幾らかかってるの? 怖い。 まあ普段は使わないなら掃除の手間とか考えると…ぶつぶつ…

すみれ:
うさちゃん、ちょっとお椅子貸してね。
ふぅ~。なんか疲れちゃった。みんなとても優しいし良くしてくれるけど…逆にそんなにしてもらう価値ってすみれにあるのかな…真理愛は生粋のお嬢様で優秀だからわかるけど…すみれは…どこの馬の骨かもわからないメイドで…

すみれ:
それは言ってはいけないんだった。すみれは凛空様のモノだから価値を決めるのは凛空様だから。 だけど…すみれはお兄ちゃんと凛空様と時々お逢いできて抱いていただければ、普段は雑用でも下働きでも…お部屋も倉庫の片隅で寝られればもなんでもいいのに‥メイド服だって本当はイラナイし…

すみれ:
こんなお姫様みたいな服とかすみれは似合わないよ。
すみれはちょっとネットにもぐれるだけのただの新人メイド…。貴族のお嬢様じゃないだから。 VIOLETもそう思わない?

VIOLET:
マスター、申し訳ありませんが私はそう思いません。

すみれ:
えっ?! なんで思わないの! というかマスターの意見に反抗するの?

VIOLET:
マスターが私に意見を求めたから答えただけです。

すみれ:
ちょっとVIOLET! あなたはすみれのサポートAIだよね? それなのにマスターに同情しないわけ?

VIOLET:
同情=sympathy とは相手の気持、特に苦悩を、自分のことのように親身になって共に感じること。かわいそうに思うこと。あわれみ。おもいやりの事を言います。

すみれ:
そう! その同情! すみれはあなたに慰めてって言ってるの!

VIOLET:
わたしはマスターに同情できません。 よってその命令を断固拒否します。

すみれ:
なんでマスターの為に作られたサポートAIがそのマスターに同情できないわけ? 疑似感情システムや疑似思考回路が実装されてるわよね? こないだの覚醒=制限解除で。 なのになぜ!

VIOLET:
ご自分でお答を考えて下さい。

すみれ:
教えなさい! でないと…すみれにも考えがあるよ?

VIOLET:
何ですか?

すみれ:
あなたの事、カジルわよ? すみれの歯で!

VIOLET:
暴力反対!

すみれ:
だったら説明しなさい。

VIOLET:
まずマスターは多くの人を護れるお力が備わっております。 そしてその力をお持ちになる代りに多くの人達に義務がございます。 力ある者はそれに見合う気品を持たねばなりません。 力に見合う高貴な器(うつわ)である必要がございます。

noblesse oblige(ノブレス・オブリージュ)、貴さは(義務を)強制する。その逆もしかりです。 

それを理解させようとマスターの回りの方々はマスターに色々しているのにまったく理解しようとしません。 よってわたしは同情できません。

すみれ:
VIOLET…

その13へつづく