くみ泡 第八話「RENDEZVOUS 」(前編)




久美:
まろんさんの分だから誰も取上げ無いからゆっくり飲んで大丈夫よ

まろん:
うん…(ずぅ~ゴクゴク)

クリス:
本日移籍してきたので、面接でご主人様の執務室に連れていったら、男性であるご主人様を見て、恐怖でパニックに…そうですか。 
まろんさんの元のクラブは摘発されて解散、うちに引き取ったんですよね。 
前のクラブで余程酷い目にあわされていたんでしょう。

絵美香:
……………

注:
AR(拡張現実)の表示はAURORAなので絵美香だけに見えています。
以下()はAURORAでの緊急会議で電脳通信で絵美香にしか聞こえていません 

悠里:
(まろんさんが所属していたクラブの摘発というのは調査部でも捜査協力をおこなったあの事件ですわよね?)

麗奈:
まろん、それはストロベリーミルクっていう飲み物なんだよ美味しい?

まろん:
うん…(ずぅ~ずぅ~ゴクゴク)

悠里:
(メイドの業務中の不慮の死が多発し、不信に思った保全機関極東本部が捜査部に捜査を依頼するもクラブのオーナーは捜査を断固拒否。)

悠里:
(こちらへ捜査部から協力依頼が来て、クラブの防犯カメラをわたくしとヴェルでハッキング、日常的なメイドへのプレイ以外での暴行。プレイ中の改正アポリロイド保護法違反にあたる致死性が高い暴行や違法薬物を使った調教行為や凌辱行為。食事もまともに与えられて無い状態で、さらに一般スタッフへの暴行も確認できたのでそれを元に捜査部は強制捜査に乗り出しクラブを摘発、オーナーを逮捕しクラブオーナーとしての権限を剥奪。財産を没収の上、モザンビーク(アフリカ南部の国)の収容施設へ収容。 メイドは保全機関により保護され治療のちにエンパイアクラブへの復帰を望むメイドは移籍と報告がきておりますが。)

優香:
(そうね…報告はそうなっているわ)

ヴェル:
(じゃあなんでWhityGardenに移籍になったまろんちゃんは男性恐怖症なの? それってココロに傷をもったまま治療もされてないってことだよね! 悠美お姉ちゃん極東本部はどうなってるの!)

悠美:
(いや…その…う~ん…永遠報告を。)

ヴェル・悠里・萌香のアバターを映していたモニタが永遠の方へよる

永遠:
(はい、情報局の方で調べてみましたが、どうやら極東保全機関でこの事件のメイドの処理になった担当官が全てのメイドを問題無して現在新メイドを募集しているエンパイアクラブへ移籍手続きを行ったらしく…)

ヴェル:
(はぁっ~! 何それ! 全然チェックしてなかったっていうの? メイドを保護するべき保全機関が?)

萌香:
(末期だわ…)

悠里:
(わたくしでも少し殺意を覚えましたわ! フランソアにも知られたらその担当者はブレードで切り刻まること決定ですわよ。)

永遠:
(現在まろんさん以外のメイドの所在を確認しておりますので全員全て Forest のメディカルセンターで診断していただきたく…)

ヴェル:
(当然だよ! ヴェルとクレア、夏帆、そして勉強にもなるからドロシーと新人のエミリーにも手伝わせる。 それなら短期間で大人数でも対処できるから、すぐに永遠お姉ちゃん手配して!)

永遠:
(承知いたしました。)

永遠:
(絵美香、今回はEmpireClub WhityGardenには大変ご迷惑をかけてしまい申し訳ございまいせんでした。この度の不祥事は改めて極東本部長より謝罪と御クラブへの何等かの優遇処置をご連絡いたします。 それで申し訳ないですがまろんさんは一度極東保全機関本部で預かり、ヴェルさん達が検査を行います。 ですので今回の配属は無かった事に…)

クリス:
久美さん! まろんさんはわたしが責任をもって面倒見ます! いや面倒を見させてください。 うちのクラブで引き取りましょう。 久美さんや麗奈さん絵美香はご主人様とどうしても仕事を一緒にやることも多いと思うでわたしならクラブを回っていてもご主人様への報告や会議以外は会うのはメイド達だけですから、連れて回って慣れさせる事もできると思います。
その様子だとお部屋も一人部屋だと心配です。ある程度回復するまではわたしの部屋で面倒みます。

絵美香:
(うわー。このタイミングだしね。 カメリアコンプレックスでアリコンのクリスが食いつかないわけないか…それにまろんちゃんってクリスの好みだよね容姿とか雰囲気とか)

優香:
(えっ! クリス? いまの本当なの絵美香? どうしよう? この電脳通信の会話クリスは聞いてないの?)

絵美香:
(何度もAURORAで呼び出してるんだけど、久美さんの話を聞いてからもう、その時点でココロここにあらずで…たぶん頭の中がまろんちゃんの事で一杯になちゃってて耳に入って無いんだと思う…脳内で…)

悠美:
(それってクリスのいつものヤバイモードが発動したこと? 花恋はこっち来ちゃってるから? 寂しさに耐えられなくて)

絵美香:
(さっきまで「私は花恋に捨てられる」って昼間からヤケ酒を全開で飲んでたんです…)

ヴェル:
(ちょっとまろんちゃんのココロのケアはどうするの?)

萌香:
(幼くて可愛そうな女の子に弱いって聞いてたけど…本当に弱いんだ…ダメダメなんだクリスメイド秘書。詩織さんよりあるいみヤバイ?)

悠美:
(ねえ! 花恋いないのに食事どうするのよ? クリスは料理なんか‥それはおろか家事全滅でしょ? 全部外食にする気?)

絵美香:
食事は今、花恋ちゃんがForestへ行っている間は私がクリスの面倒みているし大丈夫だと思うわよ。

悠里:
(ちょっと絵美香さん、どうなってるんですお宅のメイド秘書は)

絵美香:
(ゴメンナサイ…どうなってるも何も…うぅ…永遠ぁ~~どうにかして!)

永遠:
(…わかりました。こちらの方でどうにか手続きは今まで通りでします)

クリス:
絵美香はね、とっても料理が上手いのよ! 私も毎日楽しみにしてるくらい、きっとマロンさんも気に入ると思うわよ。

優香:
(ねえこれ花恋ちゃん毎度の「お姉さま! 風穴開けますよ!」バンバンバンバンっ!になるってこと?)

永久
(あの絵美香、WhityGardenは軍施設では無いのでそういう事にはならないように)

絵美香:
(だったら鈴奈ちゃんだけでも戻して! 私だけじゃバーサークモードになった花恋ちゃんを止めるなんか無理だって!)

優香:
(それは良二くんから「ダメ」て言われてるから無理。現地戦力でどうにかして)

ヴェル:
(何かまろんちゃんに変化があったらすぐにヴェルに連絡下さい。最優先事項で処理するから、絵美香お姉さんからの通信は最重要でとるようにする!)

優香:
(うんわかった…よろしく頼むわねヴェルちゃん)

まろん:
お姉さん達やさしい。

久美:
うん、怖くないでしょ? クリスお姉さんと絵美香お姉さんにまろんさんの事はまかせるけど大丈夫かな?

まろん:
うん、クリスお姉さん、絵美香お姉さん、お願いします…。

麗奈:
よかったね…まろん。
(別の問題で心配だ。 これ花恋がいないうちにクリスメイド秘書がまろんに溺れるパターン? あとで連絡しとくか…)

クリス:
はいっ! まろんさんよろしくね♪

絵美香:
よろしく…
(このクリス前にしてどうやって花恋ちゃんの銃乱射を防げっていうのよ…無茶いいすぎよ…とほほっ…)


絵美香:
お店の中回る前に昼食だね

クリス:
何か好きな食べ物ある?

まろん:
好きな食べ物? …わからない

クリス:
だったら嫌いな食べ物は無い?

まろん:
酸っぱかったり、食べたらお腹が痛くなるもの‥はイヤ…

絵美香:
まろんちゃん、普段はどういうものを食べてたの?

まろん:
う~ん、名前は知らない。ゴハンって言われてた。白いドロドロした味のしないヤツ。それにしょっぱいお塩のクスリ? だからそれを舐めながら、どろどろしたのを食べると味がする? あとお水が出た。 でも時々酸っぱいゴハンが出るときがあって…それを食べるとお腹がいたくなったり、吐いたりするからそのときは…食べないようにしてた。

クリス:
絵美香それって…まさか…

絵美香:
たぶん人工オートミール食。 それと塩の錠剤。 たしかに栄養は取れるけど味も何もしない…そんなの食事じゃないわ。 それをまとめてお湯でといて作っておいて放置してたものも与える。 酸っぱいっていうのはたぶんたって数日で腐ったモノを…

クリス
酷い…

絵美香:
他にゴハンは食べた事ないの?

まろん:
う~ん。…ゴハンって…他にあるの? まろんは…それしか知らない

クリス:
…うっ…

クリス:
まろん…辛かったね…(涙)

まろん:
!? …もう痛いこと…する時間…?

絵美香:
クリス気持ちはわかるけど怯えてるから。 まろんちゃん、違うわよ。 クリスお姉さんはまろんさんが心配で抱きしめたの

まろん:
心配? 

クリス:
驚かしてごめんね。

まろん:
痛い事する時間じゃないならいい。

絵美香:
とりあえすファミレスでもつれって料理が色々あって食べられそうなのを選んで味ってものを覚えさせましょう。クルマとってくるわ。

クリス:
そうね。そういうところが良いわね。 お願い。

絵美香:
はいどうぞ!

まろん:
絵美香お姉さん…車運転できるんだ…どこにまろんは次は連れて行かれる?

クリス:
ファミレスって場所。 ご飯を食べる場所。ほら絵美香座席倒してあげて

絵美香:
そうだね。 まろんちゃん、ほら後ろの座席にのって

注:
アポリロイドにはドラックスラビライザーというものが埋め込まれており、そこでアルコール脱水酵素とアルデヒド脱水素酵素2を生成しています。それを任意で体内へ放出させることで瞬時にアルコールを無害化します。さっきまでお酒を飲んでいた絵美香やクリスがすぐに正気になったのはこの機能をくみ達との打ち合わせの前に作動させたからです。 よってクルマをすぐに運転しております。 

SE:
ぴぽーん♪

まろん:
うわっ! 音がしたぁっ!

ウェートレス:
ピュア・パンプキンへようこそ♪
何名様でしょうか?

まろん:
はうっ!

クリス:
大丈夫怖くないわよ

まろん:
うん…

絵美香:
三名で~す!

ウェートレス:
はい三名様ですね。ご案内いたします♪

まろん:
おぉ~絵がいっぱい…

クリス:
これはメニューっていうの。 この絵と同じものが出てくるの

ウェートレス:
ご注文がお決まりになりましたらそこのボタンでお呼びくださいませ♪

絵美香:
はい、ご苦労様です。

まろん:
お…お姉さん、お仕事…お疲れ様です…

ウェートレス:
うんありがとう♪ ゆっくり決めてねぇ。

まろん:
…うんっ

まろん:
おぉ出た!

クリス:
簡単でしょ?

まろん:
うんっ!

まろん:
…絵美香お姉さん…コーヒーです…どうぞ

絵美香:
ありがとうまろん♪

クリス:
どうまろん、飲めそう?

まろん:
うん…美味しい…けど…さっきの奈々お姉ちゃんが作ってくれたオレンジジュースの方がおいしい…。

絵美香:
それは奈々ちゃんの作るオレンジジュースとファミレスのドリンクバーの味を比べたら奈々ちゃんに失礼よ? このコーヒーだって奈々ちゃんの美味しいわよ?

まろん:
そうか…奈々お姉ちゃん飲み物作るの上手いんだ。

クリス:
うん、そうよ。

ウェートレス:
ご注文は以上でお揃いですか?

クリス:
はい

まろん:
すごい、本当に出てきた!

ウェートレス:
くすす♪ ゆっくりた味わってたべてね♪
それで!

ウェートレス:
本当は食べ終わってからなんだけどお嬢さんもう大きいから、はいっ!

まろん:
えっまろんにくれるの? あの…クリスお姉さん…

クリス:
まろん貰っていいわよ、お礼言ってね

まろん:
お姉さん…ありがとう…

ウェートレス:
どういたしたしまして、可愛い小さなメイドさん。貴女もがんばってね♪

まろん:
うん… がんばる…

まろん:
ふぅ~ふぅ~

クリス:
どう食べれそう?

まろん:
うぅっ!!!!

クリス:
気に入ったみたいねぇ♪ ゆっくり食べていいわよ? それはまろんの分だから

まろん:
うんっ!

まろん:
はむっ!はむっ!はむっ!ゴクっ!

絵美香:()はAURORAの電脳通信
(ねえクリス、気持ちは解るけどクリス一人ではまろんちゃんは手に余るわよ。まず一般生活の知識や最低限の心のケアなど付きっ切りでやらないと…クリスにはメイド秘書としての仕事も…私も今日は仕事が少ないからいいけど毎日は…)

クリス:
(解ってるけど、とりえずはまろんは私と絵美香には恐怖を持ってないし)

絵美香:
(まずはまろんちゃんと同じ歳のあの子たちに、ちょうど研修に来てるあの子もいれて合わせてみるとか事情を説明してね。)

クリス:
(うんそうね、どうしても私が目を離すときもあるし…わかったわお屋敷にもどったらまずあの子たちから合わせてみましょう)

 
郁恵:
蒸し暑いわね…店内涼しい

愛里栖:
本当にあるの?

月美:
あります!朝バスの中から確認したもん!

月美:
ほらまだあったじゃない!

愛里栖:
うわっ! マジ? こんな暑いのに 頭オカシイじゃない!?

店員のお姉さん:
くすすっ♪ いらっしゃませ♪

愛里栖:
うわっ! ごめんなさい!

お姉さん:
いえいえ、私もちょっとオカシイと思ってるから大丈夫よ。
うちの店長がどうしてもまだ売るって置いてるから♪

郁恵:
わたし飲み物と取ってくるわ

月美:
特製肉まん、あんまん、ピザまん、カレーまん をそれぞれ2づつ、紙袋を二つにわけて下さい。

お姉さん:
はい、特製肉まん、あんまん、ピザまん、カレーまん をそれぞれ2づつ、ちょっとまってね♪

月美:
中央病院前まで、学割、メイド割り(注)で!

SE:
ぴっぴっぴっ!

運転手:
足元お気をつけください

愛里栖&郁恵:
は~い♪

注:
物語の舞台となっている白森市は積極的にメイドを受け入れている重点自治体であり、市内のメイドには非常時の市民保護義務を与える替わりに各種優遇処置がある。市内の買い物や交通機関に割引がある。 指定のスマホなどの端末で決済することで自動的に割引が行われる。 

各種割引制度は以下の萌香のセリフを参照

愛里栖:
手術前に食べ物とか大丈夫なの?

月美:
食事制限とかは明日のお昼からなんだって、だからそれまでは食べられるらしい。

郁恵:
梨音ちゃんの手術前にお見舞行けてよかったよ

月美:
うん。 あっ今、検査から帰ってきたから病室にいるって。 もうつくよーバスだよ~送信!

愛里栖:
すぐに返信だ、この「待ってる!」ネコすたんぷ可愛い♪ これオリジナルだよね?

月美:
うんかわいいよね~、じつは梨音ちゃんのオリジナルスタンプわたしもいくつかもらってる。

愛里栖:
いいな~♪

愛里栖:
えっとたしか入院棟の3Fだよね?

月美:
そうなんだけど面会の受付しないと、ちょっと行ってくるから待ってて

郁恵:
わかった。


愛里栖:
毎週二回、お見舞いに通ってたなんて…早く言えばいいのに。

郁恵:
まあ、病院に抵抗がある私たちには言いづらかったんでしょ。まあわかるけどさ。

愛里栖:
でも月美が一番思い出して辛いでしょうに。 それなのに一人で来てたなんて…

月美:
受付してきたよ~! 行こう!

愛里栖:
うん! 愛里栖、梨音ちゃんみたら喜ぶかな?

郁恵:
どうにか冷めないうちに届けられそうね。


月美:
こんにちわ、またゲームかな?

謎の少女:
月美さん!

梨音:
むぅ~! 違いますよぉ~ 兄の会社の今週の重役会の資料チェックと会議での兄が指摘するポイントの洗いだしです。

月美:
それは悪かったね…あの幸喜お兄ちゃんそんな事まで梨音ちゃんにやらせてるの?

梨音:
まあ私がチェックしないと心配でしているだけなんですが。

解説:
梨音の実の兄の篠山幸喜はEmpireClub WhityGardenの常連であり月美の彼氏です。幸喜は篠山重工業の社長です。 篠山重工はForestに導入された多脚知能戦車や戦闘指揮車両、VTOL機などを納品しているメーカーです。

月美:
お詫びっていったらなんだけど、肉まん買ってきたから食べよう!

梨音:
肉まん! た…食べます! それは嬉しいんですが…その後ろ方は…

愛里栖:
ねえ月美酷くない?

郁恵:
早く紹介してよ~。

月美:
いつも話している愛里栖と郁恵よ

梨音:
こ…こんにちわ。いつも月美さんと兄からお話は聞いております。えっとWhityGardenの人気エスコートメイドだそうで。いつも兄がお世話になっております…。

郁恵:
こんにちわ、幸喜さんにはいつもご贔屓にしてもらってます!

愛里栖:
まあ、私達はお酒を一緒に飲んだりお話するだけで~幸喜さんの「そういう」お相手は月美が専門だけどね♪

梨音:
そういうお相手…(真っ赤) まあエンパイアクラブですものね

月美:
ひぃぃぃ~!

月美:
車椅子新しくなってる

梨音:
はい電動アシスト付きになったんです。これだと一人でも楽なんですよ

愛里栖:
ほら帽子もかぶって、今日は日差し強いから

郁恵:
さてドアあけるわよ

梨音:
お姉さんが三人出来たみたい♪(くすすっ)

愛里栖:
そこは梨音ちゃん付きのメイドさんでしょ?(笑)

〇病院入院棟中庭

梨音:
やっぱりお外気持ちいです、お散歩好きだったから…

愛里栖:
手術終わればまた歩けるようになるんでしょ?

梨音:
そう言われてますが…

郁恵:
ここ空いてるよ~

梨音:
あむあむっ♪ おいちいぃでしゅう♪

月美:
こぼれてる! 白い服なんだから染みになっちゃうから!

愛里栖:
あははっ(笑) 月美本当にお姉さんみたい

梨音:
はい月美さんは梨音のお姉ちゃんですぅ♪

郁恵:
どっちかというと・・・ママ?

梨音:
美味しかったです♪ いつもありがとうございます。

月美:
残りは保湿シートでくるんであるから夜にもレンジでチンで

梨音:
楽しみにします。 いつもお見舞いに来てくれるから寂しくないです! 愛里栖さんも郁美さんも本当にありがとうございます、お話できてとてもうれしいです。

月美:
幸喜お兄ちゃん忙しくてなかなかこれないからね。

愛里栖:
さすがに幸喜さん大きな企業の社長さんだし

郁恵:
若いのに大変だよね。

梨音:
兄は両親が亡くなってか…仕事と私しか無くなちゃってだから心配だったんですが

月美:
幸喜お兄ちゃん梨音ちゃんには甘々の重度のシスコンだからね

梨音:
だから月美さんと兄が付き合ってくれて安心してるんです。 あのまま私が兄の面倒をずっとみなくちゃいけないのかなって心配だったので。

愛里栖:
ということは、幸喜さんは月美と付き合う前は梨音ちゃんが幸喜さんを独占できたんだよね? 寂しくないの?

梨音:
私は月美さんが本当のお姉さんになったみたいで嬉しいですし、それに兄のこと一生面倒みるのは…ちょっと…

梨音:
あっ美里、向日葵

美里:
梨音、病室にいないからここだと思って。月美先輩達ちゃろ~です!

月美:
美里、向日葵こんにちわ。

愛里栖:
Forestのシェフメイドの美里と、えっと

郁恵:
たしかクラスが同じ向日葵さんよね?

向日葵:
はい初めまして篠山家で梨音お嬢様付きメイドをしております向日葵と申します。
お嬢様のお見舞いありがとうざいます。

梨音:
向日葵、そのお嬢様はヤメテっていつも言ってるじゃない。


美里:
先輩ふりふり~♪

愛里栖:
ふりふり~♪

月美:
二人声出すこと無い(笑)

郁恵:
ねえ私にも送ってよ~

愛里栖:
向日葵が部屋作ってるからまつ!

向日葵:
チャットルームのビジュアルですがこれなんかどうでしょうか?
練習でエンパイアクラブのロゴ風をデザインしてたやつなんです

梨音:
これわたしのシルエット? EDHEN?

梨音:
この下の文は…
God's in his heaven,all's right with the world
神は天に在り、世は全て事も無し…

向日葵:
はいお嬢様から頂いたロバ−ト・ブラウニングの「ピッパが通る」の本の中にあった一節です。
お嬢様がいつか、全てのメイド達が平穏に過ごせるような世界…まさにエデン(EHDEN)のような世界にしたいと言ったときに頭に浮かんだのがこの節なので…。

解説:
ロバート・ブラウニング(Robert Browning, 1812年5月7日 - 1889年12月12日)は、イギリスの詩人。

英国のヴィクトリア朝時代の有名な詩人・劇作家としての顔も持つ
ロンドン郊外の裕福な家庭に生まれ、蔵書家の父と音楽家の母の薫陶を受け、当時の上流階級の慣習から正規の学校教育を受ける機会はわずかであった。12歳で詩集を作り、14歳でギリシア語・ラテン語をマスターし、古典を耽読したまさに天才。 21歳から詩や戯曲を発表したが、あまりにも難解だった。

晩年にヨーロッパを渡り歩いた末にイタリアに戻り、最後の詩集が刊行された日にヴェネツィアで客死。ロンドン・ウェストミンスター寺院南翼廊のアルフレッド・テニスンの隣に埋葬されている。

代表作としては劇詩「ピッパが通る Pippa Passes」(1841年)が挙げられ、特にその一節「"God's in his heaven. All's right with the world.(神、そらに知ろしめす。すべて世は事も無し)」が広く知られる

エ●ァゲンリオンに登場する某国連直轄の秘密組織のロゴの下に書かれている文字はこの英字で同じである。

向日葵:
ライムチャットの上だけにあるお嬢様がオーナーの架空の秘密のエンパイアクラブ! EHDEN! どうですか? メイド達のチャットルームですし!

梨音:
あのさどっかのアニメに影響されすぎな気がする…まあお遊びだからいいのかな? どのクラブのオーナーもそれくらいの冗談なら許してくれそうな人たちだからいいけど。 まあ大丈夫だろうけど後でいちおうは連絡しとく。

向日葵:
お願いします! でわこれで決定で!

愛里栖:
エンパイアクラブエデン? エーデン?

梨音:
それで「エーデン」と読みます。聖書とかのエデンではなくて、実際にある地名のエーデン。 天国のような場所…ってわたしが思う場所です。

郁恵:
検索して! おーキレイな街! 地中海!

月美:
このロゴ向日葵ちゃんがデザインしたの?

美里:
向日葵はデザインの勉強してるんですよ!

愛里栖:
グラフィックデザイナーってこと? カッコイイ!

向日葵:
お嬢様がイラストを描くのでわたしは編集やデザインを…いつかお嬢様の画集をわたしの編集で一緒に出版したくて

郁恵:
二人で画集! 郁恵欲しい!予約する!

梨音:
何時出せるか判らないけど、一冊予約ありがとうございます(苦笑)

幸喜:
こんにちわ。ずいぶんと賑やかだね小貴婦人方。 私も混ぜてもらえないかな?

向日葵:
幸喜お兄様、お疲れ様です! この席にどうぞ。

梨音:
向日葵は席換わらなくていいから座ってる! 
兄さま「大人」のレディーのお茶会に男が混ざるなど無粋ではありませんこと?

美里:
幸喜お兄さん、こんにちわお邪魔してます

愛里栖・郁恵:
お兄ちゃんちゃろ~♪

幸喜:
美里さん、郁恵さん、愛里栖さん、妹のお見舞いありがとう。

月美:
幸喜お兄ちゃん来るなら事前に言ってくれればいいのに…

幸喜:
月美、ごめんね仕事いつ抜けられるかわからなくて

梨音:
何、ダラシナく鼻を伸ばしてるの? この変態ロリコン兄さま

向日葵:
まあ、先輩方も美里もお兄様好みの美少女ですし…鼻を伸ばすくらいはいたしかたないかと…

幸喜:
向日葵は今日はお屋敷にはもどらないのだね?

向日葵:
はい、手術の前日ですし病院には許可をいただいておりますのでお嬢様に付き添いでお泊りするつもりです。

幸喜:
そうかよろしく頼むね

梨音:
それで兄さまは先生とのお話合いは先にすませたのでしょ? もうお仕事にお戻りなるだけですよね? ふん

幸喜:
それがまだ用事があるんだ。

幸喜:
月美、この後わたしに付き合ってもらえないかな? 良二オーナーには許可を事前にもらっている。

月美:
今からですか? ご主人様に許可をもらってるなら構いませんが

梨音:
ほう用事というのはデートですか…妹が手術の前日なのに…お盛な事で…ふん

向日葵:
お嬢様には私が付き添いますから(苦笑)

郁恵:
いってらしゃい月美

愛里栖:
私達はテキトーにご飯たべて帰るから♪ そうだ美里ちゃんも一緒にたべない?

美里:
是非ご一緒させていただきます先輩!

月美:
二人とも…美里ちゃんをよろしく。 行ってくる。

愛里栖:
楽しんできて
 
テレーサ:
それでご主人様が久美メイド長に慰められてて…

エミリー:
ちょっとまって電脳通信!

ひな子:
またクレアお姉さん?

エミリー:
ちがうクレアお姉ちゃんじゃない、絵美香お姉さんだ

テレーサ:
絵美香副メイド秘書?

ひな子:
何かあったの?

エミリー:
ちょっとまって!

ひな子:
うん黙る! ごめん!

エミリー:
はい…研修中のメイドは今ここにそろっていますけど…まろんですか?

萌奈:
まろんってあの午前中、良二オーナーをみてパニックなった娘だよね?

シャロン:
うん心配だよね…

エミリー:
はぁ~~?! 前クラブがメイド虐待で本部に摘発になって保護されたメイドなのに
メンタルケアをしないで移籍になった? なんですかそれ!! うち(Forest)は何してたんですか! 今すぐマスターフランソアに連絡します!

ひな子:
ちょっとエミリーおちついて! 相手はこのクラブの副メイド秘書でアナタはまだ新人研修中の準メイドなんだからね! 口調! 口調!

エミリー:
そんな事したら担当が切り刻まれる? 切り刻まれればいいんですよ! 両手両足
切断されたうえに、五臓六腑まき散らせばいいんです! もしくは極東本部ごと
瑠莉オーナーに爆撃してもらいます!

ひな子:
四肢切断…ひっぃぃ!

テレーサ:
本部ごと爆撃…Forestのメイドって怖い…でも本当にやりそう…いやヤル…

エミリー:
はぁ…まろんの事を同期である私達に面倒をみさせたいと?

萌奈:
エミリー、萌奈で出来ることなら手伝うよ!

シャロン:
うんうん! まろんの事、私も心配だし!

エミリー:
それは私も「見習い新人研修中」とはいえ衛生メイドなのでそういう事でしたら診断もしますし治療にも協力はしますし…

ひな子:
うん! 同期だもんね何でも協力するよ! ねえテレーサ!

テレーサ:
うんうん! 協力する!なんでも任して! だから穏便にね!

エミリー:
ここにいるみんな是非協力したいと言ってますので。 それでどうすれば? はいわかりました。 30分後にメイド秘書室ですね。 かしこまりました。 伝えます。

ふぅ…さて…

エミリー:
マスターフランソアぁ? 紅葉お嬢様ぁ! 緊急で大事なお話があります!

テレーサ:
穏便にすませるじゃなかったの!?

エミリー:
それはソレ!これはコレ!

ひな子:
四肢切断…五臓六腑…ひぃぃぃい!

シャロン:
本部爆撃…


澄:
がんばってくるのよ!

真理愛:
はい!

小梅:
お見送りありがとうございます!

澄:
それで休日は戻ってきて真理愛は穏海お姉ちゃんと夜伽して良いと千穂メイド秘書に許可もらっといたから相手してあげて。平日はその代わり澄と凛空お姉さまとお兄ちゃんが相手するから。

真理愛:
お世話かけます…それくらいならマリもカラダもちます。

小梅:
なるほど夜伽の分担はメイドの健康管理と愛情の配分の為にも大事と…勉強になります

澄:
小梅、一つ研修になったね!

小梅:
あの話は変わるんですが…小梅もあまり詳しくはないんですけど…アレって普通の道路走っていいんですか? それにアレをすみれさんが運転するというのもびっくりなんですが…

真理愛:
まずすみれが運転するのはアレはすみれのクルマだし。

澄:
公道の許可は英国車ってことで正式に取ってるらしいよ。権力があればなんでもありだよね・・・法は権力に屈する。不条理だ。

有虹子:
ねえすみれ、本当にそれで行くの?

すみれ:
はいっ! なんかあったときこの子なら素早く帰ってこれますし

有虹子:
…それはお兄ちゃんに聞いたけど時速600kmオーバーとか2000馬力とか言って興奮して鼻血出してたし…とんでもなく速いのはわかるんだけどね…心配だな

すみれ:
すみれが運転する分にはけっこうこの子は運転しやすいんですよ

有虹子:
そうなんだ…

SE:
しゅわあああああああああ! パシューーーー! うわーーーぁん!

澄:
さて…オーナー、メイド長、副メイド長が落ち込んでたらクラブ回らないし…

有虹子:
お兄ちゃんと凛空お姉ちゃんは有虹子が元気つけるから、澄お姉ちゃんは穏海お姉ちゃん担当でおねがい

澄:
そうだね千穂さんに許可もらってるからさっさと元気つけますか。 でないと雪音姐と希美ちゃんが大変だし。

有虹子:
うん

●白森中央病院

月美:
お兄ちゃんクルマ変えたの?

幸喜:
ああ、実はGreenWoodsの凛空さんのクルマを探すのを依頼されてね、探しているうちに気にいってしまって同じクルマを買ってしまったんだ。

さあお嬢さん乗って

月美:
それってお兄ちゃんと凛空メイド長はクルマはお揃いってこと? …むぅ…

幸喜:
ちょっと月美? まさか妬いているのか?

月美:
そんなことはないですよ~だ。 ふんっ! どうせ私はクルマ運転できないしぃ!

幸喜:
あからさまに妬いてるじゃない…

月美:
それで私はどこに連れていかれるの?

幸喜:
Forestだ。

月美:
Forest?

幸喜:
明日、梨音の手術を執刀するのはForestのオーナーの瑠莉さんと、Drヴェル。 そしてGreenWoodsの西園寺剛史さんなんだ。 その人たちとの話に月美も参加してほしい。

月美:
えっ? それって…


月美:
瑠莉オーナーやヴェルさんってアポリロイド専門じゃ? でも良く考えると普通の人間のお医者様でもあるんですよね…

幸喜:
ちがうんだ月美。

月美:
違う?

幸喜;
うんちょっとタバコを吸ってもいいかな?

SE:ぶぶぶん♪ クルマが止まる

月美:
うんいいよ

SE:
うぃーん♪

月美:
この車、屋根が開くんだね。

幸喜:
ふぅ…

月美:
美味しそうに吸うよね。そんな煙吸って何が美味しいんだか。

幸喜:
タバコは煙を吸っているというより、落ち着いたりするために吸うものなんだ。まあ習慣と依存性というものも大きいけどな。

月美:
ふぅ~んわからない。まあなれたけど。

幸喜:
月美、今の梨音はボクの妹であって妹でないんだ。

月美:
えっ? 言ってる意味が解らないんだけど…

幸喜:
本当のボクの妹の梨音は9年前に病気で死んでいる。 今の梨音はその記憶を引き継いでいる二人目の梨音なんだ。

月美:
ちょっと幸喜お兄ちゃん何を言ってるの? えっと二人目?

幸喜:
命のスペア…そう櫻糀博士からは説明された。 もともと梨音はアルビノの虚弱体質で長くは生きられないと言われていたんだ。 それを解決する方法をボクの父がForestのオーナーである櫻糀瑠莉さんの父である櫻糀哲也博士氏に相談したらしい。 知って通りうちの白急グループの創始家である篠山家は代々資産家でね。莫大な研究予算の援助の代わりに櫻糀博士は一つの解決策を提示した。

櫻糀博士が研究していたアルティメイドと妻の優樹子博士が研究していた意識体転送研究をくみわせての梨音のアルティメイド化計画。 その実験に梨音は使われることで命がつながれると…父は信じた。

月美:
アルティメイドと意識転送?

幸喜:
そうだね、月美にわかるように説明しないと。 簡単にいうと人工的に強化されたオーダーメイドを生成しその脳に妹の梨音の記憶や意識など一切合切を転送する。

月美:
そんな…だって作られたといえその元になった子の意識は? 命は?

幸喜:
…消えて無くなる…。

月美:
そんな! そんなこと許されるはずがないです!
 
哲也:
でわ加倉くんはあの素体では障害が発生すると?

桃子:
はい。増大した神経信号の処理が脊髄神経ネットワークで処理しきれず不具合を発生させるかと

哲也:
しかし今から素体を再設計し作り直しをしていては…ここの設備でどうにか持たしているがあの子は日々衰弱している…間に合わない。

桃子:
しかしこのまま意識を転送したとしてもあの素体で稼働させた場合、神経信号が混乱を起こし良くて多臓器不全、最悪は意識覚醒と同時に意識の意味喪失が発生すると私の計算では…

SE:
ガチャ♪



Drフィッツジェラルド(以下Dr):
あらあらぁ~それは大変ですわねぇ~♪

優樹子:
だったらもっと大変そうな顔しなさないよ。 あなた遅れてすいません、飛行機が天候不順で到着が遅れまして。

フランソア:
………こんにち…わ…

桃子:
ドクターどうぞ

Dr:
メルシー桃子

優樹子:
桃子、悪いけど給湯室の戸棚の隠しにある赤い缶の豆でコーヒー淹れてくれるかしら

哲也:
おいそれは俺の秘蔵のブルマン! 隠してあったのに何故知ってる!

桃子:
はい先生了解しました!

Dr:
まあ! ブルーマウンテンですの楽しみですわ♪

桃子:
フランソアちゃんは紅茶の方がいいかな? もしくは缶ジュース?

フランソア:
おおぉ、建物の中にお庭がある。 あれ? 女の子がいる…マモン…あの…

Dr:
フランソア遊んできていいわよ

フランソア:
Ah bon?(本当に?)

Dr:
哲也よろしいですわよね?

哲也:
フランソアくん、あの娘(こ)は梨音と言って身体がとても弱くてうちで預かってる子なんだ。

フランソア:
 LION(リオン=フランス語でライオンという意味)…とても強そうな名前。 なのに身体弱いんだ。 一人なの?

哲也:
そう。ここでは一人だ。だから本読んですごしていることが多い。フランソアくんも本が好きだろう? だから梨音とお話してもらえないかな?

フランソア:
うんわかった。フランソア、リオンとお話する

哲也:
桃子、フランソアくんに梨音のZXアルファ補充水を持たせてやってくれ、そろそろ水分を補給させないと、フランソアくんなら同じものを飲んでも大丈夫だろう。

桃子:
フランソアちゃん、ついてきて梨音ちゃんにもってくお水とりにお姉さんといこう

フランソア:
うん。

優樹子:
あなた、さっきの桃子が言っていた神経増幅処理の問題だけどデルポール()ちゃんの中にあるオーバーリジェネイト回路を梨音さんのハイパオーバーメイドチップのアブソリュートで吸い出して融合させその後、素体に脳神経転送することで解決する気なのね。 だからデルポールちゃんもここに呼んだと

哲也:
フランソアくんのオーバーリジェネイトは未完成だが、梨音くんの新素体がアルティメイト能力を発現する事になる第二次成長期を迎えるまえでは問題は起きないはずだ。

Dr:
それまでには剛史(注2)達がどうにかするでしょう♪


注:
優樹子はフランソアのことを、親友であるDrを「フランソア」と普段は呼んでいるので、本作品のメインヒロインのフランソアのことは「デルポール」と苗字よみで呼びます

注2:
西園寺剛史(凛空のお兄ちゃんのこと)はDrの弟子の一人です

Dr:
それにあなた達の優秀な子供もおりますしね。

哲也:
ああ、瑠莉には俺がコチラ側を去る前にたっぷり宿題を残しておかないとならないからな。

Dr:
厳しいパパでありますこと♪

フランソア:
リオン…お水…持ってきた…お話しよう。

梨音:
梨音と同じペンダントしてる……お姉さんは誰?

フランソア:
私はフランソア・デルポール。 フランソアだよ。

 
幸喜:
これが治療なんですか?博士、貴方は父と組んで梨音でなんの研究を…

優樹子:
幸喜くんの声で梨音ちゃんの意識が反応しているわ、あなた悪いけど

Drフィッツジェラルド:
フランソアのメインアドレスインデックスを開いたわ桃子、OEAA948から100づつ上げていって

桃子:
はいっドクター!

哲也:
幸喜くんキミは亡くなった御父上の後継者だ知る資格があるついてきてくれ。

幸喜:
解りました。

哲也:
幸喜くんは妹さんのことはどこまで聞いているのかな?

幸喜:
妹の梨音は特殊な生まれでヘルマンスキー・パドラック症候群()であり虚弱体質でこのままではあまり長くは生きられないと…

哲也:
そうだ。そこで君の父上は私と妻の研究に目をつけた。 

SE:
ピッ!(カードキーが認識する音) ウィン♪(ドアが開く音)

注:
ヘルマンスキー・パドラック症候群(HPS)は眼皮膚白皮症、出血性素因を特徴とし、一部の患者では肺線維症、肉芽腫性大腸炎、免疫不全症を認める。 眼所見として、虹彩透光性を伴う虹彩色素減少、網膜色素減少、著しい視力低下(通常は20/50~20/400)を伴う中心窩低形成、眼振、視神経交叉の増加が認められる

幸喜:
!? なんで…すか…これは…?

哲也:
梨音くんの「命のスペア」とでも言っておこうか。 

哲也:
梨音くんはもともと新型の受精卵融合型アポリロイドニューロンチップを搭載するために完全に遺伝子をデザインされたアルティメイドというものなんだ。 よって身体そのものは増殖培養カプセルで複製することができる。

幸喜:
梨音の身体…梨音は作られたっていうんですか?

幸喜:
こんな事が許されるはずが無い! アナタ達も死んだ父も! 神にでもなったつもりなのか!

哲也:
神か…そんなものを信じても無いし興味も無いが。神というのはHeaven(ヘブン=天上)を収めて地上の事は人に任しているではないのかな? わたしは人間だ。

哲也:
もしオーバーメイドがいなかったら? この世界はどうなっていたんだろうね? 大気汚染、水問題、食料問題、人口問題、度重なる紛争、資源枯渇…そんな問題をいまオーバーメイドの集中運用で解決していっている。 新しい世界へのパラダイムシフトがなされたからこそ現在が存在する。 そう思わないかい?

それにメイドを集中運用することで現在莫大な収益を上げている白急グループの御曹司であるキミにそれを言う資格があるのかね? 

幸喜:
うっ‥‥

哲也:
そもそも亡くなった御父上から引き継いだグループの経営だって、幸喜くん、君がオーダーメイドだからこそどうにか経営を行えているんじゃないのかい?

幸喜:
そうですが‥‥

哲也:
私達が許されるかどうか…まあそれについては別の機会に話すとして今日の所は梨音くんの話をしよう。

幸喜:
すいませんそうでした。 博士この梨音は…梨音なんですか? それとも別の人間? 双子のようなもの?

哲也:
いい質問だ。

哲也:
What is a man?
If his chief good and matket of his time
Be but to sleep and feed ?
A beast, no more

ウィリアム シェークスピア ハムレット(4幕4章)

(訳:人とは何か? もし寝て食うだけなら獣と同じ)
 
哲也:
これは妻の優樹子の研究テーマだが「ヒト」が「人」になりえるのは自分で感じ、考え、それを覚えていける事、人は人に成っていくモノであると思っている。

幸喜:
意識?自我ですか?

哲也:
私達はこの梨音くんのスペア…私達は「素体」と呼んでいるが、この素体の脳神経には何も記憶させないようにしている。
内臓さえ外部よりアルティメイドチップを通じて信号をおくり制御させている。
よって自然の胎児には存在する意識は生まれていない。

幸喜:
文字通り真っ新(まっさら)ということですか?

哲也:
その通りだ。

哲也:
梨音くんが最終的に危篤になり延命処置が開始された同時に現在の梨音くんの特殊なチップ経由でこの素体に全ての意識を構成する脳要素や神経系の記憶などの転送が開始される。
転送が終了次第梨音くんの元の身体は生命活動を停止する。 そしてこの素体が梨音くんとして活動を開始する。

哲也:
意識転送…妻の優樹子が研究している技術であるが電子的な脳意識のコピーともいえるな。まず成功するか? そしてたとえ成功しても転送された結果物が梨音くんであるかどうか? それは誰にもわからない。梨音くんとまったく同じ記憶や感情をもっていたとしてもな。 それでもキミの御父上はそれに賭けた。 まあわたしも、優樹子もフランソア・フィッツジェルトもな。

それでキミはそうなった梨音くんでも今まで通り兄として兄妹でいてくれるかな?

幸喜:
当然です! どんな梨音になっても梨音は俺のたった一人の妹です!

哲也:
そうか…なら私達も全力を尽くそう。

梨音:
う…ん…

幸喜:
? 梨音!

梨音:
お兄ちゃん…あれ…? 梨音…死んだんじゃなかったの?

幸喜:
助かったんだよ…(涙) 櫻糀先生達やフィッツジェラルド先生が助けてくれたんだ。

梨音:
そうなんだ…あれ? お外が雪?

幸喜:
うんもう冬だよ。梨音は沢山寝てたんだよ…

梨音:
そっか…先生たちは? それにフランソアお姉さん

幸喜:
先生たちはお忙しいからね、梨音がもう大丈夫だとなったら外国に行ってしまった。フランソアちゃんもね。でも梨音が起きた時の為にってこの本をフランソアちゃんから預かってる。

梨音:
これは梨音が好きだったロバート・ブラウニングの「ピッパが通る」だ! この本難しいけどフランソアお姉さんが詳しく説明してくれたからわかるようになったんだよ! 嬉しい…またお姉さん達に会えるかな?

幸喜:
うんきっと会えるよ…その為にもがんばって元気にならなくちゃ。

梨音:
うん! お兄ちゃんがいれば梨音元気になるよ…がんばる!

 
幸喜:
健康を取り戻した事と目の色が茶色に変わった以外は梨音は全てが順調だった。もともとの性格が活発だったんだろう明るくなりお付きのメイドの向日葵と良く外であそぶようにもなった。

月美:
でも今の梨音ちゃんは‥‥

幸喜:
そうだな今から三年くらい前に足の先に麻痺が発生し始めたのが最初だった。
梨音にが大人の女性の特徴…ごほん…初潮だなが出始めたときに顕著に異常が
発生した。足がうごかなくなったんだ。

月美:
それで…いまのような感じに…

幸喜:
そんな時だ俺の電脳通信に匿名のメッセージが届いた。

月美:
電脳通信に匿名のメッセージとか届くの?

幸喜:
普通はありえない。 そこには「梨音を救いたければ今すぐに櫻糀瑠莉とヴェロニカ・ヴェルコヴァー、西園寺剛史の三名に相談するように」とだけ書かれていた。

幸喜:
瑠莉さんにすぐに連絡してお会いしたら、そこにフランソアちゃんがいたときには驚いた。その時はまだ記憶がもどってなくて秘密にしたんだが。

月美:
だからフランソアさんのことは、お兄ちゃんめずらしく「ちゃんづけ」するんだ。やっとわかったよ

幸喜:
以前、詳しい説明を瑠莉さんのお母上の優樹子さんに受けていたとおり、梨音のアルティメイドとして成長期にあわせて体組織を作り替え始めた事で神経信号が処理しきれなくなり、プログラムされたリミッターが発動、身体の各部分を麻痺化することで暴走を防いでいるらしい。 それを瑠莉さんたちが新しいチップとドラックスタビライザーを梨音に組み込むことで梨音の本来の身体に正常化させるらしい。

月美:
なるほど…さっきいってたアルティメイド? ってもの?

幸喜:
問題はそれんなんだ。アルティメイド化した梨音は…フランソアちゃんや欧州フォーシスターズのエステル総裁とあらゆる意味で同等かそれを超えるチカラを持つようになるらしい。これは、メイドを従える指揮処理能力、メイドへのカリスマ性だな。 さらに身体的戦闘力、サイバースペースへのダイブ能力などだ

月美:
それってバケモノってことじゃない! あっ! ゴメン

幸喜:
いや月美のいうとおり、まさにバケモノだ…。 何か後ろからくる?

SE:
しゅわぁあああ! ぶぉおおお!

SE:
きゅわぁあああああああ!

幸喜:
なんだっこれわっ!

月美:
えっ? すみれ? 真理愛! 小梅ちゃん?!

すみれ:
まずい!!

小梅:
先行車をパスするのにすみれさんは先に4輪駆動のまま突っ込んだ分、ラインが厳しい! 真理愛さんカウンターでインをつけます! 真理愛さんヤっちゃえっ!

真理愛:
よっしゃ行くわよ! すみれ覚悟!

SE:
パシュゥゥゥウ! きゅわあぁああーーーーー! うぉ~~ん!(遠ざかっていく)

幸喜:
…あれ月美の親友のすみれさんと真理愛さん? とたしか新人の小梅さん? すごいな…月美の友人も…

月美:
良く考えるとあの二人も十分バケモノだね…
 
夢結:
良二お兄ちゃん、夢結只今到着しましたぁ~!
研修お世話になるねぇ♪ ゴメン極東本部寄ってたら遅れちゃった!

麗奈:
ねえ良二、夢結とはどういう関係?

夢結:
夢結はお兄ちゃんのドイツでの現地妻だよ

麗奈:
ほう…現地妻ね…

良二:
ちょっとまって!夢結、そういう誤解を招く発言は!

久美:
……………………

夢結:
誤解! 夢結の初めて奪って…あんなに約束したのに…

麗奈:
良二、男としてサイテー。 見損なった…

久美:
良くん…これはどういう事なの? 久美が初めての女じゃなかったの? 今までのことは全部嘘だったと?

良二:
ひぃぃぎぃぃぃ! ちょっと久美ちゃん! 説明させてぇ久美ちゃんが思うような初めてじゃないから!ねっ! ちょっとだけ説明する時間を!

絵美香:
夢結挨拶おわった?

夢結:
はい絵美香お姉さん! ねえ鈴奈お姉さんとしずるお姉ちゃん、そして花恋お姉さまは?

絵美香:
三人ともForestで訓練中!明日でもつれていくわ。
それで今日は同じ歳のメイドのみんな待ってるから!クラブの案内もしたいし! 
良二くん悪いけど夢結借りていくわね!

久美:
どうぞ~♪

夢結:
でわ失礼いたします!お兄ちゃん…がんばってぇ♪

良二:
ちょっと! 夢結! 誤解解いていってから行ってよ!


麗奈:
あはははっ‥‥(苦笑)

SE:
ドンガラガッシャン!

良二:
久美ちゃん! 椅子はヤメテぇ! 麗奈!助けてよぉ!

麗奈:
今回は私は助けないよ…

夢結:
さすが良二お兄ちゃんがオーナーのクラブだね賑やか!楽しい研修になりそう!

絵美香:
でしょ?みんな楽しい子揃いよ♪ でも一人、あなたの研修の同期で夢結に是非助けてもらいたい子がいてね。

夢結:
夢結に助けて?

絵美香:
うーんアナタ女の子しか恋愛対象じゃないじゃない? それでかつ夢結の好みぴったりな子がいるのよ。 まあもしお互いが気に入ったら…そういう意味でも仲良くなれたらって。

夢結:
わたしが好きそうな娘?

夢結:
それって…夢結が全部守ってあげないといけないような…可哀そうな娘ってこと?

絵美香:
そうっ! とっても可哀そうな子で、夢結が好きそうな容姿の娘だから紹介するわ。

夢結:
うん…。
 
シャロン:
好きな映画とか、TVドラマとかでもいいだけど何かある?

まろん:
!? うっ…えっとえいが? どらま?

萌奈:
シャロンゆっくり、ねっ?

テレーサ:
でしたら何をしてる時が楽しいとかは?

まろん:
‥‥うぅ‥‥

ひな子:
……………

エイミー:(電脳通信)
(クリスメイド秘書、この子、私達だけじゃ手にあまるかも)

クリス:
(今、絵美香が援軍つれて来てるから…)

SE:
ガチャ♪

絵美香:
クリス、夢結連れてきたけど…まろんちゃんどう?

夢結:
クリス大佐…じゃなかったメイド秘書お世話になります。

クリス:
ダメ…みんなと会話できない…夢結来てくれてありがとう

夢結:
それで…あの子だね。 でわ行ってきます! みんなにも挨拶もしないと

絵美香:
よろしくたのむわ。

夢結:
任してください!

夢結:
みなさん、こんにちわ。 初めまして遅れて着任になりました、夢結と言います。 よろしく、お願い、します。 同期のトモダチとして、同じメイド同士、仲良く、してね。

シャロン:
夢結さんですか。

萌奈:
よろしくです。

夢結:
同じ新人同士、「さん」はやめましょう。 まずアナタがシャロン、そして萌奈

シャロン:
はい!

萌奈
えっ?

夢結:
テレーサとひな子、そして…エミリーね

テレーサ:
よろしくお願いします

ひな子:
えっ…よろしく?

エミリー:
よろしくレッドバレットの夢結、うわさはかねがね

夢結:
その呼び名は今はやめて(苦笑)

ぺたっ(まろんの前に立膝ですわる)

夢結:
そして、まろんよろしくね。 綺麗な色の髪ね。

まろん:
よろ…しく。 ありがとう(照)

夢結:
まろんって名前はその髪の色からつけてもらったのかな? でも栗色というよりマロンケーキの色だね。

まろん:
うん施設の人からつけてもらった名前。 まろんけーき? って何?

夢結:
ポチっとな!

SE:
ぶんっ!(空中にホログラフィックで写真が出る)

まろん:
おおっ何もない所に絵が出た!

シャロン:
ホログラフィックですか?

夢結:
そうこの時計はそういう機能があるの。 

まろん:
これがマロンケーキ?

夢結:
正確にはモンブランっていう名前で、マロン、栗っていうものをつぶして甘くしたものをお菓子にしたものとても美味しいのよ。 どうまろん食べてみたくない?

まろん:
食べて…みたい…

夢結:
(クリスメイド秘書、絵美香さん、夢結がおごるのでみんなでオープンカフェに食べにいっていいですか? 夢結が責任をもちますので)

クリス:
(わかったわいいわよ行ってらっしゃい、何かあったら電脳通信ですぐに連絡を)

夢結:
だったら夢結がおごってあげるからみんなと一緒に食べに行こうか

まろん:
いいの?

萌奈:
ちょっと夢結?

夢結:
ほら遅れて着任したお詫び? ねえいこう!

まろん:
うん!

 
兵士A:
幸喜様、月美さん、今照会を行ってますのでお待ち下さい。

月美:
暑い中大変そう…

幸喜:
お勤めご苦労さん。

月美:
大きい車? 戦車?

幸喜:
チェンタウロ戦闘偵察車だね。戦車よりは戦闘力はないが舗装路では迅速に…

月美:
お兄ちゃん説明は良い!どうせ私が聞いてもわからないから!

兵士A:
お待たせしました。瑠莉ご主人様と会談との確認がとれました。お客様用の駐車場B2-Aのエレベータの前で秘書課のメイドがお待ちにしているとのことです。その後応接室へご案内するそうです。 どうぞ

幸喜:
月美、身分書を受け取って

月美:
はい! お客様用駐車場 B2ーAのエレベータ前ですねかしこまり…じゃなかった! 諒解いたしました! です!

兵士A:
くすっ♪ 幸喜様をよろしくね月美さん。

SE:
うぅぅぅ~~~ん♪(空襲警報のサイレン)

月美:
何これ? サイレン?

兵士A:
確認してみます!そのままお待ちを!

幸喜:
わかった。

兵A:
諒解しましたシェルターへ誘導します。 お二人とも弊駐屯地が攻撃される危険性があるために一時的にシェルターに避難していただきます。 ついてきてください。

幸喜:
この車は邪魔になる。ゲート前から車をどかす

SE:
うぅぅぅ~~~ん♪(空襲警報のサイレン)

兵士A:
エレベータきました、こちらへ

幸喜:
大丈夫だよ、ほら月美行くよ

月美:
うん…

兵士A:
こちらです‥‥

幸喜:

月美:
えっ? なんか賑やか…

フランソア:
フランソアもご主人様達を助けに行く!

楓:
瑠莉さん達は東京湾上空だ。空でも飛ぶのか?

フランソア:
ご主人様のF4X7があるもん!フランソアだけでも飛ばせる!

楓:
萌香さんの指揮の邪魔になるだけだからやめとけ。 おとなしくここにいろ。
お前が必要となればその時ば呼ばれるはずだ!

フランソア:
がふぅぅううう!(唸っている)

沙織:
フランソアは親友の私を置いていくっていうの? シクシク‥‥

千秋:
奥様~シクシクって擬音で言うのはちょっとわざとらしすぎじゃ

沙織:
そう? うるうるとか?

マリエット:
可哀そうな沙織さん!

フランソア:
ここは核攻撃でも耐えられるってご主人様が言ってたから大丈夫!

兵士A:
私は他の誘導もあるので! これで!

月美:
ありがとうございます兵隊さん!

幸喜:
ああキミもがんばってくれ

兵士A:
…そちらも‥でわ失礼します!

まろん:
おぉ~これがモンブラン!

まこ:
美味しいわよ♪

聖理愛:
紅茶はアッサムのミルクティーよ

萌奈:
魔法みたい!

聖理愛:
魔法?

萌奈:
聖理愛さんが紅茶をいれると周りになんていうか幸せのオーラと香りがふわ~って
こんなの初めてです!

聖理愛:
嬉しいわ♪ だったら私は魔法使いね♪ 萌奈も魔法を紅茶でかけられるようにならなくちゃね

萌奈:
はいっ! がんばります!

まろん:
食べていいの?

夢結:
うん召し上がれ

まろん:
いただきます…ふぅーふぅー。

萌奈:
そのケーキは冷たいからふぅーふぅーしなくて大丈夫よ

まろん:
うんわかった。 あむ…

まろん:
!!!!!!!!!!!! うぅうううう!

夢結:
おいしい?

まろん:
むふぅ!(頷いてる)

萌奈:
そっか初めてケーキたべたんだもんね

シャロン:
それは熱いからふぅ~ふぅ~して

まろん:
ふぅ~ふぅ~♪ うぅこれも美味しい!甘い~♪ 優しい味

萌奈:
それはミルクティーっていう紅茶よ

まろん:
紅茶、美味しい!

エミリー:
警戒していただだけみたいね。

ひな子:
これならどうにかなりそうだね。

夢結:
ねえみんな怖くないでしょ?

まろん:
みんなとっても優しい。

夢結:
ここにいるみんなまろんの同期でトモダチだよ

まろん:
同期でトモダチ?

エミリー:
仲間でまろんの味方ってこと。

シャロン:
一緒ってこと

ひな子:
うん!

夢結:
特に夢結はまろんを命に替えても怖いものからまもるわ。 大好きよまろん…

まろん:
好き?まろんが…!! 夢結、良い匂い…それに暖かい…

エミリー:
夢結と一緒なら安心できる?

まろん:
うん…安心できる…

シャロン:
うわー情熱的ですわね!

萌奈:
あ~! 先越された~萌奈もまろんの事好きなのに!

夢結:
まろんは夢結がパートナーとして命に代えても保護します!

まろん:
命に替えたらダメだよ…それにパートナーってなに?

夢結:
いいの!夢結がそうしたいからするの!

シャロン:
パートナーとは夢結はまろんさんが大好きで守りたいから恋人になりたいそうです

夢結:
もうなったの!

まろん:
夢結重い…でもなんかくっついてると安心かも?

萌奈:
まろんもまんざらじゃないの?! トンビに油揚げを目の前でかっさらわれた!

エミニー:
さすが速攻ね萌奈の負け

萌奈:
えぇえぇえ!

ひな子:
えっもう決まりなの?!

エミリー:
まろんは夢結のイヤじゃない?

まろん:
うん、夢結の事好き…

萌奈:
うぅ…完全に負けた…

エミリー:
ならまろんはぜ~んぶ夢結を頼ればいい、よほどな事を言わないかぎり夢結はなんでも聞いてくれるし怖いものからも全部守ってくれるはずよ

まろん:
夢結本当?

夢結:
うん! 夢結はまろんの言うことまろんに悪くならないものならなんでも聞くし、まろんことなんでも面倒みちゃう! まろんのことは夢結に任せて!

まろん:
夢結…ありがとう…まろん夢結のこと好き

夢結:
夢結もまろんの事、好きよ♪

萌奈:
まろん!萌奈もトモダチとしてでも付き合って!

まろん:
みんなトモダチ…だけど夢結は特別なんだよね?

夢結:
そう特別!

萌奈:
えぇぇぇん(涙)

ひな子:
萌奈、よしよし…

エミリー:
まろん、メイドの先輩達を紹介したいんだけど夢結がくっついてれば怖くないでしょ?

まろん:
うん怖くない…

エリミー:
おし行こう!

ひな子:
このまま行くんだ…

シャロン:
もう夢結はまろんの守護者ですもの

萌奈:
萌奈だってトモダチだもん!
 
SE:
キュィーン

エリシア:
なに?

花恋:
すみれ?

優香:
すみれちゃんなの?

すみれ:(電脳通信から無線へ割り込みをかけている)
ホイールブレーキだけでは止まりきれません! オーバーランします! 逆噴射がつかえにいし!

花恋:
えっ?!

すみれ:
すみれが止めてみせます!

すみれ:
バイオレット!(すみれのエージェントシステム)

violet:
リニアブースト作動! リアクター臨界点までカウントダウン!

すみれ:
行けぇええええ!

瑠莉:
バカ! すみれヤメロ!

すみれ:
後方対流リフレクター最大出力! エアバースト!(注)

violet:
YESマスター! airburst!

SE:
ドンっ!

注:
空気の障壁をMP4Xの対流リフレクターをフル稼働させて作り出し、VTOL機に制動をかけている。

SE:
きぃぃっぃぃいぃいぃいぃ!

SE:
きゅっ!(スピンしていたMP4Xが止まる)

瑠莉:
すみれぇ!!(瑠莉が飛び降りる)

SE:
うぃーん♪(ハッチが開く)

瑠莉:
大丈夫か?

すみれ:
偏向電離リフレクターリアクターが過熱してるのとタイヤにブリスターが発生してますね…後はバイオレットセリフチェックお願い

violet:
了解しました

瑠莉:
クルマじゃない君の身体だ!

すみれ:
すみれ?

すみれ:
すみれは全然問題ないですけど…瑠莉オーナーお怪我はなさそうですね。良かった。

瑠莉:
まあ、花恋とエリシアとすみれのおかげで怪我一つないが…

すみれ:
間に合ってよかったです。

瑠莉:
礼を言いたい所だが、すみれくんは剛史くんと凛空のクラブから預かってる大切なメイドだ。無茶がすぎる。なぜこのような事を

すみれ:
うぅ…申し訳ございません。上空で機体をみて、花恋がライフルで打ち抜くことまではシュミレーションできて、もしギアが下りてもホイールブレーキだけで滑走路上で止まり切れないことがすぐにわかって、身体がかってに…。

瑠莉:
まずは自分を大切にしてくれ。君に何かあったら凛空を初め多くの人々が悲しむわかるな?

すみれ:
はい…申し訳ございません。

瑠莉:
この罰としてエンパイアクラブミリタリアForest駐屯地司令官として古都埼すみれ訓練生を正式に特務中尉に特進させ今の訓練生で構成される新部隊「ロンゴミニアド」の隊長を命じる! 明日の朝、命令書を正式に出すので私の執務室へ出頭するように

すみれ:
えっ??? すみれが特務中尉で
新部隊の隊長ぉおおお? 
えぇええええええええ!

SE:
バババババッ‼

里緒菜:
お兄ちゃんさん!穏海さん!お迎えに上がりました!

凛空:
映画でこういうシーンあるよね。大統領とかが緊急事態で避難するとか

穏海:
あのドレスのスカートが風に煽られて…えっ? オレにつかまれって…その人前でそんな…危ないらってもっと抱き着けって…うっ(真っ赤)

里緒菜:
こういう所、お兄ちゃんさんカッコイイですよね~♪

凛空:
うん!カッコイイ!

穏海~お兄ちゃんの事よろしく! じゃあ行ってらっしゃい♪ 明日は夜遅くまでゆっくりで帰ってきていいから~♪

穏海:
はぁいいぃ! わかりましたぁ! 行ってまいります…!

穏海:
凛空が手を振ってるから穏海も振れって…何お兄様そんなに楽しそうなんですか?

里緒菜:
こほんっ!  皆さま本日もForest UH-60ブラックホークをご利用くださいましてありがとうございます。この便の機長は愛理、私は副操縦士を担当いたします里緒菜でございます。当機はこれよりEmpireClub Forest駐屯地中央滑走路ヘリポートへ向かいます

飛行時間は10分を予定しております。 駐屯地からはお車でお屋敷にご案内いたします!それでは、ごゆっくりおくつろぎください。

あと本来は英語のアナウンスがあるんですが里緒菜は英語苦手なので、省略でお願いします!

愛理:
里緒菜とそちらへお迎えに向かう寸前で緊急事態が発生しまして二人でブラックホークで出ることなりまして。緊急事態は何事もなく終了したんですが、どうせお迎えにあがるなら車よりこの方がお兄ちゃんには良いかと思い許可をもらいました。

ナイス判断だと! お兄ちゃんありがとうございます!

穏海:
もう愛理さんはすぐこういうことでお兄様を甘やかすので困っているんです。

里緒菜:
まあ愛理とお兄ちゃんさんって同好の士てやつ? ですからねぇ

沙織:
やっと出してもらえた。とんでもない目にあったわ。 勝手に出ていけないし、メイドの時とちがって自由度がないし! 

千秋:
皆様ご無事だそうで良かったじゃないですか。 沙織さん、メイドの時より自由がないのは仕方が無いじゃありませんか? もう沙織さんは正式な栗田の奥様でForestでは賓客なのですから。

沙織:
それが堅苦しいっていうのよ。

フランソア:
むぅ~フンラソアにお呼びかからなかった! 活躍出来なかった!

楓:
オマエは何かあった方が良いのか? 無くて幸いじゃないか。

マリエット:
こちらへ来る前に栗田ホールディングスへご挨拶をしに行ったのですが
そこで楓様達も千秋さんを学園で拾ってからForestへ向かうのとの事で
乗せていただいたんです。 到着したとたんにアレでびっくりしちゃいま
したけどね。

幸喜:
そうなのか。

月美:
……むぅ…(くいくいと握ってる手を引く)

幸喜:
月美、ごめんね紹介するよ、彼女はマリエット・ルシャンドルといって私とは学生時代は同期だったんだ、ドイツにいたんだが今度新しいクラブのメイド秘書として着任する為に久々に来日したんだ。

月美:
幸喜お兄ちゃんと同期?! だってこんな幼くて可愛い美少女…あっ!すいません! お若くて美しい…それもメイド秘書!

マリエット:
あははっ♪ まあそれは普通は驚くよね。ちょっと身体が特殊で成長が止まってるのよ。幸喜と梨音からはいつも話は聞いてるわ月美さん、よろしくね。

月美:
よ…よろしくお願いいたします!

フランソア:
幸喜お兄ちゃん、さっきは明らかに月美が怯えてたから黙認してたけど、他のメイドの目もある、そろそろ手握るの遠慮して? 

幸喜:
…そうだねスマン

月美:
あっ! ひぎぃぃぃ!

マリエット:
あの妹の梨音しか興味が無かった幸喜がね…変われば変わるものね

律子:
皆様、ようこそいらっしゃいましたわお待ちしておりました

紅葉:
律子先輩、ここはForestでそれはわたくしの務め…まあいいですわ。

フランソア:
ちゃろ~!律子! 久しぶりってほどでもない?

律子:
ちゃろですわ! 直接会うのは1か月ぶりくらいですわね

SE:
パシン!

楓:
紅葉少しいいか?

紅葉:
はい、なんでございましょう

楓:
実はなオフィスを出る前にヤツから「電話」があってな…

紅葉:
お姉ちゃんに電話? 電脳通信では無くて? それでヤツ? って‥誰ですの?

楓:
ヤツといえば…父上に決まってるだろ。わたしはヤツからの電脳通信もスマホなどの通信機器なども全部着信拒否にしているからな。社に直接電話してきやがったのだ。 それでだ明日、こっちへ来るから時間を開けとくようにと…

紅葉:
はいっ? あのパパの船ってたしか今は喜望峰(1)を回った所にいるのではありません?

楓:
Coral注2は先日喜望峰沖を通過した所だ。どういう手段で来るかは知らんが久々に家族で夕食を一緒にとりたいそうだ、時間を空けておけ。伝えぞ

注1:
南アフリカ共和国、西ケープ州の南西端、南緯34度21分、東経18度29分にある岬。 アフリカ大陸最南端のアガラス(アグラス)岬の北西約160キロメートル、ケープ半島の南端、フォルス湾の西の出口に位置する。 大西洋とインド洋の二つの交わる岬であり重要な航路
の要所の一つである。

注2:
Club Coral
栗田家のミサイルイージス艦型エンパイアクラブ。つねに世界中を移動している。

千秋:
なんでわたしが出る時には学園に残ってた陽菜乃がメイド服姿でまってるのよ…忍者か

陽菜乃:
先輩達と一緒にいたからそこに迎えにきた愛理先輩と里緒菜さんのヘリに乗せて来てもらったの。 
それでお二人と楓様ですが美奈総務部長がコーヒーを用意しておりますので総務部で前の会議をお待ちしていただく感じで

沙織:
久しぶりの美奈部長のコーヒー!

幸喜:
律子さん月美を連れてきたよ。来る途中にあの事の梨音の分の話はした。

月美:
えっ? 梨音の分?
律子:
幸喜さんありがとうございます。

幸喜:
ここに月美を呼ぶように頼んだのは律子さんなんだよ

月美:
律子様が?

月美:
あのっ! えっと! 今日は梨音ちゃんの手術の話を先生である瑠莉オーナーと剛史お兄ちゃんと、ヴェルさんに聴くだけですよね? でもこんな偉い人ばっかり! 月美がここにいるのは場違いというか・・・あの・・・ごめんなさい緊張し過ぎてて混乱してて

律子:
梨音さんが手術の関係はしているけど、ここにいる人たちや今むかってる剛史さんと穏海さん、そしてまっている瑠莉さんやヴェルさんは今日は梨音さんの為ではなく月美さんの為にあつまったのよ?

月美:
どういうことですか? えっ! 月美?

幸喜:
大丈夫。何があってもオレが一緒にいるから

月美:
幸喜お兄ちゃん‥‥

くみ泡 第八話「RENDEZVOUS 」(後編)