くみ泡 第八話「RENDEZVOUS 」その9
月美:
瑠莉オーナーやヴェルさんってアポリロイド専門じゃ? でも良く考えると普通の人間のお医者様でもあるんですよね…
幸喜:
ちがうんだ月美。
月美:
違う?
幸喜;
うんちょっとタバコを吸ってもいいかな?
SE:ぶぶぶん♪ クルマが止まる
月美:
うんいいよ
SE:
うぃーん♪
月美:
この車、屋根が開くんだね。
幸喜:
ふぅ…
月美:
美味しそうに吸うよね。そんな煙吸って何が美味しいんだか。
幸喜:
タバコは煙を吸っているというより、落ち着いたりするために吸うものなんだ。まあ習慣と依存性というものも大きいけどな。
月美:
ふぅ~んわからない。まあなれたけど。
幸喜:
月美、今の梨音はボクの妹であって妹でないんだ。
月美:
えっ? 言ってる意味が解らないんだけど…
幸喜:
本当のボクの妹の梨音は9年前に病気で死んでいる。 今の梨音はその記憶を引き継いでいる二人目の梨音なんだ。
月美:
ちょっと幸喜お兄ちゃん何を言ってるの? えっと二人目?
幸喜:
命のスペア…そう櫻糀博士からは説明された。 もともと梨音はアルビノの虚弱体質で長くは生きられないと言われていたんだ。 それを解決する方法をボクの父がForestのオーナーである櫻糀瑠莉さんの父である櫻糀哲也博士氏に相談したらしい。 知って通りうちの白急グループの創始家である篠山家は代々資産家でね。莫大な研究予算の援助の代わりに櫻糀博士は一つの解決策を提示した。
櫻糀博士が研究していたアルティメイドと妻の優樹子博士が研究していた意識体転送研究をくみわせての梨音のアルティメイド化計画。 その実験に梨音は使われることで命がつながれると…父は信じた。
月美:
アルティメイドと意識転送?
幸喜:
そうだね、月美にわかるように説明しないと。 簡単にいうと人工的に強化されたオーダーメイドを生成しその脳に妹の梨音の記憶や意識など一切合切を転送する。
月美:
そんな…だって作られたといえその元になった子の意識は? 命は?
幸喜:
…消えて無くなる…。
月美:
そんな! そんなこと許されるはずがないです!
その10へつづく