えんぱいな日々(本編) 第五百六十一話 禁断のパンセ その1

 




すみれ:
命令ですから隊長は引き受けますが、昼間の説明ではすみれは納得できません!
鈴奈先輩はすみれがWhityGardenにいる時から何かとすみれの事を気にかけてくれて、学園でも可愛がってくれているのは解っています。

それでも今回の隊長への推挙はオカシすぎです!

すみれ:
今回の部隊、すみれとドロシー以外は全員軍経験者で全員が士官学校出であり成績も特に優秀なメイド達が集まっています。 そんな中、なぜすみれなんですか? すみれはネットダイブがちょっとできるだけのポンコツなネットウィーザードメイドでネットの実戦経験だってほとんど無いです。

すみれ:
それに今回の部隊はネットでの電子戦はあくまで前段階! その活動の中心は物理空間での強襲制圧作戦を行う機動部隊です! すみれは物理戦闘のオーバーメイド能力はありません! 前線で指揮する隊長が物理戦闘をできないんて無理があります!

鈴奈:
すみれもちゃんと自分の意見、言えるじゃない。

すみれ:
先輩! 何笑っているんですか! すみれは真剣なんです! 隊長になるってことは先輩が昼間おしゃっていた通り隊員全員の命を預かるってことです! だからすみれがみんなへの指揮が向いているとかそういう曖昧な理由ではなくて! ちゃんとした納得できる理由を‥

鈴奈:
はいはいわかったわかった! 説明するから。 とても単純な理由よ。

すみれは部隊指揮能力や作戦立案能力だけではなく電子空間、サイバースペースでの戦闘、機動兵器による戦闘、物理の肉体での射撃戦闘、肉体を使っての物理格闘戦闘の全てにおいて抜きに出て他の隊員より優れている。 単純に他の隊員より強いからよ。

メイドは自然に強いメイドに従うようなっている。 だから他のみんなはすみれに自然に従っている。 そうじゃない?

すみれ:
はっぁああああああああ? 
先輩何いってるんですか? すみれなんか戦闘はおろか運動苦手なんですよ? まあ射撃についてはちょっとは他の子より上手いかもだけど、それでもあくまでシューティングレンジでの練習だけの話だし!

鈴奈:
ふぅ~ん…ねえすみれ…でわ聞くけど。

すみれ:
はい? 何ですか?

鈴奈:
貴女この基地で訓練に入ってからたった一度もアポリロイドドライブ()を使った事無いわよね? 

すみれ:
それは…その…

鈴奈:
すみれはサイバースペースにダイブするのでさえドライブを使用する必要がないとヴェルさんから聞いている。
訓練中の戦闘指揮中のシュミレーション演算でさえレイラはドライブを使用して行うのにすみれは使用していない。


注:アポリロイドドライブ
アポリロイドチップを利用して人間に普段備わっているリミッターを解除し一時的に神経速度、脳処理能力、筋力などを飛躍に強化する事。オーバーメイドならオーバードライブ、ハイパーメイドならハイパードライブやハイパーアクセルなどと呼ばれる。 これがオーバメイドやハイパーメイドと人間との能力の差の根源になっている。

鈴奈:
すみれ…貴女はここに来てから一度として本気を出していない。 いつまで「出来ないフリ」をしてみんなを馬鹿にし続けるつもりなの?

ガシャ…もっている鞘に入ってるブレードあげる。

すみれ:
すみれは…みんなを馬鹿にしているつもりなんかないです! すみれだって…その訓練はしっかり…やっているつもりで…すみれなりに…

鈴奈:
それはすみれの実力の数百分の一? それとも数千? いや数万分の一?


すみれ:
…………そんな事ないです‥‥

鈴奈:
なら証明してみせましょうか?

SE:
カラン♪ 鞘が地面に転がる音

ザクっ! アスファルトに難なくコンバットブレードの片方が刺さる

鈴奈:
鈴奈とこれで闘いなさいすみれ。

その2へつづく