えんぱいな日々(本編) 第五百六十九話 BLAZE UP 中編 その16

小梅:
女神‥? 神様?

すみれ:
電脳神、本当の神様では無い、それより小梅、すみれの後ろから離れないで。

小梅:
電脳神? 神ってついてるから、やっぱり神様じゃないですか! 小梅達は死んだんですか? すみれ様!

すみれ:
今そんな場合では…あのね小梅、電脳神っていうのは… ἀπὸ μηχανῆς θεόςデウス・エクス・マキナ)「機械仕掛けの神」の一種のこと()なんだけど、本来は「劇の内容が錯綜してもつれた糸のように解決困難な局面に陥った時、絶対的な力を持つ存在(神)が現れ、混乱した状況に一石を投じて解決する」モノなんだけど、現実は余計に問題を悪化させるの!

とにかく! 今説明してる場合ではない…神だけど「コレ」にすみれは因縁があるの! 物理空間で会ったのは初めてだけどね。 電脳空間(サイバースペース)内では 何度も会ってるし、すみれは逃げるだけだけど。

小梅:
因縁? 何度も会ってる? 神さまとお近づきって事ですか? すみれ様ってネット内で何者なんですか!


注:デウス・エクス・マキナ(deus ex machina、羅: deus ex māchinā デウス・エクス・マーキナー)
《機械仕掛けの神の意》古代ギリシャ劇の終幕で、上方から機械仕掛けで舞台に降り、紛糾した事態を円満に収拾する神の役割。 転じて、作為的な大団円

演出技法の一つである。古代ギリシアの演劇において、劇の内容が錯綜してもつれた糸のように解決困難な局面に陥った時、絶対的な力を持つ存在(神)が現れ、混乱した状況に一石を投じて解決に導き、物語を収束させるという手法を指した

由来はギリシア語の ἀπὸ μηχανῆς θεός (アポ・メーカネース・テオス) からのラテン語訳で、「機械仕掛けから出てくる神」、あるいは「機械仕掛けの神」などと訳される。

悲劇にしばしば登場し、特に盛期以降の悲劇で多く用いられる。アテナイでは紀元前5世紀半ばから用いられた。特にエウリピデスが好んだ手法である。

作者解説:
問題は神なみの化け物の巣窟のような出演陣しかいないような劇だとそんな都合が良い手法がつかえず、大団円どころかさらに劇を大混乱させるだけなのです。

デーメーテール:
我を抜け者にして話すな! 質問に答えよ、定命の者。

すみれ:
前も聞きましたけど、すみれが「破る破らない」以前にその「掟」って何? それを教えてって言ってますよね? あとここはすみれ達が住む物理空間では無いですか? 値はそう示しています。 貴女が嫌う「腐肉が覆う汚れた大地、「גי(א)-הינום」=ゲヘナ(注)では無いのでしょうか? そんなに所までどうやって来たんですか?

小梅:
すみれ様! 相手は良くわかりませが神様なんですよね? 態度というか、言葉使いとか!もうちょっと丁寧な方がよろしいのでは!

デーメーテール:
質問に質問で返すな、Οὐρανός(ウーラノス)の破片。

すみれ:
だから! いっつも言ってますけど! すみれをくま太の破片呼ばわりしないでくれませんか! 失礼です! くま太のマスターがすみれですから! そこ大事ですから!

デーメーテール:
破片にも位階があると? それは失礼した。

小梅:
すみれ様! 罰が当たりますって! 何神に喧嘩売ってるですか! それとデメなんとかっていう神様も謝らないでくださいよ!

小梅は恐怖で混乱している。

デーメーテール:
「デメなんとか」では無い。 我は「デーメーテール・テスモポロス」だ。 ウーラノスの破片の侍従

小梅:
デーメーテール様ですね 小梅覚えました! じゃなくてぇえ!

小梅は恐怖で混乱している。


注:ゲヘナ・ゲーヒンノーム(גי(א)-הינום)
ゲヘナは罪人の永遠の滅びの場所であり、地獄を指す場所として用いられる。 永遠の滅びの場所の根拠とされる聖書箇所は以下の通りである。全てゲヘナ、および永遠の滅びの場所を意味する「火の池」について記されている。

マタイによる福音書 5:22
「また、『ばか者。』と言うような者は燃えるゲヘナに投げ込まれます。」

マルコによる福音書 9:48
「地獄では蛆が尽きることも、火が消えることもない。」

テサロニケの信徒への手紙二1:7-1:9
「それは、主イエスが炎の中で力ある天使たちを率いて天から現れる時に実現する。その時、主は神を認めない者たちや、わたしたちの主イエスの福音に聞き従わない者たちに報復し、そして、彼らは主のみ顔とその力の栄光から退けられて、永遠の滅びに至る刑罰を受けるであろう。」

ヨハネの黙示録 20:10
「そして、彼らを惑わした悪魔は火と硫黄との池に投げ込まれた。そこは獣も、にせ預言者もいる所で、彼らは永遠に昼も夜も苦しみを受ける。」

ヨハネの黙示録 20:15
「いのちの書に名のしるされていない者はみな、この火の池に投げ込まれた。」

ヨハネの黙示録 21:8
「しかし、おくびょうな者、信じない者、忌むべき者、人殺し、姦淫を行う者、まじないをする者、偶像を拝む者、すべて偽りを言う者には、火と硫黄の燃えている池が、彼らの受くべき報いである。これが第二の死である』。」

すみれ:
小梅あのね、アレは会話をしている間は攻撃してこないから。 会話に飢えてるみたいで…

小梅:
あっ…けっこう寂しい方なんですね? 方っていうのも人だから失礼でしょうか?

すみれ:
それで普段は適当にお話してその間に準備をして、シフト(転移)で逃げるんだけど…転移できない。やっぱり物理空間だもんね。

小梅:
それって小梅達、大ピンチって事ですか?

すみれ:
…………そう。

デーメーテール:
まあ良い、その魂を刈り取り処女宮に連れ帰ってから続ぎは話す事としよう。

SE:
ぐわぁ~! 無数の黒い手が門から伸びてくる

小梅:
ひぃぃぃい!

すみれ:
Protection Shield!  プログラムの発動はやっぱり無理! 小梅逃げて!

小梅:
スイマセン…腰が抜けて…

すみれ:
ならっ! すみれのゴーストだけ持っていって! 小梅は関係ない! 小梅だけでも助けて!

小梅:
すみれ様…

デーメーテール:
ウーラノスの破片よ問題はその己(おの)の侍従なのだ。 己は掟を破り、この「index=目録」に無き造物の侍従とリンクし、己の力を分け与えた。 我はそれを処断しに来た。

小梅:
すみれ様の力を…?

デーメーテール:
さあ腐肉を捨てる時だ、ウーラノスの破片。 おのは困らんだろ? 残りの破片を呼びよせ星界=スプロールで務めを果たせ。 侍従も一緒だ普段も困らん。

すみれ:
!!

すみれ・小梅:
お兄ちゃん?!

デーメーテール:
ばかな、普通の人間が位相空間に入り込んだのか? こやつアドバンスドオーダーメイドか? ウーラノスの破片とその侍従を助けにきたというのか? たかが普通の人間が?

すみれ:
お兄ちゃん! 剣で…貫かれて…
お兄ちゃんなに? フィジカル・ブラスターモードで呪文が使える? 

デーメーテール:
余計な手間をかけさせおって! お前は我の話し相手に飽きるまでなってもらうわ人間!

すみれ:
お兄ちゃんのゴーストスフィア…

しゅるるるるる!(手がまきとって門の向こうの深淵の波紋に吸いこまれている)

小梅:
お兄ちゃんは…どうなったんですか? ねえすみれ様?

すみれ:
………

デーメーテール:
うちの宮(きゅう)に余計なモノを回収させよって。

すみれ:
余計なモノ‥‥


その17へつづく