えんぱいな日々(本編) 第五百八十ニ話 UNION 中編 その1
すみれ:
ご主人様、それですみれを呼びよせた要件は?
哲也:
そうだな。オレもう死ぬんだ。
すみれ:
えっ?
哲也:
いや正確にはもうほどんと死んでいると言っていいな。あとは小脳の機能が止まり、多臓器不全になり心臓が止まるまであとリアルスペース時間で数分という所だ。
すみれ:
ご主人様‥何を言ってるんですか。
哲也:
言ったままだが? 花路博士ご夫婦が造ったの活性化因子を含んだZX14再生薬を使っても普通の生身の身体で寿命を延ばすにも限界はあるのはわかるだろう? 今その薬を製造販売している花路製薬CEOの花路すみれなら。 しかし運命と言う物もあるんだな。まさかすみれが今はその花路製薬のCEOとは。
すみれ:
‥‥どうにかなら無いんですか?
哲也:
オレは優樹子やフランソアみたいにヒトをヤメテまで世界に尽くすなどまっぴらゴメンだしな。花路製薬のCEOになったすみれは全ての研究にアクセスできる権限があるし、すみれは調べられるものは全て調べてるはずだ。 なら知ってるはずだオレはすみれ達や、もともと全ての根源になった特異生命体である瑠莉とは違う。
すみれ:
‥‥‥‥
哲也:
お前と約束した機動母艦カリブルヌスのメイン制御GRID「カイルス」のデータスフィアだ。その中核ユニットである命令信号送信ユニットをうちで使っていた研究所から奪取されてしまって、回収に手間取ったんだが、すみれ達が制圧してくれたので鈴音達が回収できてようやく完成できた。
そしてこれはオレの副脳である同名の衛星カイルスの最終設定キーでもある。 もうオレが危篤状態に入った同時にグランドマスターをすみれに切り替えるシステムの転送を始めている。
すみれ:
‥‥だから、すみれに仕える意思をフレデリカは示しただけでマスター権限が更新された…
哲也:
オレが設計したチップをフレデリカちゃんは積んでいるから、そのグランドマスターはもうオマエだからな。
ということで受け取れ。
すみれ:
ということってなんですか! これを受けとったらもう‥ご主人様は…イヤです受け取りません!
哲也:
最後のグランドマスター命令だ。受け取れすみれ!
すみれ:
イヤァ! やめて! 手が…なんで…こんな命令! 従いたく無いです!
哲也:
これを受け取るまではオマエはまだオレのメイドってことだ。 すみれ、オレのメイドのお前にお願いがある。 お前の管理下にアヴァロンはなるが、瑠莉にどうにかしてもらえアイツには「これが俺の最後の宿題だ」と言ってくれ。
あと‥優樹子とフランソア一世の二人に哲也がありがとうと…幸せな人生だったと…伝えてくれ。 頼んだぞ。
すみれ:
ご自分で…伝えてください! 今度は本当に! すみれを置いて行くおつもりですか!
哲也:
すまんな…オレの最後のメイド。 すみれ…愛しているよ。幸せにな。
すみれ:
ご主人様ぁ!
SE:
しゅぅううううううう!
凛空:
すみれ…お帰り…
すみれ:
最初に目に入ったのが、凛空様と真理愛とフレデリカで良かったです。
お兄ちゃんだったならその場で飛び起きてぶん殴ってました。
オトコって生き物は勝手すぎます。
すみれ:
Drフィッツジェラルド、優樹子博士…ご迷惑をおかけしてすいませんでした。
Dr:
すみれさんにご迷惑をおかけしたのはわたくし達の方ですから。
優樹子:
すみれちゃん。本当にゴメンね…
すみれ:
いえ…お二人の事を思うと…いや多くの人達の事を思うと最後がすみれって…
Dr:
とにかく3分くらいそのままで身体起こさないで下さいませ。
すみれ:
はい…
すみれ:
それでご主人様よりお二人に伝言が…ありがとうと…幸せな人生だったと。
優樹子:
あれだけ好き勝手に生きて幸せで無い方がオカシイ。
Dr:
後処理も全部ご自分のオンナ達に丸投げでございますし。
優樹子:
そして、妻も愛人も結局、愛するメイドには勝てなかったと。
Dr:
不条理ですわ。
優樹子:
煙草でも吸わないとやってられないわ。
すみれ:
本当に申し訳ないご主人様でスイマセン。
優樹子:
すみれちゃんのせいじゃないから。 ゼンブあのオトコが悪い。
すみれ:
そうですねご主人様が全て悪いです…。
すみれ:
フレデリカごめんね。またご主人様として恰好が悪い所見せちゃったね。 それに…あんな事に付き合わせてしまって。
フレデリカ:
いえ…メイドとして光栄です。
すみれ:
泣かないで…とはちょっと言えないかな…ショックだよね。ゴメンね。
フレデリカ:
大丈夫ですご主人様…。フレデリカはご主人様のメイドですから。
すみれ:
そうか。ありがとうフレデリカ。
その2へつづく