えんぱいあな日々(本編) 第五百八十四話 DreiKreuz 前編 その20


美優:
本当に死んだのだろうな?確認しに行ったが遺体が溶けててな

優樹子:
DNAは完全に一致したわよ?

美優:
そういう意味では無くて、なにぶん死んでなかった前例が二つほどあるのでな

シンシア:
まかさ三度目は?

紅葉:
その考えはおもいつきませんでしたわ、さすが美優さんですわ

フランソア:
たしかにある

優樹子:
私はちゃんと戸籍上はいまでも死んでるし、お墓もあるし

Dr:
わたしはお墓はありませんが戸籍上は…

美優:
いや戸籍上とかではなくてヒトではすでに無くなっても存在しているだろっていってるんだ

シンシア:
これがシンシアの義母様ていうの楽しい♪ しかしそうかお父様結局お逢いできなかったけどまだ可能性が

美優:
オヤジは絶対自らはそのような存在になろうなどと考えもしない。一番こういう存在を嫌悪していたからな。それこそ先ほどの遺骸が溶けていたのも葬式や墓をつくらるのを避ける為だということは遺書かもら読み取れる。しかしだ、誰かに無理やりまだ利用価値があるとかいう理由で死に行くものの尊厳さえも関係ない存在が二人ほどいるのでな。 どうしてもただ安らかに死ねたと思えんのだ。

里緒奈:
お義母様…まさか…

シンシア:
いや実母である存在にそこまで信用が‥

美優:
わたしや姉様も含めてどれだけの人がその実の母と父に人生をめちゃくちゃにされたと思ってる。信用など鼻から存在しない。

優樹子:
娘にここまで言われるなんて…シクシク…

Drフィッツジェラルド:(以後Dr)
ふっ…

フランソア:
優樹子ママのしくしくと擬音を発音するのもムカつくけど、まったく悪びれずさも当然のように微笑む我が母にさすがのフランソアでもドンビキ

紅葉:
たしかにこのフッツジェラルド家とこの櫻糀家両方はわたくし達では無理という判断は正しかったですわね

里緒奈:
だからって里緒菜に押し付ける必要ないですよね! 企業経営とか瑠莉さん死んだらどうするですか! メイドの規模だってForestと人数が違いすぎます、お姉さまならどうにかなるかもだけど里緒菜じゃ無理です

シンシア:
まあ里緒菜一人じゃ厳しいだろうな。

美優:
英国の方の企業経営は私に任せろ。これでもForestに来る前はオヤジを手伝っていたんで大体は把握している。今、ミリタリアで姉様が抜けるのは全軍の崩壊を意味する。とてもみとめられん。 あくまで我々が教えてきた部下たちの為にもだ。

シンシア:
お屋敷の方もメイド長代行としてシンシアがやる。詩織さんには特務隊の指揮をしてもらわないと

美優:
もちろん将来的には里緒菜達に任せるがな、それまでの暫定処置だ。 それにこのForestを中心とした同盟こそが混乱した世界をどうにかできる希望だと私はおもっている。そのメイド長は里緒菜だ

シンシア:
一番厳しい部分は里緒菜と詩織さんと瑠莉さんにやってもらうのはかわらないの。・

里緒奈:
美優さん…シンシアさん本当に良いですか?

美優:
まああのオヤジに命をすくってもらった分の借りは返さないとね

シンシア:
美優がその時に死んでたらわたしが出会えずForestにもこれずその後一緒に極東飛行隊へいけず結婚もしてないしね、だから…わたしもお義父には感謝してるし、里緒奈のチカラになることはお義父様への恩返しになるから

里緒奈:
ありがとうございます。

優:
それに栗田源三元帥閣下が、土下座して懇願したのに、ミリタリアに残るわけにもいかないだろう。

シンシア:
見事な土下座だった。頭を完全に擦り付けて頼んでましたので

美優:
瑠莉と詩織の失態は上役である私の不徳の致すところであると…腹をここで切るかわりに里緒菜の事をよろしくお願いしますと

里緒奈:
さすが紅葉パパ元帥閣下のオジサン

美優:
お二人とも反省して下さい。

詩織・瑠莉:
はい…

里緒奈:
それでその紅葉パパは?

シンシア:
閣下が一番可愛がっている、すみれちゃんがウリエル新メイド長に謹慎処分をくらってるらしくて

美優:
すみれの部下から新小隊の教導くらいは許してやってくれるようどうにかならないと上申されたらしくて、ウリエルメイド長に元帥閣下みずから土下座懇願をしにいくそうだ。
その後トンボ帰りで閣下と私らはスッコランド政府によばれてるのでな、すぐに行かないとならない。

里緒奈:
こんどはすみれちゃんの為に土下座ですが…そして英国へそのままトンボ帰り…

シンシア:
すみれちゃんの為なら土下座どころか三跪九叩頭の礼()くらいはしそう勢いだけどね♪

里緒奈:
本当に可愛がってるんですね・・・

美優:
あれは溺愛だな。まあ部下というか孫の感覚なんだろう

里緒奈:
目にいれても痛くない…なんかわかる。



注:三跪九叩頭の礼
叩頭 とは額を地面に9回打ち付けて行う礼である。皇帝の前で臣下が行う。
隷属国では中国からの勅使に対してもが行い、琉球王朝、李氏朝鮮などが行った。
日本帝国はおこなわななかたが、欧州のオランダ・ポルトガルも清に対し権益を求め皇帝似合う為に行った、イギリスのみは行わず権益確保にならなかったが、これがのちのイギリスとのアヘン戦争に繋がり清は欧州各国の支配、日本の日清戦争にもつながり最終的に清は滅亡することになる。

上のことから英国籍の紅葉の父、栗田源三がこれをすると例えるのは「最大の自尊心を放棄してでもウリエルにすみれの為に懇願する」というシンシアの比喩である。
 

第五百八十五話 DreiKreuz 後編 へつづく