えんぱいあな日々(本編) 第五百八十七話 ignited 後編 その13
アナウンス:
次は白森女学園前
綾愛:
よしここだ、えいぃ!
SE:
ぶぅ~ピンポン♪
女子生徒A:
なぜ夏休みなのに補講があるの…
女子生徒B:
出席日数が足り無いんだから仕方ないじゃない。
綾愛:
ここが白森女学園、意外と普通?
マリアンヌ:
あっ! 来た!ちゃんと一人で来れたんだ!
綾愛ぇ~!
リズ:
おぉ~あの娘がマリアンちゃんのリア友の綾愛ちゃん? 可愛い娘じゃない。
綾愛:
マリアン? えっ‥‥お嬢様? が居る…
クロートー(注):
ここにも居ない! もうこんな時に何処行ったの? 大変なのに!
注:クロートー(Κλωθώ,)
クロートーは、ギリシア神話における「運命の三女神」こと「モイライ」(注2)の一柱で、長姉とされる。その名は、「紡ぐ者」を意味する。日本語では長母音を省略してクロトとも呼ぶ。
ローマ神話のノーナ(ラテン語: Nona)と同一視される。
注2:モイラ(μοῖρα)
モイラ(μοῖρα)は元々「割り当て」という意味で、人間にとっては、「寿命」が割り当てられたものとして、もっとも大きな関心があった為、寿命、死、そして生命などとも関連付けられた。また出産の女神であるエイレイテュイアとも関連付けられ、やがて運命の女神とされた。
最初は単数で一人の女神であったが、後に複数で考えられ、三女神で一組となり、複数形でモイライ(Μοῖραι)と呼ばれるようになった。
人間個々人の運命は、糸の長さやその変容で考えられ、クロートーは彼女が手にする糸巻き棒から引き出し紡いで運命の糸とし(クロートーはそれ故に「紡ぐ者」である)、人間に運命を「割り当てる者」がラケシスで、三人目のアトロポスがこの糸を切った。こうして人間の寿命は決まるのである。
プラトーンの『国家』(注3)の末尾にある『エルの物語』(注4)では「現在」を司る神として登場している。
注3:プラトーンの『国家』
プラトン(紀元前427年 - 紀元前347年)は、古代ギリシアの哲学者である。ソクラテスの弟子にして、アリストテレスの師に当たる。
プラトンの思想は西洋哲学の主要な源流であり、哲学者ホワイトヘッドは「西洋哲学の歴史とはプラトンへの膨大な注釈である」という趣旨のことを述べた。
『ソクラテスの弁明』や『国家』等の著作で知られる。現存する著作の大半は対話篇という形式を取っており、一部の例外を除けば、プラトンの師であるソクラテスを主要な語り手とする
『国家』(Πολιτεία、ポリテイア)は、古代ギリシアの哲学者プラトンの中期対話篇であり、主著の1つ。副題は「正義について」。
原題の「ポリテイア」とは、「国制/政体」の意味であり、これは「国家(ポリス)のみならず、個人(アネール, ἀνήρ)の魂(プシュケー)の中にも、類比的に「国制/政体(ポリテイア)」の様なものが存在しており、その種類はどちらも大まかには、1つの「善い(正しい)国制/政体」と、4つの「悪い(不正な)国制/政体」に分けられる」(すなわち、個人の「修身」と、国家の「治国」には、「国制/政体(ポリテイア)」のごとき共通性がある)とする、本編の主内容に因んだものである。
具体的な内容については、ケパロスとの会話が発端となって提起された正義が何なのかという問題から始まる。
まずソクラテスは、トラシュマコスによって主張された「強者の利益」としての正義という説を論駁したが、正義それ自体の特定にまでは至らずアポリア(解決のつかない難問)に陥ってしまう。
しかし、プラトンの2人の兄であるグラウコンとアデイマントスが、正義の議論を引き継ぎ、世間に蔓延する正義の存在を否定する立場(道徳否定論・正義否定論)を代理に主張しつつ、ソクラテスに対して正義の実在を証明するように求めたために、ソクラテスは個人の延長として国家を観察することで応答しようとする。国家を観察するためにソクラテスは理論的に理想国家を構築しており、その仕組みを明らかにした。
そして理想国家を実現する条件として、ソクラテスは独自のイデア論に基づいて哲人統治者(哲人王)の必要を主張する。
この哲人統治者(哲人王)にとって不可欠なものとして
善のイデアに到達するための数学諸学科と弁証術(ディアレクティケー)なる教育の理念が論じられており、そうして養われた知の徳性(知性)を頂点とする
「善き政体」の獲得/確立/守護/維持という意味での正義が、国家全体の水準でも、一個人の内面の水準でも人間を幸福にするものと主張される。
注4:エルの物語
エルの物語、または、エルの神話(とは、プラトンが『国家』の末尾で記述した冥府の物語のこと。
パンピュリア族のアルメニオスの子エルが、死後十二日間に渡って体験した臨死体験という体裁を採り、輪廻転生、閻魔大王のごとき冥府の裁判官たち、天国と地獄、天動説的宇宙論など、様々な要素が盛り込まれた物語となっている。
〇忘却と転生
‥‥全ての魂が新たな生涯を選び終えると、くじの順番で整列して、ラケシス、クロートー、アトロポスのモイライ(運命の女神たち)の下へ行き、その運命の糸を不変なものとしてもらい、アナンケー(必然)の女神の玉座の下を通って、「レーテー(忘却)の野」へと旅路を進んだ。それは草木一本生えてない炎熱の道行きだった。
夕方になって「アメレース(放念)の河」のほとりに宿営することになったが、この河の水はどのような容器でも汲むことができなかった。全ての魂はこの水を決められた量だけ飲まなければならなかったが、自制することができない者たちは、決められた量よりたくさん飲んだ。そして皆一切のことを忘れてしまった‥‥
クロートー:
見つけた! こんな所に居た!
ラケシス(注):
姉さま、そんな慌ててどうしたの?
クロートー:
大変なの! 何者か達にヒュンドラーが倒されて第六封印まで突破された!
ラケシス:
姉さま寝ぼけてるの? あのヒュンドラーが倒せるわけない。
クロートー:
でも倒されたの! その者達は今、レーテーの野でラードーンと戦ってる!
注:ラケシス(Λάχεσις)
ラケシスは、ギリシア神話の女神である。運命を司る3人の女神、モイライの1人。その名前は「配給者」すなわち「運命を割り当てる女」という意味を持ち、運命の糸の長さを測る役目を担って、全ての人間に一定量の寿命を決定する。ローマ神話のデキマ(ラテン語: Decima)と同一視される。
白い衣をまとい、頭に花冠を戴いており、ラケシスは過去に起きたことを歌いながら、両手でアナンケーの紡錘が回転するのを助けている。
また玉座に座るラケシスの膝の上には籤があり、死者の魂はラケシスのところに行って、次に生まれ変わる生涯を籤の中から選ぶ。このときに各人の運命を導くダイモーンが決定する。
アトロポス(注):
う~ん…お姉ちゃん達。何かあったの?
ラケシス:
クロト姉さまが誰かヒュンドラーを倒して第五階層まで来てるって言ってる。
アトロポス:
あの浸食領域の塊を倒した? どうやって? 今は第五?
ラケシス:
もうラードーンと戦ってるらしい
アトロポス:
まさか100匹のドラゴーンは倒せないとは思いますけど…気になるので見に行ってます
注:アトロポス( Ἄτροπος)
アトロポス(古希: Ἄτροπος, Atropos)は、ギリシア神話の女神である、運命を司る3人の女神モイライの1人である。その名前は「変えるべからざる者」あるいは「不可避の者」という意味を持つ。ローマ神話のモルタ(ラテン語: Morta)と同一視される。
ヘーシオドスによるとモイライは人が誕生するときに禍福の運命を与えると述べられている。アトロポスはモイライの中では末妹に当たり、運命の糸を切るのを役割とする。
アトロポスは「未来」に起こることを歌いながら、左手でアナンケーの紡錘が回転するのを助けている
クロートー:
アトロポス、見に行くの?
アトロポス:
モイライ宮の封印はどこのGRIDの電脳神が侵攻してきても第三階層にも到達することが出来ませんでした。そのれがクロト姉さまが言うとおり第六階層まで突破されたのなら、その者達は未来を決定するチカラがあるかもしれません。 見ておきたいです。 まさかここまでは来ることは出来ないでしょうから、こちらから会いに行くしかないでしょう?
ラケシス:
でもここまでこれないと未来は決定できないじゃないの?
アトロポス:
可能性があるモノたち。今回はここまでこれずに撤退したとしてもです。ですから撤退する前に会いたいわけです。
クロートー:
気をつけてね…。
アトロポス:
あと接触できればアナンケーの紡錘の回転が不安定になってしまった理由のヒントを得られるかもしれません。
アトロポス:
それに総監督のディオーネー様は寝たまま起きないので、これじゃ仕事できません。暇つぶしには、なりますし。
クロートー:
まあ、少し外すくらいなら良いでしょう。 わかったアトロポスが様子を見に行って来てお願いね。姉さんは滑車のメンテナンスに戻る。
ラケシス:
ラケシスはここで本読んでるから総監督が起きたら連絡する。
その14 へつづく