えんぱいあな日々(本編) 第五百八十八話 Paradise Lost 前編 その19

 
クロートー:
これだと簡単に甘い飲み物が飲めますね

ニケ:
缶ジュースっていうものよ。大使館の中にも設置されているから地上へもどったら買ってみたら?

クロートー:
もどったらさっそく買ってみます!

良二:
まずすみれ、ボクや剛史お兄さんなどスプロールの管理権限をもっているが非常時以外は身分を明かさずいっさい干渉しない者まで非常呼集がかかったばかりか、スプロールを無理やり意思統一し物質世界、地上へ積極的に干渉するという命令を総合管理意識アストライアーが下した原因は何なんだ。

すみれ:
良二さんもスプロールの意思決定といっても一つでない事はご存じだ思いますが、通常のスプロールの執政方式を補佐しているデウスキューブ。これが沈黙しました。 理由として「現在の世界」これはスプロールの電脳世界と物質世界双方合わせた意味での「世界」ですがどう演算しても崩壊は免れない状態であると。よって具体的な補佐は全て無駄であると結論づけた為です。

その中で唯一残されたのが例外処理として存在するディオーネ。幸ですね。

良二:
そこまで演算が悪化した理由は解っているの?

すみれ:
これが中央アジア南方戦線に20機現れいっきにチベット防衛線を突破しました。

クロートー:
何ですかこのお人形?

すみれ:
人形には変わらないけど、大きさは25mある

クロートー:
巨人ですか?

良二:
量産型アーマーメイド…でも奈々が乗っていた機体を開発した工場は完全に瑠莉さん達が破壊したし、パイロットになるハイパーオーバーメイドはボク達が回収した…まさかバイオメイドで? ボク達もアヴァロンも技術の拡散を恐れてアーマーメイドの稼働はずっと凍結していた…なのに…機体は残骸を回収していた?

梨音:
一度戦場に現れた以上、南アメリカの戦場でも登場するのも時間の問題、世界中の戦場でこれが猛威を振るう事になる。量産型アーマー同士の戦闘が現実になる。

クロートー:
巨人同士の戦いが地上で? ティターンの争いとか、旧約聖書の創世記のネルフィム? 

梨音:
それでデウスとしては地上と天上は処置なしとなり沈黙したと。 アーマーメイドを管理するのはオリュンポスだから、これが登場したのは幸、ディオーネの健在化と同時期だったので、コイツに混乱をもたらされているディーヴァローカとしては幸を消滅させればこの混乱が収拾できると考え、こちらへ侵攻してきたと。まあ事実をしって「そんなものじゃ収まらない」と確認できたので今は侵攻は止まってますがね。

クロートー:
巨人がはびこる地上世界に絶望した、人間を造りし神は、一度全ての人々を淘汰しやり直すために大洪水を…ワールドエンド…共通神話の世界ですか?

すみれ:
その為の「安全装置」としてのバスターランチャーを装備したイーリスだけどね。 まあイリーシャはアストライアーに地上世界の消滅の代替にスプロールと地上世界の人々に「もう一度だけ」チャンスを下さいと懇願。 新しい世界秩序による世界再構築シナリオを提案した。

良二:
まずはスプロールを平和的に統一し地上へ積極的に介入。量産型アーマーメイドを運用している勢力を地上の人々と一緒に打倒。混乱を収束させたうえにスプロールと地上の統合を図りこのような事が起きないように世界を再構築する…ということか。

すみれ:
さすが元ご主人さま、理解が早くて助かります。

良二:
デウスキューブの代替にヒューベリオンをつかってスプロールの方向性を当面とるつもりなのか?
それで今展開しているその20機のアーマーメイドはどうするつもりだ?放置してはおけないだろ?

梨音:
うちの同盟の旅団で対処しました。ちょっと地図から町が一個消えましたけど相手がまだリフレクトアーマーが未装備なので対処できました。

クロートー:
地上世界でのチカラ技ですか…

すみれ:
しかしリフトアーマーを演算できるバイオメイドの開発も時間の問題だと思うので時間稼ぎにしかなりませんが。

良二:
当面はスプロール連合の意思統一。その後は?

梨音:
スプロール連合で地上に国家をつくります。

良二:
それはもともと梨音の案だよな? 向日葵と結婚する一番の早道は国家を新につくってそこでバイオメイドの人権を確立すること。 この状況をそれに利用すると。

梨音:
はい。梨音は、メイドの解放とかスプロールの存続とか人類の未来とか「ついで」であり手段ですから。

クロートー:
うっ…ついで…手段…

良二:
個人の権利と社会への義務を天秤にかけたときに個人の権利に重さをおかなれば…まあその方が信じられるな。

梨音:
わたしは偽善者ではないので。 あくまで梨音の欲望の為にやってます。

良二:
わかったボクは協力しよう。 久美達との世界が無くなるなどゴメンだしな。

良二:
「境界を定める者」の名において命じる! 全てのバイオメイドの地上AURORAとスプロールAURORAの相互許可を行える権利を与える鍵をスプロール連合大使館筆頭大使デーメーテールに与える。 書き換え開始!
これで大使館が許可を出せば衛バイオメイドならスプロールへアクセスできるはずだ。衛星機能のエミュレートはAVALONGRIDで行えばよい。 

今ここに地上と天上の垣根は取り払われた。 これが生存に繋がるか破滅を早めるかはみんなの行動よって決まる。

ニケ:
人と電脳神の境界を取っ払った?

梨音:
さすが良二お兄ちゃん判断はやいね。

良二:
ボクは整備にもどるが、すみれ、梨音ちゃん、二人とも地上のペースで仕事してないか? ここでの時間はゆっくりだ、地上で忙しい分、少しはゆっくりしたらどうだ? 焦っても良い結果はでないよ。

すみれ:
そうですね‥‥良二オーナー。

梨音:
はい…わかりました。

クロートー:
これがプロメテウス様


その20 へつづく