えんぱいあな日々(本編) 第五百八十九話 Paradise Lost 中編 その11

 
優萌:
お兄ちゃんとミレーヌは大丈夫だったんですから、星美も大丈夫ですよ。

梨々衣:
わたくしは今回の星美はちょっと橋本シスターズの中でも特殊な子なので連絡を受けて来たのですが、クロト達は何故お越しに連絡はしてませんよね?

クロートー:
はい。寝ていたら「ここに来なければならない」という予感がして起きました。私一人で来ようと思ったのですが、ご主人様と向日葵が一人で行かせるわけにはいかないと…

梨々衣:
予感ですか…また非科学的な感覚ですわね。 それは良いとして向日葵は来てくださったのは嬉しいのですが、なんですかこれ?

向日葵:
くう~♪

梨音:
今日は疲れてるから許してあげて。

クロートー:
アリエルメイド長がパニックになって、お泊りの予定をキャンセルしてお店にもどってきてから走り回ってましたものね。

梨音:
どうしてもルゥナお姉ちゃんもアリエルお姉ちゃんも夜はサロンで手一杯だし。マリッエットお姉ちゃんだけだと手に限界が。レストランとカフェは梨花が仕切ってるから良いけど

梨々衣:
お姉さまが本日で事務処理の調整は終わらせたそうなので、明日からは向日葵のサポートに入るそうなので。

梨音:
助かる。明日からはクロト達やノーラ達は梨音と夢結とエミリーが引率でカイ達も含めて色々連れて行くから

クロートー:
はい!社会科見学楽しみです

梨々衣:
願いしますわ。まずは地上や外の世界に慣れる事ですからね。

しゅん!(とドアが開く)

クレア:
外科的処置は終った。命に別状はないよ。 クレアは剛史さんとミレーヌの所に行って来る

優萌:
良かった。ありがとうございます。フレデリカとドロシーさんが付いてますので。 お願いします。

クレア:
解った

フロリー:
クロートーさすがだもう居るね。 向日葵先輩を起こすのは可哀そうなので、梨音先輩以外は入って下さい。
状況を先生が「見せます」ので。

優萌:
何なんですかこれ? 人間じゃ無いですよね…ナニコレ‥‥

すみれ:
そうね…さすがに人間とは呼べないかな…そうか、優萌は解るんだ。

梨々衣:
幸さんの時に「もしや」と思っておりましたが、プロジェクトフォルトゥーナで5柱は御爺様が担当していたと‥

フロリー:
彼女は運命・宿命・生命の根源・そして到達点の健在化。アナンケーという電脳女神。生と死を繰り返し輪廻の輪、悲しみの輪から解脱したモノ。そのデータを元に生命を設計するコアの生きる構造体。 

優萌:
わかるようでワカラナイ。でも理解できる‥なんで

フロリー:
優萌、貴女も器だからよ。

優萌:
器?


注:アナンケー
アナンケー( Ἀνάγκη)は、ギリシア神話の女神で、運命、不変の必然性、宿命が擬人化されたもの。 ローマ神話では「ネケシタス」(Necessitas)と呼ばれる。 アナンケーはアドラステイアーやモイライの母とされることもある。 アナンケーが崇敬されるようになったのは、オルペウス教注2)が創始されてからである。

注2:オルペウス教
オルペウス教は、古代ギリシャ世界における密儀宗教。 オルフェウス教とも。
 冥界(ハーデース)を往還した伝説的な詩人オルペウスを開祖と見なしている。 
また、冬ごとに冥界に降り、春になると地上に戻るペルセポネー、同じく冥界を往還したディオニューソス(バッコス)も崇拝された。

その歴史的起源は紀元前6世紀、または、少なくとも紀元前5世紀にまでさかのぼり得るかもしれない。
エレウシスの秘儀と同じく、 オルペウス教は来世における優位を約束した

・教義
魂と肉体の二元論、転生、輪廻からの最終解脱、などを基本的な教義とする

・特色
一般的な古代ギリシャ宗教と比較して、オルペウス教の特徴とされる点は以下の通りである。

人間の霊魂は神性および不死性を有するにもかかわらず、輪廻転生(悲しみの輪)により肉体的生を繰り返す運命を負わされている、という教義。

「悲しみの輪」からの最終的な解脱、そして神々との交感を目的として、秘儀的な通過儀礼(入信儀式)および禁欲的道徳律を定めていた点。

生前に犯した特定の罪に対し、死後の罰則を警告した点。
教義が、神と人類の起源に関する神聖な書物に基づいている点。

・典拠
ギリシア人一般あるいはギリシア神話は、死後の世界に対する興味をそれほど示していない。
この点でオルペウス教は特殊であり、そのため研究者の間には死後について言及をオルペウス教の影響に帰する傾向が存在した。
しかしオルペウスのものとされる書物や教義は、早くにはヘロドトス、エウリピデス、プラトンなどの言及により確認されるものの、確とした教団として言及されるのは比較的後代となる。
このような極端な懐疑論を取る研究者は少なく、また近年のデルヴェニ・パピルスや黄金版などの発見により、懐疑論はいくらか勢いが弱まったものの、いつの時代から、どの程度の影響力を持っていたのかについては研究者の間にコンセンサスは存在しない。

・神話
オルペウスによるものとされる神話はヘシオドスの『神統記』に範をとる系譜的な神話詩によって語られていたようである。この神話は近東諸国の神話の影響を受けた可能性もある。オルペウス教に特徴的な人間の本質の起源を語る物語は以下のとおりである。: ゼウスとペルセポネーの息子であり、かつザグレウスの霊魂の顕身であるディオニューソスは、ティーターン族により殺害され、その身を茹でられた。

だが、ヘルメースがザグレウスの心臓を奪いかえし、怒ったゼウスがティーターン族に稲妻を浴びせかけた。 その結果、ディオニューソスの体の灰とティーターンの体の灰が混じりあい、その灰から罪深き「人類」が生まれた。そのため、ディオニーソス的要素から発する霊魂が神性を有するにもかかわらず、 ティーターン的素質から発した肉体が霊魂を拘束することとなった。

すなわち、人間の霊魂は「再生の輪廻(因果応報の車輪)」に縛られた人生へと繰り返し引き戻されるのである。

ディオニューソスの心臓は一時、ゼウスの脚に縫い込まれた。その後ゼウスは、死を免れえない人間の女性であるセメレーの母胎に、生まれ変わったディオニューソスを宿させることとした。

これらの物語にまつわる多くの詳細が、以下の古典文献にて散発的に引用言及されている。

プロトゴノス神統記』(約紀元前500年頃成立。散逸)。デルヴェニ・パピルスにその影響が見出しうる。
エウデモス神統記』(紀元前5世紀に成立。散逸)。バッコス信仰およびクーレーテス信仰を混合した文献。
ラプソディーズ(Rhapsodic Theogony)』(ヘレニズム時代に成立。それ以前の詩編も収録。散逸)。後世のネオプラトニズムの学者による概要を通して知られる。
オルペウス賛歌。 後期ヘレニズム時代もしくは初期ローマ帝国時代の作品より短い、六歩格の詩87編。

・終末論
近年発見された黄金版や骨製のタブレットに記された碑文からディオニューソスの死と蘇生にまつわるオルペウス神話と、来世における祝福への信仰との関連性が読み取られる。
オルビアで発見された骨製のタブレット(紀元前5世紀) には、以下のような短く謎めいた銘文が刻まれている。

「生、死、生、真実、ディオ(ニューソス)、オルペウス」。 

これら骨製のタブレットの用途はまだ解明されていない。

トリオイ(テュリ、Thurii)、ヒッポニウム(現在のヴィボ・ヴァレンツィア)、テッサリアおよびクレタ島の墳墓から発見された黄金版(最古のものは紀元前4世紀)には、以下のような死者への教えが記されている。


冥界に降りたとき、レテ(レーテー)の水(忘却)ではなく、ムネーモシュネーの泉の水 (記憶)を飲むように気をつけなくてはならない。そして、番人に次のように告げなくてはならない。

「私は「大地と星空」の息子です。
喉が渇いたので、ムネーモシュネーの泉から何か飲むものを私にください。」

さらに、他の黄金版にはこう書かれている。

「さあ、今や貴方は死んだ。そして、三度祝福される今日、生誕した。

ペルセポネーに告げよ。

まさしくバックス(バッカス)自らが、あなたを救済したのだ」

と。

ベティー:
大体ですね、ヴェルさんと桃子先生が居て、なぜこのポンコツ二人の案に乗るんですか! それも何も知らないクレアを巻き込んで! 私とお姉ちゃんがスプラメイド用のチップと神経中継素子を持ってこれなかったらどうする気だったんですか!

ヴェル:
ほら間に合ったし。それにだって時間なかったし。

桃子:
覚醒するまでどっちがどっちだか判別できないでしょ? 片方が解れば確実に片方は助かるし

アンナ:
そういう問題じゃないです。 人の命で博打を何故うつのか? という事です
とにかく、アナンケーの意識コアの融合はそこのフロリー達人外達に任せるしかないので「メーティス」の方のカラダの方の処置を急いでしましょう

梨々衣:
何処にいるかわかります?

クロートー:
やはり梨々衣様の果樹園の中の黄金の林檎の木の場所に。

梨々衣:
守護龍のラードーンがいますね、急ぎませんと。梨音も入れて行きますわよ。

フロリー:
お姉ちゃん達、優萌の手術は頼みます

すみれ:
凛空さま、行ってきます。

優萌:
えっ優萌が手術?

凛空:
優萌、全然今は状況が把握できないだろうけど、手術をするから準備しよう。凛空が着いていてあげるから

優萌:
はい…凛空様。


その12へつづく