えんぱいあな日々(本編) 第五百八十九話 Paradise Lost 中編 その3

 
幸:
梨音さん、クロトさんどうしたんですか?

すすっと桐の台にのった短刀を差し出すイリーシャ

梨音:
昨晩、このわたくし梨音はこの幸とテミスの女官女神であるクロートーを自分の専属メイドにするために姦通を行い、彼女の処女を奪いそのカラダを汚しました!

クロートー:
先ほどアナンケー糸車の整備を行おうと呼び出そうとしたのですが、反応が無く糸車が現れませんでした。
わたくしが処女で無くなった為、生命の糸を紡ぐ資格無しとされたものと思われます。
新たな電脳意識体の生産制御を行う力はわたくしから失わました。 申し訳ございません。

梨音:
梨音とクロートの不義によりこのような事態を招いてしまった責任をこの二人の命をもって償いたいと思い、自死切腹を承るか、その場でお手打ちにして頂きたいと思います。

クロートー:
謹んで死を承り、その遺骸を焼却しアナンケーの炉にくべて、せめても償いとさせて下さいませ。 お願いいたします。

クロエ:
アナンケーが沈黙した? 

幸:
たしかアナンケーってバイオメイドを含む電脳意識体の生産を司る中央システム? コア? その制御をするのがモイライの三女神で、クロートーさんは一番偉い管理者でそれがってことは‥電脳意識体が新しくう生まれない?

ラケシス:
そうなる。 実際先ほどクロト姉さまが呼び出せないので、私も呼ばれて一緒にチェックしたけど…うんとすんともしなかった。

幸:
それがクロートーさんが処女でなくなったから? 処女じゃないと絶対ダメとか決まりなの?

アトロポス:
いや聞いたことは無いんですが…でも実際に制御盤であるアナンケーの糸車が呼び出せないなら…そうだったじゃないですか?

幸:
あの!先輩方どうしましょう?

テミス:
女官女神といえば神殿につかえるメイドと同じ。それをオーナーである私と幸に内緒で姦通を行うというのはN・T・Rだ。 死に値する! 切腹を許すならこのテミス自らが介錯をしてやる!

梨々衣:
それによってこのような事態を引き起こし、まだ生き恥を晒しているとは情けないにもほどありますわ。

イリーシャ:
お手打ちにするのか、名誉ある自死切腹を許すのか早く決めてやれ。

幸:
そんな‥‥

幸:
カイ、優奈くん、フロリー!

カイルス:
幸、さっさとこの刀で楽にしてやれ! 切腹よりは楽に死ねる。

優音:
う~ん武人と神官の名誉なら切腹なんだが…苦しいよな、痛いよな…なら手打ちにしてあげた方が…カイの言うとおり幸、二人の首を落としてやれ。

フロリー:
弁護の余地なし、さっさと決めて。

幸:
あぁあぁ‥‥

幸:
クロエ助けて! 切腹かお手打ちかなんか選べないよ!

クロエ:
クロエが付いております! 落ち着いて下さい! そうだ! ラケシス様、アトロポス様、もう一度、アンナケーの糸車をクロートー様と三人で呼び出してみて下さい!

ラケシス:
う~んそもそも糸車の制御盤は姉さまだけで呼び出せるものだから無駄だと思うけど…

アトロポス:
お姉ちゃんやってみましょう!

クロートー:
運命の女神、アナンケーよモイライ3女神の名において

ラキシス:
生命を紡ぐ糸車を

アトロポス:
動かす歯車をここに!

三人:
召還!

梨音:
これがwheel of fortune スプロールの電脳意識生産コア制御モジュール!
なんて複雑で綺麗なシステム…神秘的‥

テミス:
現物初めて見た!

アトロポス:
召喚できるじゃないですかお姉ちゃん達

ラケシス:
できるね‥‥

クロートー:
より歯車のシステムが不安定になってただけ?

梨音:
おい、法と秩序の女神のテミスさんよ? 梨音が不具合再現と原因の精査を提案してたのに問答無用で引っ捕えて処刑の為に引き出したあげくそれが冤罪? どう落とし前つけてくれるんだ? ああ~?

テミス:
あぁ…でも姦通を行ったのは事実ですし

梨音:
メイドには自由意思ってあるんだよ? クロトは梨音を好いている。それでメイドになってもエエと言うてな。なあクロト。

クロト:
はぁい! 梨音ご主人様を好いております! それで是非メイドになりたいと思っております!

テミス:
そうか…幸、どうかな? 梨音の所に行きたいそうだ。

幸:
クロートーが梨音さんの事を好いているなら、専属メイドで宜しいじゃないでしょうか?
すみれご主人様も一番大事なのはメイドの意思だと言っておられますし!
仲良い事は良い事です、もう処女じゃないですからばんばんヤッて下さい!あははっ

クロト:
そうですね!  アテーナー様、クロト様、お幸せに! あははっ…

カイルス:
今のところは一件落着! 後は地上に降りてから向日葵さんの裁断しだい!
終わり閉廷以上みんな解散!

テミス:
強引に押し切られた‥‥

梨々衣:
専属メイドですか…

イリーシャ:
そういえば梨々衣はメイドを取らないのか? るー姐さんは当然メイドじゃないでしょ?

梨々衣:
はいお姉さまはあくまでお姉さまでわたくしのメイドではありませんわ

イリーシャ
なんでお付きのメイドも取らないんだ?

梨々衣:
わたくし、今だにメイドって何なのかワカラナイのです。お姉さまと出会うまではわたくしはずっと一人で生きて来たので…。それにお姉さまも自由人ですから二人別々で行動している時が殆どですし。

イリーシャ:
そういえばそうだな…。

イリーシャ:
愛人くらい作ってもるー姐なら許してくれそうだけどな。 夜とかずっと一人じゃ寂しいだろ?

梨々衣:
ひぃ! そ…そんな事ございませんわよ!

イリーシャ:
あとその立場でお付のメイドくらい、この電脳世界でも物理世界でもいないのは色々とな

梨々衣:
うっ…そうですわよね…うぅ…お付のメイドで愛人…

イリーシャー:
無理強いはしないが、考えてみてくれ。愛人はともかくお付のメイドはカタチだけでも居た方良い。私も地上ではフランソアご主人様の補佐メイドだから気にはしている。

梨々衣:
はい…お姉さまに相談して…みますわ。



その3 へつづく