えんぱいあな日々(本編) 第五百八十九話 Paradise Lost 中編 その4
梨々衣:
実はわたくし付の侍女を取ろうかと思いまして。
幸:
決心なさったんですね!
すみれ:
おぉ!ついに!
梨々衣:
はい、クロエに幼馴染みの侍女仲間のノーラがわたくしをとても崇拝というか好いていると紹介されたのですがとても良い娘なので。 侍女をしてもらう事にしました。
幸:
そうですか! 良かったです! その子も喜んでおりましたでしょう!
梨々衣:
はいとても。物質世界、地上でもお付の専属メイドをしたいと、つねに一緒にいたいと寝食を共にしたいと言っておりまして。お受けしました。
幸:
物質世界でも! お幸せに!
ルシフェル:
寝食を共にする! それって侍女で専属メイドで愛人! ああぁ…ア‥アタシ捨てらるの?
梨音:
るーお姉ちゃん捨てられて当然だと思う。
すみれ:
ねえそのノーラって可愛いの?
フロリー:
おい、我が主(あるじ)、まさか狙ってるじゃねえだろうな? まだ攻めに余裕があると。フロリーとニケお姉ちゃんだけじゃなくて、今夜は優奈もいれてズタボロにしようか?
幸:
はい優奈くんは今夜はそちらへ♪
すみれ:
いやいや! 使い魔さま、何を言ってるんですか~すみれのライフはもうギリギリですよ…これ以上は無理ですから!
梨音:
おいサタン、このパルテノンでこちとらずっとスプロール連合の総会の根回しや資料作成を身を粉にして作業していた間、ここに寄り付きもせず、どこに行ってたのか、この梨音と梨々衣が知らないとでも思っているのか?
ルシフェル:
ぐぎぃ! 何ノ事デスカ?
梨々衣:
お姉さまがレスポス島に愛人を囲っていたとは…悲しいです‥‥
ルシフェル:
ひぃぎぃいい! 見ニ覚エガナイデゴザル!
梨音:
ということで、連れてきて!
ルシフェル:
連れて来て? えっ!
ノーラ:
本当に入っていいのかな?
クロエ:
何言ってるの!入らないと挨拶できないでしょ!
エリーザ:
死ぬなら楽な方法で処刑をしてくれたらいいな‥‥
レスフィーナ:
何ブツブツ言ってるの!ほら背筋を伸ばして!
梨々衣:
貴女がエリーザ‥‥可愛い娘(こ)ですね‥‥
エリーザ:
ひぃぎぃ!ヘーラー様…申し訳…ござい…ませ‥‥んっ!
ルシフェル:
エリーザ! 何故ここに‥‥レスフィーナ裏切ったわね!
レスフィーナ:
私はサタンの味方ではありませんので。普段はホーライ神殿へ出向してますが、本来はレスポスを護るのがレスポスの女神、このレスフィーナの務めでありますから。
エリーザ:
エリーザがパルテノン神殿に出頭しなければ、アテナイ艦隊が押し寄せて町と神殿を略奪したあげく、大神ウーラノス様が天から星を降らし、レスポス島(注)を塵灰と化すと…
ルシフェル:
!!
梨音:
ふっ、仲間の巫女や市民を救う為に自ら生贄に…良い子だよね~健気だよね~! ふっ!
ルシフェル:
梨音~!すみれ~! アンタらというヤツわぁ~!!
すみれ:
さあるーお姉ちゃん。チェックメイトだ。 お前を罪を数えろ!
幸:
まさに邪神の吹き溜まり‥‥
すみれ:
幸聞こえてるわよ
幸:
ひぃ!
注:レスボス島
レスボス島は、エーゲ海の北東部、トルコ沿岸に位置するギリシア領の島である。
古代においてはアイオリス地方の中心地として知られた。
ペロポネソス戦争中デロス同盟からの離反を試みて失敗した際、アテナイでは苛酷な処罰(ミュティレーネー市民の成人男子は全員死刑とし、婦女子は全員奴隷として売る)が決定されたが一夜明けて変心したアテナイ市民がそれを覆す決議を行い、それを伝える船が間一髪処刑の開始に間に合ったエピソードも有名である。
古代ギリシアにおいてレスボス島は抒情詩人を多く出したことで知られる。
アリーオーンは紀元前7世紀のレスボス島メーテュムナー出身の音楽家で、ディテュランボスの発明者とされる。船の上で襲われたときに、彼の音楽によってイルカが集まり、イルカの背に乗って難を逃れたと伝えられる
「レズビアン」という言葉
サッポー(注2)が女性に対する愛を謳った作品を多く遺したことから、英語では、もと「レスボス人」を指した Lesbian という語は、後に女性同性愛者(レズビアン)を意味するようになった。女性同性愛の意味での lesbianism という語は1870年から記録がある。20世紀以降、この言葉は世界各国に借用され、広まった。
こうしたことから、レスボス島、とくにサッポーの生誕地であるエレソス (Eresos) はレズビアンにとっての観光名所となっている
しかし地元では歓迎されていないという。島の名についても「レスビアン」につながる「レスボス島」の名は避けられ、中心都市の名を借りて「ミティリニ島」と呼び替えることが地元では一般的になっている
2008年には、正統な呼び名を奪われたことにより島民は権利と尊厳を損なわれているとして、島民を中心とするグループがギリシア国内のLGBT団体「ギリシャ・ゲイ・レズビアン連合」(OLKE)を相手どり、団体名から lesbian の語を削除することを求める訴訟をアテネの裁判所に起こした。
裁判所は「島民たちがこの名称によって侮辱されたと感じる理由はない」として訴えを棄却している。
注2:サッポー
サッポー(紀元前7世紀末 – 紀元前6世紀初)は、古代ギリシアの女性詩人である。
出身地レスボス島で用いられたアイオリス方言ではプサッパ(Ψάπφα / Psappha)あるいはプサッポー(Ψάπφω / Psappho)と呼ばれる。名はサッフォー(英: Sappho)とも表記される。
・作品・作風
サッポーは何十もの異なる韻律によって詩を書いたが、スタンザ形式になっているものが多く、とくに1つのスタンザが4行からなる四行詩が多い。11音節の詩行が3行と5音節の1行からなる形式はサッポー詩体として知られる。サッポーの詩は大部分が滅び、他の作品の中に引用されるなどして断片が残るのみである。
彼女の詩の中でほぼ完全な形で残っているのは「アプロディーテー讃歌」 (Ode to Aphrodite) で、ハリカルナッソスのディオニュシオスによる引用によって生き残った。サッポー詩体による7つのスタンザから構成される。もう1つ、やはり引用によってほぼ完全な形で生き残ったのが『レスボス詩人断片集』のサッポー31番 (Sappho 31) (沓掛訳では「恋の衝撃」という題になっている)で、伝ロンギヌス「崇高について」 (On the Sublime) に引用されている。
『レスボス詩人断片集』ではサッポーの詩に1番(アプロディーテー讃歌)から213番までの番号を付しているが、その大部分は非常に小さな断片である。
サッポーの詩はその在世中から人気があったが、古典期のアッティカにはすでに何らかの作品集が存在していたことが知られている。
ヘレニズム時代、紀元前3世紀のアレクサンドリアにおいてサッポーの作品は正典化され、ビュザンティオンのアリストパネースとその弟子のアリスタルコスの2人によってそれぞれサッポー作品集が作られた。いずれも9巻で、アリストパネースのものは題材によって分類され、アリスタルコスのものは詩形によって分類されていた
・キリスト教による焚書
(作者:こうやってキリスト教は欧州から文化や科学を消滅せていき中世暗黒時代を作った)
キリスト教が興隆すると、2世紀のタティアヌス (Tatian) によってサッポーは「淫売で色気違い」であると非難されるようになった。
ローマでキリスト教が公認されると、4世紀のコンスタンティノポリス大主教グレゴリオスによって焚書され、さらに11世紀に教皇グレゴリウス7世の命令で再び焚書された。
これによって、19世紀末にパピルスが発見されるまでの間、サッポーの詩は引用によって残るもの以外ほとんどが消滅することになったとされる。
・ルネサンスとレズビアニズム
ルネサンス以後のヨーロッパではサッポーの詩そのものが知られないまま、想像力を膨らませて膨大な量のサッポーに関する伝説が生まれることになった。
とくにボードレールは『悪の華』初版で削除を命じられた「レスボス」においてレスボスを同性愛にふける島として描き、レズビアニズムの代表としてのサッポーのイメージを決定的にした。
現代では、Sapphic(サッポー風の)は女性同性愛者を、Sapphismは女性同性愛を示すのに用いられる。
また、女性同性愛者を呼ぶ一般的な呼称である「レスビアン」もサッポーがレスボス島出身であることに由来する。
ちなみに、英語で「レスボス人」は"lesbian"と表記されるが、これは「レズビアン」の"lesbian"と同じつづりである。そのことから、同島の現代の一般名称はミティリーニ島の名称に好んで替えられて呼ばれている
作者解説:
うちの世界では19世紀のフランス性愛小説の影響が大きく、えんぱいあな日々の中の電脳世界の中のレスポス島はまさに「そういう島」になってます。
「この作品はフィクションであり現実世界とは関係ありません」
ノーラ:
あの子、大丈夫なの? 生贄とか言ってたけど…
クロエ:
フォルトゥーナ様、どうなんですか?
フロリー:
もうそろそろ到着しても良い頃なんだけど…間に合わなかったら…それもあの子の「運命」?
クロエ:
えぇ…運命で片づけないで下さいよ!
フロリー:
フロリーはこれでも運命の女神だし
アリエル:
到着ですわよ。
花恋:
おぉここがパルテノン神殿!
ルゥナ:
教科書の写真より立派です! まあ当たり前ですが。 三大処女神、アテーナーの梨音ちゃんと、アルテミスの花恋、そしてヘスティアーのルゥナの神殿! おおーー!
アリエル:
すみれさん、幸さん皆さん、お疲れ様ですわ! 弊エンパイアクラブEHDENの新人メイドの面接の為に少し場所をお借りいたしますわよ。良いですわね幸さん
梨々衣:
そういう事でお借りしますわね。
幸:
はいお疲れさまです! アリエルメイド長、どうぞお使い下さい。
花恋:
みんなちゃろー!
すみれ・レスフィーナ:
ちゃろでーす!
ルゥナ:
この金髪の子がノーラさん? それで銀髪の子がエリーザさん? ピンクの髪の子が幸ちゃんのお付メイドのクロエちゃん! よろしくね!
ノーラ:
大気の女神、エアリエル様、そしてアルテミス様、ヘスティア様‥‥
エリーザ:
新人メイド?
フロリー:
運命の車輪は彼女に味方したか。
梨音:
チェっ! 間に合ったか、サタンを始末する絶好の機会だったのに。
ルシフェル:
舌打ち! 梨音ちゃん本気でアタシのタマ取る気満々だったてこと?
その5 へつづく