えんぱいあな日々(本編) 第五百九十ニ話 This game 後編 その18
アトロポス:
お風呂…終りました…
イリーシャ:
シャンパングラスに入っているけど冷蔵庫にあったオレンジジュースだからお酒じゃないから。
アトロポス:
はい、頂きます。 …それで何をお読みなんですか?
イリーシャ:
イナンナの冥界下りとギリシャ神話やその後のメソポタミア周辺地域の神話の類似性を解説した本だよ。 読みたかったんだが、オリュンポスの図書館ではシュメールの本はなかったから。Forestのお屋敷の図書室からご主人様に許可もらって貸し出してもらった。
アトロポス:
あの図書室なんでもあるんですね…。
イリーシャ:
最近また増えたからな…図書準備室に本が整理出来ず山積みで足の踏み場も無くて困ってる。ご主人様も鈴佳さんも電子では無くてアナログな物質の本が好きというか、電子化される前の昔の本が好きだからどうしてもな…
イリーシャ:
女神イナンナは地に思いをはせ、全ての神殿を捨て「七つのメー=「神力」」を持ち冥界へと下る。女王エレシュキガルは「冥界の七つの門」を「冥界の七人の賢者」に命じ閉じさせ、門一つに一つに一つイナンナの「メ」=力を封じる細工を行うように門番ネティ命じる。
アトロポス:
……
イリーシャ:
女神イナンナは「7つの門」で「七つのメ=「神力」」を取られ、そして衣服も剥がされてしまった。
イナンナは、エレシュキガルと7人の賢者の「死の眼」で「弱い肉」になり、釘に吊り下げられた。
アトロポス:
……
イリーシャ:
ニンシュブル(注)は三日三晩、戻らぬイナンナに、ニンシュブルはイナンナとの約束通り神々のところに行き、助けを求めた。しかし自分勝手に行ったイナンナに神々は冷たい……
イリーシャ:
…最後に訪れた大神エンキは、自分の爪からクルガラ、ガラトゥルという二体の精霊を作り授けた。
アトロポス:
……
イリーシャ:
‥‥「命の草」と「命の水」を与え、冥界に遣わす‥‥
アトロポス:
……
注:ニンシュブル(Ninshubur)
ニンシュブルはまた天空の神アンの大臣を務めており、その延長で「神々の集会の伝令使」てギリシア神話のヘルメースやイーリスに似ている。
「神々の従者神」で「伝令神」
彼女の名前はシュメール語で「従者たちの女王」または「スバルトゥの女王」を意味する。
神話の中で、ニンシュブルはイナンナの多くの最も有名な事績の中で彼女に付き添っている。イナンナが聖なる力「神の力=メー」を盗んだ後、彼女はイナンナを助けてアプスーからエンキの下僕をやっつけた。別の神話では、イナンナが冥界に閉じ込められた時、ニンシュブルはエンキに彼女の女主人を解放するように頼む。(これがイナンナの冥界下り)
イリーシャ:
…病で倒れている冥界の女王エレシュキガルのもとに行き‥‥
泣いていた。彼女は妹に近づき、……手を取ってこう言いました。
「さて、ああ、私の……。」
「あなたは一年の半分、妹は一年の半分です。要求されたら、その日はあなたは滞在します。妹が要求されれば、その日のうちに釈放されるだろう。」
女神イナンナは夫のドゥムジド(注)を身代わりとして与えた。
彼女の心を開いてイナンナの体をもらい受け、女王エレシュキガルと女神イナンナを「命の草」と「命の水」で生き返らせる……
これにより女神イナンナと女王エレシュキガルはよみがえる。
アトロポス:
……
注:タンムーズ
タンムーズ、タンムズは、シュメール神話、アッカド神話の神。イナンナの夫である。
この神は、シュメールの牧羊の神ドゥムジ(Dumuziまたはドゥムジッド/Dumuzid、ドゥムジを源とする。その名は〈忠実な息子〉の意。
Tammuzという名はアッカドのTammuziからきたもののようで、初期のシュメールのDamu-zidを源にしている。これが後に標準シュメール表記のDumu-zidになり、アッカド語ではDumuziになった。フェニキアではアドニス(Adonis)となり、後にギリシア神話の「アドーニス」。
アトロポス:
……(じぃぃ~)
イリーシャ:
この本は女王エレシュキガルがイナンナに求めた、ドゥムジドはギリシア神話での「アドーニス」であり、「アドーニスという名はセム語起源で、旧約聖書のマソラ学者による読みであるアドナイ(ヤハウェ(注)の呼び名「主」)の元になったという説になっている。
女神イナンナの夫でご主人様だから「我が主=アドナイ」と言ってオカシクは無いな。
そしてこのアドーニスはフェニキア神話の植物の神であった。
アドーニスは収穫の秋に死んで、また春に甦って来る。アプロディーテーが冥府の女王ペルセポネーとアドーニスを頒つのは、植物の栄える春夏と、枯れて死ぬ冬があるから。
よってこのギリシャ神話のアドーニスが「アブラハムの宗教」(注2)の「我が主」という説を展開している。 ドゥムジトからアドーニスの変化の過程とか書いているんだが…まあ宗教者からみると殴られるどころか火刑に処されそうな本だな。
注:ヤハウェ(ヘブライ語: יהוהフェニキア語: 𐤉𐤄𐤅𐤄、古アラム語: 𐡉𐡄𐡅𐡄、英語: Yahweh)
ヤハウェは、モーセに啓示された神の名である。旧約聖書や新約聖書等における唯一神、万物の創造者の名。
この名はヘブライ語の4つの子音文字で構成され、テトラグラマトン(古代ギリシア語で「4つの文字」の意)または聖四文字と呼ばれる。この名前の正確な発音は分かっていない。日本語ではヤーウェ、ヤーヴェ、エホバ等とも表記されるが、エホバについて現在ではしばしば非歴史的な読み、誤りないし不適切な読み等と位置付けられる。
主=日本語訳聖書では今日、一般に、原文において「יהוה(ヤハウェ)」とある箇所を「主」と訳す(新改訳では他の語と区別するために特に【主】と表記する)。
消失の経緯で後述するユダヤ人の慣習による(今日のユダヤ人はヤハウェと読まずに、アドナイ(「わが主」)という別の語を発音するためである)。
アドナイ(אֲדֹנַי [’Ăḏōnay])の語には、「主 (Lord)」即ちヤハウェを婉曲に指す意味のほか、単数形のアドニ(אֲדֹנִ֥י)という形で「私の御主人様 (my master)」即ち奴隷の雇用主など主一般を指す意味がある。
注2:アブラハムの宗教」 (Abrahamic religions)
聖書の預言者アブラハムの神を受け継ぐと称するユダヤ教、キリスト教、イスラム教(イスラーム)の三宗教。初期のイスラームはこの概念によって、先行するユダヤ教・キリスト教とイスラームは立場が同じであることを強調した。「セム族の啓示宗教」、あるいは単に「啓示宗教」と称されることがある。
比較宗教学の観点ではインド宗教(Dharmic、Indian religions)、東アジア宗教(Taoic、East Asian religions)と並ぶ三分類の一つに位置付けられる。
アトロポス:
……(むぅ~)
イリーシャ:
このアドーニスの話はギリシャ神話の中でも面白く興味深い部分でね
フェニキアのキニュラース王は代々、アプロディーテーを信仰していた。しかし、王女ミュラーはとても美しく、一族の誰かが「ミュラーは女神アプロディーテーよりも美しい」と言ってしまった。
これを聞いたアプロディーテーは激怒し、ミュラーが実の父であるキニュラースに恋するように仕向けた。父親を愛してしまい、思い悩んだミュラーは、自分の乳母に気持ちを打ち明けた。
彼女を哀れんだ乳母は、祭りの夜に二人を引き合わせた。顔を隠した女性が、まさか自分の娘だとは知らないキニュラースは、彼女と一夜を共にした。しかし、その後、明かりの下で彼女の顔を見たキニュラースは、それが自分の娘のミュラーだと知ってしまった。怒った彼はミュラーを殺そうとしたが、彼女はアラビアまで逃げ延びた。彼女を哀れに思った神々は、ミュラーをミルラ(没薬)の木に変えた。
やがて、その木に猪がぶつかり、木は裂け、その中からアドーニスが生まれた。
その赤子のアドーニスの美しさにアプロディーテーは魅了されてしてしまう。
やがてアプロディーテーは赤ん坊のアドーニスを「箱」の中に入れると、冥府の王ハーデースの妻で、冥府の女王のペルセポネーの所に預けた。
彼女はペルセポネーに、「けっして箱の中を見るなと注意しておいた。」
しかし、「ペルセポネーは好奇心に負け、箱を開けてしまった。」
すると、その中には美しい男の赤ん坊のアドーニスが入れられていて、彼を見たペルセポネーもアドーニスに恋してしまった。
こうしてアドーニスはしばらくペルセポネーが養育することになった。
アドーニスが少年に成長し、アプロディーテーが迎えにやって来た。しかし、ペルセポネーはアドーニスを渡したくなくなっていた。
アトロポス:
……(むむむむぅ~)
イリーシャ:
2人の女神は争いになり、ついに天界の裁判所に訴える事になる。 最終的に女神カリオペー(注)が仲裁し次の決定がされる。
1.1年の3分の1はアドーニスはアプロディーテーと過ごす
2.1年の3分の1はペルセポネーと過ごしアドーニス自身の自由にさせる
3.1年の3分の1はアドーニス自身の自由にさせる
しかし、アドーニスは自分の自由になる期間も、アプロディーテーと共に過ごすことを望んだ。ペルセポネーは、アドーニスのこの態度に、大いに不満だった。まあそれはそうだろうな。
アドーニスは狩りが好きで、毎日狩りに熱中していた。
アプロディーテーは狩りは危険だから止めるようにといつも言っていたが、アドーニスはこれを聞き入れなかった。
アドーニスが自分よりもアプロディーテーを選んだことが気に入らなかったペルセポネーは、「アプロディーテーの恋人である軍神アレース」に、「あなたの恋人は、あなたを差し置いて、たかが人間に夢中になっている」と告げ口をした。
これに腹を立てたアレースは、アドーニスが狩りをしている最中、猪に化けて彼を殺してしまった。
アプロディーテーはアドーニスの死を、大変に悲しんだ。
やがてアドーニスの流した血から、アネモネの花が咲いたという。
しかしアドーニスは春に「復活」し収穫の秋に死ぬ、そしてまた春に「甦る」。
アプロディーテーが冥府の女王ペルセポネーとアドーニスを頒つのは、植物の栄える春夏と、枯れて死ぬ冬との区別になったという。 アプロディテとペルセポネを行き来きしてアーレスによって殺され「生と死を繰り返す」“死して復活する神”牧羊神。 アドーニアスがアドナイ。興味深いね。
注:カリオペー(古希: Καλλιόπη,)
「弁舌の女神」。ムーサたちの中で最も賢いとされる。ムーサの長女
すべてのムーサたちと同じく大神ゼウスとムネーモシュネーの娘。9柱のムーサたちの長女で、クレイオー、エウテルペー、タレイア、メルポメネー、テルプシコラー、エラトー、ポリュムニアー、ウーラニアーと姉妹。
「叙事詩」(叙情詩、エレジー)を司る。表される際の持ち物は、書板と鉄筆である。
アポローンもしくはオイアグロスとのあいだにオルペウスとリノスをもうけたほか、レーソス、セイレーンたちの母とする説もある。
イリーシャ:
話をシュメール神話の女王エレシュキガルが求めたもう一柱の「妹」の方へ戻そう。
タンムーズの夢によるとこの妹とはタンムーズの妹のゲシュティアンナ(注)のことでシュメール神話の農業・夢分析の女神、未来予知の女神。
水の神エンキが冥界から救出した妻イナンナの代わりとして、タンムーズを冥界に引きずり込もうとするが、タンムーズは逃げて隠れる。悪魔はタンムーズの場所をゲシュティアンナに言わせようとして残酷に拷問するが、ゲシュティアンナはタンムーズの居場所を教えない。
しかし友人に裏切られついに居場所が発覚する。悪魔に捕らえられる。
イナンナの兄弟である太陽神ウトゥは、タンムーズをガゼルに変え救出する。 今度は兄である太陽神「シャマシュ」お兄ちゃんの所に「蛇」に変化してしがみ付いていた! 発見されたタンムーズは再び奪還され、冥界に引きずり込まれる! その後は先ほどの部分に繋がる。
アトロポス:
……(むぅ~)
注:ゲシュティアンナ(Geshtinanna)
シュメール神話の農業・夢分析の女神。タンムーズの姉であり、エンキとニンフルサグの娘である。シュメール神話によると、ゲシュティアンナが天国にいてタンムーズが冥界にいる間、地球は乾燥して不毛になり、夏の季節が生まれたという。その名前は「天のブドウの木」を意味する。
イリーシャ:
「タンムーズの夢」の続きであるシュメールの詩「タンムーズの帰還」ではゲシュティアンナはタンムーズを見つけると、その時から、年の半分をタンムーズと天国で過ごし、残りの半分を「姉のエレシュキガル」と冥界で過ごすことを決める。 この場合は天にタンムーズ、冥界にエレシュキガルが居てその間をゲシュティアンナは移動することで夏と冬が生まれる。ギリシャ神話のペルセポネの立場がゲシュティアンナ、冥王の支配者ハーデスが冥界の女王エレシュキガルになるわけだ。
よってゲシュティアンナはタンムーズ=アドーニスの「妹」、もしくはアドーニスと同一である。
イナンナはギリシャ神話におけるアプロディテー。 冥界から天界への復活に使った「命の水」というのは我が悪魔の王サタンこと、アプロディーテに私が飲ました「ステュクスの水」(注)だと私は思っている。「ヤツ」が力を完全に回復されるためにはこの「命の水
」の他にまだ「命の草」が必要になる。
では「命の草」とは何か? 冥界の女王、エレシュキガル様なら知ってるではないかと思ってね。
アトロポス:
イリーシャ様、それはあくまで神話です。
イリーシャ:
そうかな?
アトロポス:
あのですね! そちらは確かにニナお姉さまと散々今までシテるでしょうから慣れてますでしょうけど!
私が「初めてスル」時にそんな御本を読んでるとか…むぅ~~!
星界でもそうでしたが本当に本の虫なんですから…ぶつぶつ…
イリーシャ:
スマンスマン、考察は今度にするよ。
注:ステュクスの水 以下の話で登場
その19へ続く