第五百九十五話 Shining SOUL その10

 
梨緒:
保護観察と言う事は私達罪を犯したんですか?

ヴァルマ:
罪といえ罪かな? 手順をすっ飛ばしてしまったからね。 どっちかというと犯罪を起こさないために監視したり手助けする感じ

梨乃:
手順って‥結果が同じなのに。まあヴァルマくんが手伝ってくれるのは嬉しいけど。

梨緒:
あのヴァルマくんってここにいるってことは、ネットダイバーとか電脳神とか?なんですか? 

ヴァルマ:
そうだね地上ではスプロール大使館の各大使の補佐をする職員さんで、本来はこのスプロール監視機構の監視官で赴任地はアルカディアGRIDの行政監理官と今回新たに起動したアスタルトGRIDも一緒に行政官をする事になった。

梨緒:
スプロール監視機構?

梨乃:
地上における国連の事務所みたいなものだと思えば良い。基本各GRIDは地上でいう国とか地域で、その連合がスプロールGRID連合。そしてその事務や行動を実際に行うのが、ヴァルマ君が属している組織。

梨緒:
連合職員。だから大使館の職員さんでもあるですね、あれはスプロールGRID連合の大使館だから。

そのアスタルトGRIDですか? 何かアスタルトって言葉が頭に残って…

ヴァルマ:
それはそうだろう。梨緒、君が治める事になるGRIDだからね。電脳女神アスタルテ様。

梨緒:
えっ? 梨緒が? 治める?

梨乃:
それは電脳女神って事は役目があってアスタルテはアスタルトGRIDの管理をするのが「機能」でこの世界でのお仕事。 まあ補佐は梨乃とこのヴァルマ君が電脳女神アナンケー星美と電脳女神メーティス優萌の「ついで」にしてくれる! 

梨緒:
ついでですか‥‥

ヴァルマ:
ついでとは…酷い良い方だな。

梨乃:
ついででも悪いとは思う。アルカディアの行政見学行ってみてびっくりした。星美も優萌も全部ヴァルマくん丸投げ‥

ヴァルマ:
まあ覚悟してたしそれは良いから。 さっきの梨乃の解説だけど。 ボクが引き継ごう。

梨緒:
これは何ですか?

ヴァルマ:
ポータルというものでこのコアGRIDから他のGRIDへ移動するための装置? かな

梨乃:
RPGでもあるじゃないテレポートポータルってやつ。あれと同じ

梨緒:
ありますね。

ヴァルマ:
実際に見てもらって体験して理解した方が楽だから。 行こう。

梨緒:
はい。

ヴァルマ:
シフト!

梨緒:
えっ? アレ? ここは?

梨乃:
梨乃、どうしたの? ぼーとして。

ヴァルマ:
大丈夫? 

梨緒:
ここは白森駅‥

梨乃:
そうだけど? バス降りたんだから当然。

梨緒:
これから…

ヴァルマ
学園終わったから新作映画見ようって来たんだけど。梨乃がボクもその作品好きだし一緒に見ようって誘ってくれたからだけど?

梨緒:
えっ夢を見てたの?

梨緒:
夢? 今まで起きてたのに。あの一瞬で?

ヴァルマ:
調子悪いなら、上映一本送らせてカスタムバーガーで休んで行く?

梨乃:
ちなみにどんな夢みたの?

梨緒:
それがですね…起きたら‥スプロール内の梨乃奥様の部屋で…そのあと食事でハンバーガーとポテト食べて…スプロールというか星辰界? 星界の事を説明うけたり、そこにヴァルマくんが来て。梨緒と梨乃奥様が保護観察処分になったて言われて…。 さらにGRIDっていうんですか?あっちの国の一つを梨緒が治める?ことになったって‥それを奥様とヴァルマくんが補佐してくれる‥‥でもとりあえず星界やスプロールの事がぜんぜん梨緒はわからないから、奥様の代わりにヴァルマくんが説明してくれるって…

ヴァルマ:
ずいぶんと詳細に覚えている夢だね。

梨緒:
はい。まさに現実みたいな夢だった。

梨乃:
そもそも梨緒が言う「夢」と「現実」ってどう違うの?

梨緒:
それは夢は寝てる間に脳の中だけで見るもので…現実は起きている間に実際に体験して…

ヴァルマ:
それ脳にとっては変わらないよね?

梨緒:
いや…それはちがいます。たしか夢は脳が記憶している体験?などから創り出している妄想で…

ヴェルマ:
それはまさにこういうモノだよね?

梨緒:
あっ! ナニコレ!

梨乃:
これは構成するデータを剥きだしにして解りやすくしたもの。さっきまでの風景は梨緒の体験記憶から創り出した「白森駅前」の風景だし、今梨乃達が着ている制服も同じ。それを、梨緒と梨乃とヴァルマくんで共通体験している。

ヴァルマ:
ゴメン、悪意で騙したんでは無いんだ。体験するのがわかりやすいから。

梨乃:
夢は脳にとっては脳が記憶という情報から創り出した疑似体験でしかないけど。体験ではある。違いは事実のデータをリアルタイムで体験していない事と他人と共有していないこと。
電脳空間、電脳世界とは、電子頭脳がみているデータから創り出される夢を共有する空間。それが電脳空間。

梨緒:
電子頭脳が見ている夢?

梨乃:
さらに電子頭脳だから夢の中に物質世界操作機構を再現すれば物質世界の実際の機能を動かす事もできるし、肉体の脳につなげれば、物質世界で活動もできる。梨乃やヴァルマくんみたいにね。

ヴァルマ:
殆どの電脳意識市民は肉体が無いから、夢の中しか生きていない。ここがキミの夢の中の世界だとするなら。梨緒にとってスプロールの世界とは夢の世界に来ているがボク達にとってはこっちが現実。そして梨緒がもともといる物質世界が夢の中。 どちらも現実というのはこういうものだし、スプロールの根幹の機能は約200憶の人工意識市民が共通でみている電子の夢がオペレーションシステムの基本になっていると言ってよいかな。

電脳意識市民の仕事には地上世界の仕事が多くて…まあヒトだから。 だから地上で「何々をしとけ」と地上の人は命令するだけで「どうやってやるか? それがちゃんとできているか?  それにひつような知識は? 結果はどうなるか?」に携わなくても「結果」だけ得ることができるようになった。 そういうのは全部、電子の夢の中の人々が代わりにやるからね。

梨緒:
……………

その11 へ続く