第五百九十五話 Shining SOUL 前編 その9
梨乃:
ポテトのソース、バーベキューで良かったかな?
梨緒:
はい。そうじゃなく! アレなんですかぁ!
梨乃:
アレはアステロイド鉱物採掘用艦艇を工作部で新造しているらしくてそのアバター。物質世界でもあの部分まで作業が進んでいる。
梨緒:
物質世界の現身(うつしみ)って事ですが。本当に表裏一体なんですね。
梨緒:
まさかフライドポテトもあるとは…学園帰りに食べるカスタムバーガーのポテトと余り味が変わりませんね。ちょっとこっちの方がしっとりしていて塩味が薄いかな? でもホクホクしてて美味しいですけど!
梨乃:
ソースをつける前提だから。ポテトだけだと味が薄いの。
梨緒:
あ~なるほど。 しかし電子世界でも食事の必要が?
梨乃:
梨乃や梨緒は地上に肉体があってそこからリソースが供給されるけど、肉体が無い大部分の電脳意識市民はこういう食事や飲み物の形をしたアバター=化身を摂取することでリソースを供給して意識を維持しているし、食事の味などは意識を創り出す記憶を構成する為には必須。
梨緒:
味の記憶って大きいし美味しいモノを食べると幸せになるし…それも体験と結びついていますのものね。
梨乃:
さっき梨緒がいってた学園帰りの梨緒達と一緒に食べるカスタムバーガーの味の記憶には、学園のトモダチとの楽しい会話の記憶が結びついている。
梨緒:
そうですね。こうやって同じようなモノを食べて、奥様といると「あーここも梨緒の普段の現実」なんだって少しおちつきましたし。 フライドポテトなのに。
梨乃:
そういう沢山の記憶が複雑に結びついて「ココロ」を創り出すための基本になっている。
梨緒:
そうですね。記憶から気持ちとかも生まれますし。
梨緒:
それでこれがスプロールの地図? 大使館でデメテル筆頭大使の後ろに表示されていたやつと同じですね。星界の地図?
梨乃:
これはスプロール全体地図で、星界はその真ん中の球の部分の光が濃い所。 星界は正確には「星辰界(せいしんかい)」と言って、スプロール全体の管理をするための高次元GRID群と超高次元GRID群を足した世界だから、全体の一部なの。
梨緒:
なるほど。 それでここは? コアGRIDって名前の国? まあ場所? と言われましたがどの辺りですか?
梨乃:
その地図のまさにど真ん中の光の中心。星界の中心。だからコア。核。
梨緒:
なるほど。
梨緒:
ついでに、とても基本的な質問で申し訳ないですが、この星界に住んでいる電脳意識市民って何人くらいいるんでしょうか? そんなことも知らなくて…
梨乃:
うーん現在でざっとで二百億人くらいかな。 まあ完全意識体として存在しているだけでの数で、簡易意識体を除いての数だけど。
梨緒:
二百億? いまの地上の人口の倍?
梨乃:
そう。 だって実際に地上の今の人口を支えるにはそれくらいの電脳システムが必要でそれを構成している部品だから。
梨緒:
部品?
梨乃:
この八年で爆発的に地上の世界は発達した。だからこそあれだけの戦争をしても世界は壊れないばかりか、紛争地以外の環境は劇的に改善し人口が増えさらに経済は発展した。 それを実現したのはアステロイドベルトから供給される希少金属やバイオメイドの管理による超効率大規模食糧プラント。 そのどれも電脳空間の爆発的な発展があってこその成果
梨緒:
それは学園でC組の梨緒でも習いました。
梨乃:
でわその電脳空間。サイバースペースって何?
梨緒:
それはこのスプロールの事じゃないですか? 地球の回りに沢山浮いている人工衛星群のこと。
梨乃:
それは「ハードウェア=物質」としてはね。でわ「ソフトウェア=実際に動く為の本体の機能を実現している構造」としてはどうやって実現しているの?
梨緒:
習って無いですし…意味がわかりません、説明お願いします。
梨緒:
あっ一瞬で現れた!
梨乃:
まあ普段つかっているし! これは解るよね?
梨緒:
はい普段みんなでやってるゲーム機ですよね。
梨乃:
これは物質世界では、これは物=物質だよね? 機械だよね? ハードだよね?
梨緒:
はいハードっていいますね。
梨乃:
実際にゲームをするには、電源をいれて「ゲームソフト」を起動して、トモダチやチームとするにはネットに接続して遊ぶ。 さらにゲームソフトを換えると別のゲームができる
梨緒:
そうですね。
梨乃:
ハードは「そのための機械」でもゲームを実現させるのはそのゲームソフトやそれを使うためのオペレーションシステム。 OS=オーエス。だよね?
梨緒:
はい? そうですね。
梨乃:
電脳空間を創り出して地上の人々の社会を今支えているスプロールだと、このゲームハードが人工衛星。そしてオーエスが沢山の電脳意識体の集合体。 ゲームソフトが電脳意識体が行っている仕事。
梨緒:
えっ? はっ?
ヴァルマ:
梨乃、さすがにそれじゃ解らないと思うぞ?
梨乃:
えっ‥梨乃これでも一生懸命考えたのに…ダメ?
梨緒:
あれ? ヴァルマくん?
ヴァルマ:
ああ。二人の保護観察中の保護観察官に任じられたんでね。 ゴメンちょっと色々あって遅れた。でもこのラウンジに来てからの二人の会話は遠隔で聴いてたし観てたから!
梨乃:
何かあったの?
ヴァルマ:
うん、ちょっと場所を変えよう。
梨乃:
まあ良いけど。
その10 へ続く