第五百九十六話 UniVerse 前編 その3


アストライアー:
お飲み物とお茶菓子、マーケットで買ったモノなので、市民と同じものですのでお口に合うかどうか・・・

フランソア:
とても美味しいよ!

エステル:
マーケットで自らお買いになるですか…

アストライアー:
はい。わたくしの唯一の臣下のイーリスはオリュンポスと地上に送ってしまって、ここには普段わたくし一人しかおりませんので。簡単なモノしか作れませんか自分で全てやっております。

フランソア:
唯一の臣下・・・メイドをフランソアの所に送った? それでここに独りで住んでるの?

エステル:
お作りになるということは自炊されているんですの?

アストライアー:
まあ見てのとうり小さい神殿ですし信徒がいるわけでもありませんので経営的にも贅沢はできませんしね。

フランソア:
もう一人のフランソアって貧困生活? でも自炊している段階で女子力で完全敗北‥

エステル:
電脳女神様ですよね? それも法執政シサテムの最高管理責任者

アストライアー:
はい。わたくしの報酬はスプロール連合から頂いているのでわたくしが不自由する程ではないのですが・・・

ルスラン:
アストライアーは管理するGRIDが無いので住民の租税収入がな。 しかし法の公正性を担保するために自分が企業運営に関わるわけにも・・・

フランソア:
ちょっと! パパもご主人様も寄進しようよ! パパはここの全体の土地もってるから住民から租税収入あるよね? ご主人様だってドコの世界に行っても商いしてないわけないし! 

瑠莉:
まあ確かに新規GRIDの整備事業とかは手掛けているので…

フランソア
地上では英国のセントジョージ第六教会やうちの白杜神社に寄進しているのに、もう一人のフランソアを・・・

ルスラン:
あのな、私らだって寄進する意識はあるんだが、断られて受けてくれないんだ。

瑠莉:
どっかの誰かと同じで一度決めた事はガンとして曲げないというか‥‥

アストライアー:
ルスランにはこの神殿の土地と建物を無料で使わせて頂いていてますし、ミストレス瑠莉にはわたくしの代わりに色々な事をやっていただいておりまして。これ以上は受け取れませんわ。

ルスラン:
こう言って聞かないのだ。

フランソア:
謙遜も美徳というけど、そんな事ないから! 余裕がないと判断を誤るから! 人の人生が関わるような判断をする仕事をしているんでしょ? それを間違えたらどうするの?

アストライアー:
そうですわね…

瑠莉:
言うようになったねフランソアオーナー。

フランソア:
それはどっかの誰かに苦労押し付けられてますから!  パパ聞いてよこの人、妻のフランソアと紅葉と絵里奈お姉さんを置いて詩織さんと高飛びしたんだよ! とっても酷い人なんだよ!

瑠莉:
キミだって勝手に紅葉さんと決めて家から籍に抜いて私の事を捨てて! それに結婚した上に寄りにも寄って紅葉さんを自分のメイドに! 私がどんな気持ちだったか! 

フランソア:
ご主人様が捨てられるような事したからだよ! 紅葉をメイドにしたのは、紅葉がフランソアのメイドになるって聞かなくて「仕方なく」だから! パパ何ヘラヘラ笑ってるの!

エステル:
あのフランソアも瑠莉さんもお互い色々不満があるのはわかりますが、ここは教会です痴話喧嘩は・・・

アストライアー:
わたくしは宗派は持っておりませんので教会ではなくて神殿ですわ

エステル:
そこ突っ込みはいるのですわね‥それでフランソア、デルポール博士をさっきからパパと呼んでますがよろしいのですか?

フランソア:
地上では死んだからもしれないけどフランソアのパパなのは変わらない。 パパとマモンの子だけど愛人の子だしね。たしかに籍は死んだと同時に養子としてフランソアだけしかデルポール家には入ってないけどね。
それもルゥナが当主なわけでフランソアはフィッツジェラルド家があるからルゥナが大人になるまでという条件付きだったけど。

エステル:
・・・‥‥

フランソア:
何この記憶! フランソアはパパとマモンとルゥナと四人であのお屋敷に暮らしてた? でもこの世界のルゥナの歳が合わない? この世界のルゥナよりはもっと小さい時だ…

もう一人のフランソア! 貴女、フランソア達に何を食べさせたの?

エステル:
でもわたくしは何も変化は

アストライアー:
フランソアの記憶の鍵が少し交じっているだけのものです。エステルさんには影響ありませんわ。

フランソア:
でもこれ・・・フランソア見たことある‥‥どこで‥‥あっ! すみれと初めて会った時。ウーラノスのコックピットの中で!(

ルスラン:
それはすみれちゃんのニューロチップ「O.U.R.A.N.O.S」の中にあった、わたしの記憶の残滓だろう。 フランソアとすみれちゃんの統合システムを創ったのは私だからね。そのスプロールコアネットワーク記憶システムの根底はわたし記憶がベースになっているから…記憶が封印処理中のすみれちゃんと接触したフランソアがそのベースネットワークに一時的に接続してわたしと自分の最後記憶を覗き見たんだろう。


解説: 第五百六十話 GIANTSTEPの最後の方で記憶をすみれを救出するシーン時にすみれのインテリジェントデバイスのバイオレットとフランソアのデルポール家のマスター認証デバイスであるコインのペンダントが反応して一瞬だけ見えたフランソアの過去の記憶のシーンの事。


フランソア:
でわパパの記憶なら…本当の過去。 

ルスラン:
そうだ・・・お帰り私の娘、フランソア。


その4 へ続く