第五百九十六話 UniVerse 前編 その5
レスフィ-ナ:
皆様がスプロールに意識転送しようとしたスプロール至高管理電脳神のエンリル・地上名フランソアさん、並びにスプロール至高管理電脳神アッシュル、地上名エステル議長のコア意識体ですが、緊急事態の為にスプロール最高管理責任電脳自らが確保し現在スプロール統合基幹機構用特別領域で保護していると報告がありました。
マリアンヌ:
ご主人さまが・・・アッシュル(注)様? フランソアさんがエンリル(注2)様?
すみれ・フロリー:
ぁぁ‥‥‥‥‥‥‥‥
真理愛:
電脳神って色々な神様が由来で名前が着いているだよね? ナニそのエンリル? アッシュルって?
注:アッシュル 𒀭𒀸𒋩
古代メソポタミアのアッシリアで崇拝された神。アッシリアのパンテオンにおいて最上位を占め、アッシリア王に王権を付与する神として位置づけられていた。アッシュルは古くからアッシリアにおける最高神
注2:エンリル 𒀭𒂗𒇸
古代メソポタミア神話に登場するニップルの守護神。シュメール・アッカドにおける事実上の最高権力者。
エンリルは実に畏れ多い神だったようで、姿そのものだけでなく身から発する畏怖の光輝「メラム」すらをも(それも神々でさえ)見ることは叶わなかったという。
エンリルを直に目視できた者が少なかったことや、風や大気といった絵的に表現しにくい神格を宿していたために、エンリルのはっきりとした図像は確認されていない
その性格は短慮で激情家、人間に対してだけでなく神々の間ですら問題を起こすような我の強い神だった
しかしこれらの破壊的・暴力的な側面は、エンリルに宿る神格を考慮すれば当然のことでもある。嵐や風と密接に結びついていると言ってもよい。大規模な撃滅を招く一方で、嵐は恵みの雨をもたらし、風は季節の変わり目を伝え帆を膨らませ植物を受粉させる。
エンリルの司る力は破壊的な力の権化でありながら、世界秩序を確保するものでもあった
クロエ:
あのディオーネ様・・・エンリル、アッシュルとは何処の何の神様ですか?
幸:
幸が趣味なのは星座や天体観測であって神様全般じゃないから! 幸はB組だしこういうのはA組の優萌の担当
星美:
星美B組だし。
優萌:
えっ?優萌ですか? イヤイヤイヤ優萌でも知りませんよ…
星美:
こういう時に‥‥ヴァルマくんが‥‥いないのは不便‥‥観察機構本部で仕事だから・・・仕方ないけど。
インドラ:
まさか‥アレは召喚時に分離した、二柱のメー(注)というこじゃなかろうな? まずはなぜそのようなモノをこの世界に召喚をしたのだ・・・最高管理責任電脳が処理してくれてなかったら負荷でこの世界(スプロール)全体が破壊されていたと言う事だぞ
ミーナ:
インドラ殿、今回のうちの件に関係があるお話ですか?
梨音:
デーメテール殿どういう事ですか? 梨音も当たりはつけてましたが、予想より大物すぎます・・・どういう事ですか?
デメテル:
ワシは知らなかったのじゃ・・・知っておったら当然試験など反対するのじゃ‥‥
梨々衣:
まさかガイア殿が速攻で地上へ行ったのは・・・あの時点で解って逃げた? でも本当にメーを失ったお二人の地上の肉体を緊急的に維持する為という線も「僅かに」ながら有るかもですが…
梨音:
デメテルさんは兎も角、Drと優樹子ママが知らないとかありえる? いや…知ってて「大丈夫」とか思ってたとか?
デーメテール:
あのポンコツ大邪神コンビなら・・・
梨々衣:
ありえますわね…
注:メー
メソポタミア神話において、メーもしくはニェー(ñe: [ŋɛ])と発音)、もしくは パルスー(parşu)(アッカド語)は、神々の基本的な社会的慣行・宗教的習慣・技術・行動規範・文明を形成する人間の条件などに関する基本的な事項が記されているもので、シュメールの人々の間で存在するものと理解されていたものである。それらは、人間と神の間の関係(契約、法)を理解する基本となるものであっ
レスフィーナ:
しかし最高管理責任電脳が意識コアを保護をする時点でその時に二人が「おおって=ベール」いたメーが離脱、ディーヴァ・ローカGRID連合のガロー・デーマンGRIDとイレ・イフェGRIDの境界領域になっている平原の中のガロー・デーマンGRID側に健在化して周囲を浸食結晶化しております。
インドラ:
やはりアレはメーか
優萌:
あのインドラさん、その「メー」というのは何ですか?
インドラ:
とても簡単にいうとリソースの塊、星辰(せいしん)エネルギーの塊だと今回は理解してもらって良い。特殊な意識体が持って発生させているエネルギーだ。
星美:
黄金の樹みたいなモノですか?
インドラ:
まあそうだな、各GRIDの中心にある黄金の樹の楽園と基本的には同じだが、今回のは大きさやチカラが桁違いに大きい。
ディオーネ:
それはマズイですね。
優萌:
マズイって?
梨音:
メーティス、優萌に簡単な例えでいうと、軍事力に自信のある国の隣国で小国の国境線近くに埋蔵量が莫大な天然ガス田が設備付きで現れたとしたら?
優萌:
それは戦争になりますね。小国を武力侵攻してそのガス田の領土まで自国領にする。なるほど解りました。
インドラ:
最高管理責任電脳がそのメーの所有者を保護したと言う事は所有権はスプロールGRID連合に確定しているのでわ?
レスフィーナ:
当然こちらとしてもディーヴァ・ローカGRID大使のヴィシュヌ全権大使にすぐに説明をさせて頂いたところ、今回の件でこちらへインドラ殿とマティー殿、ティシュタル殿が起こしなっているので直接対応を説明してほしいと命じられました。
梨々衣:
その様子だとイレ・イフェGRID側は連合の所有権を認めず自分達のモノだと主張し認めないと?
レスフィーナ:
はい…
星美:
落とし物は‥‥落とし主が解っているなら‥‥返さないといけないよ
梨々衣:
アナンケー星美様、今回はそういうのが通じる相手では無いのすわ。イレ・イフェGRIDは・・・
レスフィーナ:
すでにイレ・イフェGRID内では我々の権利をスプロールGRID連合により奪われるべきではないという世論になっているみたいであちらとの代表団との会合も決裂いたしました。
インドラ:
スプロールGRID連合の代表団の要求を拒否したと? すまぬが交渉に当たった担当監視官は?
レスフィーナ:
スプロールGRID監視機構より派遣された代表はユースティティア検事総次官とアプロディテー内務総監視官です。
インドラ:
ユースティティア殿とアプロディテー殿がワザワザ出向いたのか?
レスフィーナ:
対象が秘守事項であったための不慮の事故でありましたが、オリュンポス連合の行為により発生した事案です、その説明も込みでの判断の人事です。
梨々衣:
お姉さまはともかく、ユースティティア様の要求を拒否するとは本気ですわね。
梨音:
二つのメーの結晶を確保した上でスプロールGRID連合から離反する気だね。
マリアンヌ:
メーが無いってことはこの世界でも物質世界でもご主人様もフランソアさんもチカラが・・・
フロリー:
それにそんな事を許したら折角まとまった連合が崩壊しますよ。我が主。 他への牽制の為にもスプロールGRID連合法に逆らうGRIDはどうなるかを見せつけないとならないかと。
真理愛:
マリよくわからないけど、戦争一方手前の超絶ピンチ? 地上世界よりず~とヤベエ場所?星界って? それだけはわかった。 解りたくなかったけど
すみれ:
あはは‥はぁ~(溜息)
レスフィーナ:
先ほど、イーリスとアトロポスが偵察に行った所すでにイレ・イフェGRIDの境界線近くに軍が集結し始めていると報告があり。直ちにスプロール監視機構監察軍を出動させる為に現在スプロール連合本部で緊急安全保障理事会を開いておりますが・・
梨音:
そんな悠長な事をやってる間にかの者達は侵攻して確保占領される。
インドラ:
アテーナー殿と同意見だ。
星美:
場所はニーナやインドラさんのGRIDの連合で、もともとの原因は星美達の連合に責任あるし、そのメーってのが無いとフランソアお姉ちゃんもエステル議長さんも大変な事になるんだよね? どうにかならないの?
レスフィーナ:
それでお願いがあるのですが…
インドラ:
自GRID内での行動なら防衛行動だな。
梨音:
相手に確保される前もしくは確保された後であっても、フランソアお姉ちゃんとエステル議長をそこへ連れていきメーを回収させれば良いだけ!
ミーナはロンゴミリアドの隊員でGRID管理電脳女神ですから、ミーナ隊員の許可があれば、隊員の梨音も防衛行動に参加する義務があります。
梨々衣:
そうですわね。わたくし個人も参加しますわ。許可があれば。オリュンポスGRID連合とは関係無いですから。
ミーナ:
先輩達、もちろん許可します!
フロリー:
我が主、我がレギオンの団員はそう言ってますが…
すみれ:
もし我が隊員で我がメイドのミーナのGRIDに無断で軍靴を一歩でも踏み入れたのなら…その行為がどれほど愚かであったかをその魂を代償として思い知る事になるだろう
真理愛:
そうなるよね…あははっ・・・(苦笑)
フロリー:
YESマム!
マリアンヌ:
今すぐ梨乃と梨緒とスーに連絡します!
優萌:
ミーナ、最善を尽すから!
星美:
大丈夫みんなが・・・ついている!
ミーナ:
皆さんお願いします!
幸:
やっぱり降伏勧告とかは無意味ですかね?
インドラ:
こちらはたぶん軍勢としてみれば圧倒的な少数であり・・・そこが大軍へ降伏勧告を出しても「バカメ」としか返さんぞ?
幸:
アレはやっぱりインドラさんだったんですね。
レスフィーナ:
今回、スプロール監視機構としては私とヴァルマしか参加できせんが代わりに監察軍監視艦艇一艦を提供いたします! 現地までの移動と空中陣地としてご利用下さい! 操船は私が担当いたします!
ティシュタル:
監察軍監視艦・・・
アトロポス:
高次元空間転移終了・・・空間への影響は‥えっと・・・どれだっけ?
梨乃:
その右の一番上とその下が変異環境変数だから、それを引いて・・・
イリーシャ:
私がやろうか?
アトロポス:
イリーシャ様! 黙ってて下さい今わたし物凄く集中してますから!
エステル:
ここが本来の目的地であったオリュンポスGRID連合の首都アルカディアGRIDのメガロポリス?
スザンヌ:
議長さんそうです! ついたよ!
フランソア:
おーファンタジーの世界? ギリシャ・ローマ神話の世界だから。
梨緒:
上下水道や冷暖房や夜間照明とかもあるので見た目よりずっと現代的ですけどね。
ヴァルマ:
先輩は首都の上空って言ってたけど。 本当に上空にシフトアウトして良かったのかな?
イリーシャ:
いまさら高次元GRID間航行艦一つで騒ぎにはならないでしょ。騒ぎになったら「監視機構最高管理者の責任です」でいいよ。ですよねご主人様。
フランソア:
もともとは全て秘密にしていたパパとご主人様とマモンと優樹子ママがいけない! なんかあったら責任をとるのは責任者の義務。
エステル:
そうですわよね。
梨緒:
腹いせに徹底的に瑠莉閣下達に迷惑かけるつもりだ・・・
スザンヌ:
瑠莉さん達可哀そう・・・
フランソア:
もともとは全て秘密にしていたパパとご主人様とマモンと優樹子ママがいけない! なんかあったら責任をとるのは責任者の義務。
エステル:
そうですわよね。
梨緒:
腹いせに徹底的に瑠莉閣下達に迷惑かけるおつもりだ・・・
スザンヌ:
瑠莉さん達可哀そう・・・
星美:
ナニコレ・・・? ‥‥うちゅうせんかん?
幸:
先輩がおしゃってた艦(ふね)って「コレ」ですか?
大きすぎて遠近感が掴めません。
梨音:
レスフィーナ、ここうちの連合の首都だよ? その上空のこの低高度にシフトアウトって…アンタは後輩にどういう教育をしているの? これだけのデータ量のモノがシフトアウトしたら下手したら環境効果で首都壊滅。 あと、ここはギリシャ・ローマ神話というGRIDデザインの中で市民達は生活している!
レスフィーナ:
私、眩暈が・・・少しだけ待って・・上空って…普通高高度でしょ・・・うわぁぁ・・・・ヴァルマぁ~~イリシャーも付いていて・・・なぜ・・・二人とも‥殴るだけすまないわよ…
梨々衣:
とにかく市民がパニックになっていると思いますのでその対応を、幸さん、星美さんついてきて下さいませ。
幸・星美:
はい!
その6 へ続く
その6 へ続く