第五百九十八話 アヴァロンの王冠 前編 その5

 
アナエル:
ご主人さま、焼き鳥とても美味しいです♪ ピヨおぉっ!って感じです♪

花恋:
そう良かったね…
(いままでぬいぐるみとはいえトリの姿だったのに‥‥共食いじゃないの?)

紅葉:
パパもお義父様も春海や優樹子さんが居ないからってこの時間からお酒ですか?

源三:
シラフでこんな事やってられるか!

哲也:
激しく同意だ。めずらしくオマエと意見が合うとわな!

紅葉:
あの飲んだくれのパパ達はほっときまして。アナエルさん本当に美味しそうに食べますわね。

アナエル:
はい! 何食べても珍しくて! ぴよ吉のカラダのときは不完全だったので、こちらの世界でも皆様が食事をするのを観てるだけで食べられなかったので‥‥嬉しくて

花恋:
そうだったね。くま太とかにゃん太はこっちの世界だと食事するのに…特ににゃん太は大酒のみだし…デメテル大使と良く飲んでるし。 くま太はコーヒーの味にウルサイし。クロトのポチはドラゴンなのに甘いモノに目がないし…

紅葉:
にゃん太さんは酒の神バックスですかね

アナエル:
何よりご主人様や皆様と同じ食事を一緒に取れるのが嬉しいので。

紅葉:
そうですか。

花恋:
これからは一緒に色々なモノを食べよう。

アナエル:
はいご主人様、楽しみです!

源三:
花恋くん。バイオメイドを解放した上に今の人間・・・この場合は現生人類というんだがなと仲良くする方法はあるかな?

哲也:
おい源三、なに唐突に酔ったのか?

源三:
いいじゃないか、偶には若い者の意見もオジサンは聞きたいんだ。

花恋:
閣下、申し訳ありませんが、わたくしは一介の兵士です。そのような事を考える立場には御座いません。

アナエル:
………どうぞ。

花恋:
ありがとう。

哲也:
おい源三。これはどういう事だ? オマエも瑠莉も部下にどういう教育をしている。現場で戦う兵士一人ひとりが何の為に戦い、そしてどうしたら目指す世界を実現できるのか?何の為に武器を取るのか? それが大事というのはオマエと瑠莉の口癖では無かったのか?

源三:
オレもそう教えて来たつもりなんだが………。 花恋くん。オレもキミも戦場では同じ一兵士だ何も変わらん。 その上で同じ戦友としてキミの考えを聞きたいんだ。

花恋:
失礼いたしました。戦友としてなら、私の考えをお答えできますがかなり過激な考えになってしまいますがよろしいですか?

源三:
かまわんし、屈託のないキミの意見を聞いてみたい。

花恋:
わかりました。

花恋:
あくまで私、加倉花恋の考えではありますが「仲良くする」というのが共存と共栄を指す事なら、共栄以前にアポリロイドやそれから派生したモノであるオーダーメイドまでは現生人類と共存は可能ですが、バイオメイドとそれを元に作られたアルティメイドやスプラメイドは現生人類と共存は不可能です。

花恋:
今朝までこのアナエルはヒヨコ型の私のスポッタードローンでした。もちろんピヨ吉は私花恋にとって、アーマーメイドセレーネという愛機であり、その後数々の戦場で死線を一緒に潜り抜けた戦友であり、最愛なモノです。 
記憶が無く何も知らなかった一年前ならいざ知らず、記憶が戻りそれから色々なモノをエリシアや仲間達と見て来た今の花恋なら、ぴよ吉がヒヨコ型をしていようが、人間のカラダをしてメイドになろうが「受け入れる」事を花恋はできます。

花恋:
しかし大多数の一般の人達…特に今、戦場でバイオメイドを只の使い捨てのモノとして使役している人達がそれを受入れることができるでしょうか? それを理解させる為に閣下達はアナエルをこの姿にして花恋に引き渡したんですよね?

源三:
さすが加倉誠一博士の娘様だな。全てお見通しか。

源三:
なら花恋くん。 現在戦場にいたり無理やり使役されているバイオメイドを解放したら具体的にどうしたら良いと?

花恋:
はい。生存圏、世界を分けるしかないかと。そんなことが可能かどうかは私には分かりませんが…
これは理解あるオーバーメイドやアルティメイドに自ら望んで使役されていたり、地上の特殊な施設や製造プラントなどで働く保護されているバイオメイドは除きます。

現在強制使役されているバイオメイドは意識転送して星界に移し、こちらを現実とします。先ほど述べた残ったバイオメイドや、そのマスターであるオーバーメイドやアルティメイド、スプラメイドも、一部の外交用の使節や現生人類の維持管理用の人員を残して、後々はこちらを現実として全て地上から去ります。

まとめるとメイドが生きる世界の移住です。

アナエル:
あの! 私は…ご主人様に教えたり、ましてや焚きつけたりしてませんから!

花恋:
えっ? アナエル何の事を言ってるの?

紅葉:
アナエルさん、大丈夫ですわよそんなこと誰も思いませんから。

源三:
ふむ、花恋くん、それは現生人類をメイドが見捨てる事になるぞ。 

哲也:
その案だとメイドにとって現生人類は面倒みるだけで害にしかならないし。いっそのこと滅ぼして地上に残るということを考えるメイド達も出て来ると思うぞ。

源三:
そして見捨てられると恐れた現生人類は道ずれとする為にメイド達を皆殺しと

紅葉:
くすすっ♪ 大変ですわね。

花恋:
自滅衝動…沢山戦場でみてきました。

紅葉:
よってこの案を遂行するにはゆっくりと…そして多くのメイドにもましてや現生人類にも知られず実行する必要がございますわね。

花恋:
紅葉さん…何か怖いですよ…


その6 へ続く