第五百九十六話 UniVerse 前編 その18
梨々杏:
どうぞ。奥様が好きな茶葉の味なのでお口に合うかどうか…
梨音:
とても良い香りで美味しそう…ありがとう…(苦笑)
梨音:
本当に美味しい! この悪魔が好きな味といったから血の味でもするんだと覚悟して飲んだのだけど…
梨々朱(ニンニル以後、梨々朱(リリス)):
ちょっと! ナニ素でとても失礼な事言ってるんです! お姉さんは私の事なんだと思っているですか!
梨音:
なんだとって伝説の電脳空間の深淵の底に潜むと言われる、深淵の闇そのモノ。
女の化身。ishah=イシャー。天が男なら地は女、天が魂で地は魂の牢獄の肉体。
天が宇宙なら地は地球。 天が神の国なら地は悪魔の住む地獄。 天が善なら地は悪。 神が善なら人間は悪。
神が創りし悪と罪の結晶物=全ての人間の元にして女という悪魔の象徴物の元。
啓示宗教的な「原罪」そのもの。 ニンリル。 ヘブライ風にいうと全ての人間、リリンの創造主、母。 悪魔の悪魔。男性にとっての女という罪と憎悪と恐怖の象徴物。
アブラハムの宗教の救世主、メシア・キリストの絶対的敵対者アンチキリストの妻にして魔女の女王。白き魔女
魔女王=リリス。
梨々朱:
ナンですそれぇ!
梨々杏:
あははっ!(笑)
梨音:
まあ梨音はオンナなので。 さらに同性愛者だし、アレが正しい義ある事=正義だと固定している概念を見ると梨音なんか悪と罪の結晶物だからその意味では同類だけどね。
梨々朱:
あの神話の概念だとエヴァは去ったリリスの代わりにアダムのアバラ骨から作られた、ただの男の身の回りの世話と子供を産む為の人形=ヒトの形をしたモノ。もしくは便利な家具ですから。 アダムも神の無知なる奴隷だけど。
梨音:
それで梨々朱さんよ、梨音を騙してまで契約させ転移を阻止し拘束したのはアンタとティーパーティーをする相手が欲しかったから?
梨々朱:
それもあるけど…お姉さんに質問があるの。
梨音:
質問?
梨々朱:
お姉さん達は地上の人類を全て滅ぼした後、どうしたいの? それによって私はどの「アルコーン」(注)に「賭ける」か決めようと思っているの♪ 教えてくれたら約束通り私の領域を使う権利をお姉さんにあげる。
注:アルコーン Αρχων
グノーシス主義における低位な神的存在の名称であり、「偽の神」のことである。この名称は、「古代ギリシアのポリスにおける最高執政官」の称号と同じで、「世俗的権力者」という意味が込められていると考えられている。
梨音:
何の事かな? お姉さんをからかったらダメだよ? 梨音達が地上の人類を滅ぼすってそんな事するわけ無いじゃない。
梨々朱:
お姉さんこそ何言ってるの? 今地上に準備しているスプロールの入植地。あんなもの作ったら地上の世界がどうなるか? わからないお姉さん達じゃないよね?
梨々朱:
それに、もうお姉さんは自分が「どんな存在」なのか? 理解しているよね? 第一の「アルコーン」、全てのバイオメイドの「デミウルゴス」(注)にして「ヤルダバオート」(注2)。 LION(ライオン)= 獅子
注:デミウルゴス、デーミウールゴス、Δημιουργός、
プラトンの『ティマイオス』(注3)に登場する世界の創造者である。
ギリシア語では「職人・工匠」というような意味である。プラトンは物質的世界の存在を説明するために、神話的な説話を記した。この言葉と概念はグノーシス主義において援用され、物質世界を創造した者、すなわち「造物主」を指すのにデミウルゴスの呼称を使用した
注2:ヤルダバオート (Jaldabaoth)
ユダヤ教的・キリスト教的な要素を取り入れたグノーシス主義における、この世を造った「偽の神」の固有名である。プラトーンが『ティマイオス』のなかで記す造物主(デーミウールゴス)の名として使用される
『ナグ・ハマディ写本(注4)』中に見出された『この世の起源について』などで、傲慢な造物主・この世の創造者として言及されている。ユダヤ教の唯一神ヤハウェと同一視され、サバオトの父であるともされる。
『旧約聖書』の各所では神の唯一性が説かれているが、グノーシス主義ではこれをヤルダバオートの蒙昧さ、傲慢さの現れとみなした。
注3:ティマイオス Τίμαιος
古代ギリシアの哲学者プラトンの後期対話篇の1つであり、また、そこに登場する人物の名称。副題は「自然について」。
アトランティス伝説、デミウルゴスの宇宙創造、宇宙霊魂、リゾーマタ(古典的元素)、医学などについて記されている。自然を論じた書としてはプラトン唯一のもので、神話的な説話を多く含む。後世へ大きな影響を与えた書である。プラトンは、『ティマイオス』と未完の『クリティアス』、未筆の『ヘルモクラテス』を三部作として構想していたと考えられる。
パルメニデス・エレア派、ピュタゴラス学派、エンペドクレスといったイタリア半島系の哲学思想と、プラトン自身のイデア論や、医学的知見、魂論(魂の不死、魂の三分説、輪廻転生)などを織り交ぜつつ統合・合理化し、宇宙・神々・人間の自然本性の仕組みをプラトンなりに解説しようとした作品のため、複雑かつ曖昧さを多く含む内容となっている。例えば、本書をラテン語に翻訳したキケロは「あの奇怪な対話篇はまったく理解できなかった」と述べている。
注4:ナグ・ハマディ写本あるいはナグ・ハマディ文書
1945年に上エジプト・ケナ県のナグ・ハマディ村の近くで見つかった初期キリスト教文書のことである。ナグ・ハマディ写本は、二十世紀最大の考古学的発見に数えられており、事実、初期キリスト教の研究を飛躍的に進展させた。ナグ・ハマディ写本は、古代キリスト教を知るための原資料としては死海写本につぐ重要性を持つと見なされている。
梨々朱:
偽の神のさらに人工的な偽物。それが「獅子」の名をもつお姉さんという「存在」。世界再構築の為の起点になる部品。テトラグラマトン(注)でお呼びしましょうか?
注:テトラグラマトン τετραγράμματον
聖四文字
その19 へ続く