第三話 moving soul その19
由美恵:
うぅ~ん~! ……朝、かぁ……。
由美恵:
ご主人様……もう起きてるの?
私を起こさないように、そっと出て行ったのかな……。
メイドがご主人様より遅く起きるなんて、ほんと駄目よね……。
明日はもっと早く起きなきゃ……。
由美恵:
せっかく勇気出して、ちょっとセクシーな寝間着にしてみたのに……
「認証のあとで体調が悪化したら困るから、夜伽はまた今度ね」って……。
……まあ、手を握って寝れたのは嬉しかったし、
私のこと、ちゃんと心配してくれてたってことだもんね。
……でも……ちょっとだけ、残念……。
……まずは、顔洗って、歯磨いてこよう……。
由美恵:
よし・・・由美恵、今日も一日、生まれ変わった由美恵として、みんなに・・・特にご主人様にいっぱい喜んでいただけるメイドさんになれるように…じゃなかった、メイドさんとしてご奉仕できるように、がんばりましょう。
SE:
コン♪ コン♪
由美恵:
はいっ、ただいま参ります!
由美恵:
おはようございます、ノーラメイド長。
ノーラ:
おはよう、由美恵!
あああ……! 朝、ご主人様の部屋をノックして、返事があって、ドア開けたら!
朝の挨拶が返ってきたのよ!? こんなこと、あっていいのー!?
由美恵:
えっ? それって……どういう意味ですか?
ノーラ:
このクラブにご主人様と咲夜が来てから、
翌朝にちゃんと定時で起きたこと、一度もないのよ。
昨日はレイメイド秘書に「お疲れでしょうから、寝かせてあげて」って言われたから、起こさなかったけど……
由美恵:
……ということは、昨日は結局……寝坊されたんですね。
あの時間まで……
ノーラ:
そうそう、ほんと助かったわ。
由美恵が来てくれたおかげで、
もう私がふたりのシーツ引っぺがさなくて済むのよ!
で、もう支度できてるってことは──
ご主人様も準備OKってことでいいのよね?
……ねぇ、ご主人様は今どこに?
由美恵:
えっ? ご主人様、もう執務室に行かれたのではないんですか?
私が起きたときには、もうベッドにはいらっしゃいませんでした。
ノーラ:
……由美恵は、ご主人様の専属侍従メイドだから聞くけど──
昨晩、この部屋で……夜伽はあったの?
由美恵:
いえ……昨晩は、ご主人様から「認証が終わったばかりで体調が心配だから」って……
それで、「今夜は一緒に寝るだけにしよう」って言われて……
ベッドで、手を握って寝ただけです。
ノーラ:
……で、今朝起きたら、ご主人様の姿はなかった?
由美恵:
はい、その通りです。
ノーラ:
なるほど……状況は理解したわ。
由美恵:
えっ……?
ノーラ:
──由美恵、一緒に起こしに行くわよ。ついてきて。
由美恵:
……はいっ。
悠名:
すぴ~♪ くぴぃ~♪
咲夜:
むぅ~…うぅ~ん…
來奈:
すぅ~♪
由美恵:
ほわぁ……──って、三人とも……ぐっすりですね……
ノーラ:
寝てるっていうより、満ち足りて沈没してるって感じだねぇ。
そりゃあ三人でシてたら、そりゃね……特に咲夜なんて、悠名とご主人様の胸のあいだにスッポリ入って甘えてるし。
そりゃ満足だわな~
由美恵:
ふぇぇ~……三人で……
咲夜さん、あんなふうに甘えて寝るんですね……
……はぁ、なんか……ちょっと、可愛いかも……
ノーラ:
可愛くなんかないわよっ!──メイド長・必殺奥義!
シーツひっぺがしっ!!
バサッ!!
悠名:
ひぃぎゃあああああ!?
な、なに!? めくられたーっ!? めくる意味ある!?
來奈:
ひぃぃぃぃぃぎぃぃぃ! ノ、ノーラァァァ!
咲夜:
ノーラメイド長……っ!
毎朝、すみません……ほんとに……!
由美恵:
お、おはようございます……ご主人様……
悠名:
わっ、ちょっ、由美恵!?
ちがうの、これ仲間外れにしたとかじゃなくて……ほら、その……ごめんなさいっ!
そんなつもりじゃなかったのぉ……っ!
來奈:
……おはよう、由美恵……
あの……その……これは……えっと……す、すみません……
咲夜:
……うぅ……
由美恵:
(これ……明日から私がやるんだよね……?)
由美恵:
(三人で夜伽……まさにハーレム……いいな……)
(って、なに朝から羨ましがってるの私!?)
ノーラ:
悠名、咲夜! 早くお支度して下さい!
由美恵! ご主人様をお願い。お支度して執務室へ。
由美恵:
はいっ! ご主人様、行きましょう。
その20 へ続く