第三話 moving soul その8
仁香:
……え? これって……プール?
ノーラ:
うん、プールだよ。
仁香:
す、すごい……めちゃくちゃ広い! しかも、これって……冬でも泳げるの?
ノーラ:
そうだよ。水温管理がされてるから、季節に関係なく使えるよ。
仁香:(
……でも、メイドの仕事ってこういうのと関係あるの? なんか、想像してたのと全然違う……。
ノーラ:
最初はみんなそう言うんだよ。ここでは、戦うだけがメイドの役目じゃないからね。
仁香:
……うん、でも……なんか、落ち着かない……。
仁香:
……あの、ここってご主人様のベッドですよね? 広いですね‥
ノーラ:
キングサイズだから、二人でも三人でも四人でも十分寝れる。「そういう為」のベッドだし。広くないとね♪。
仁香:
(ごっっ)そ…そういう為。 それで四人って…えっ…あぁ…
ノーラ:
ちなみにオーナールームの來奈ご主人様のベッドはこの1.5倍はある。よって5人でも6人でも寝れる!
仁香:
六人…(ゴクっ)…六人で‥‥
仁香:
それで私のお部屋は?
ノーラ:
ここで少し確認しとかない事があるの。 仁香、キミの為お部屋も一応用意できるけど「イラナイ」よね? 仁香はソフィアの「唯一」のメイド。
仁香:
はい…そうですね。
ノーラ:
本当のところ、仁香はソフィアの事をご主人様として好きなの?
仁香:
そ…それは…命を救って頂いただけなく、こんな私の事を「幸せする義務がある」とみんなの前で宣言されて…
ノーラ:
そうだよね~そんなご主人様を惚れないわけないよね?
仁香:
‥‥はい。メイドとして…ソフィアご主人様の事を…お慕いもうして‥おります。
ノーラ:
ならキミのお部屋はいらない。ここがキミとソフィアの部屋だ。そうすると、ベッドはこのベッドしかない。つまり、このベッドはソフィアと専属侍従メイドの仁香のベッド。今夜からソフィアへの夜伽のご奉仕はキミの務め……意味はわかるね?
仁香:
は…はい……。いちおう正統評議会側でも夜伽の儀礼はありましたので……わかります。……性的ご奉仕のことですよね……? が、がんばります……。ご主人様と一緒に寝る……はふっ♪ でも、ご主人様は私のことをご所望されるでしょうか?
ノーラ:
いくら命を救うためとはいえ、ずっとメイドを取ることを拒否していたソフィアが、初めてメイドを取ったんだよ? 気がないわけないと思うよ? それは特別なことだよ? それに、自分のメイドと夜伽をするのはマスター、ご主人様の義務! キミが望めば、拒否はできない。
仁香:
義務……そ、そうですよね……はふっ♪
ノーラ:
ガンバレ。
仁香:
はい……がんばります……。
レイ:
今しがたエンパイアクラブオーナー連合本部より、ソフィア様の副オーナー登録が正式に完了 したと連絡がありました。
今後のクラブ内の呼称も、副オーナーに合わせて変更させて頂きますね
ソフィア:
了解。じゃあ、レイメイド秘書、今後はそれでお願い。
美紗季:
さっそくだけど ソフィア、副オーナー ちゃん!
あのさ、アンタの幼馴染である來奈オーナー、外回りばっかりで クラブの運営はお助け派遣で来てる私に丸投げ なんだけど! どうしてくれるの?
レイ:
外回りが最初は忙しいですし、昨日は戦闘もありましたし…
美紗季:
レイお姉さん! そんなのは美紗季も分かってるの!
でも、うちのノエミお姉さまに
『ソフィアちゃんから頼まれたから手伝ってあげて!』って言われて来たのに、
結局全部 私に降りかかってる んだけど?
この状況、どう オトシマエ つけるつもりなのか、美紗季はソフィアに聞いているんです!
ソフィア:
美紗季さん…いや、その…だから…で、私も昨日までは身動きが取れなくて…
本当にごめんなさい。
これからは 副オーナーとして全力で働かせていただきます…!
ソフィア:
それで、美紗季さん。今のクラブの状況はどんな感じ?
美紗季:
本来の今日の予約は10件。そのうち2件がエスコート付きのお泊りコース、明日はデートコースが1件。
それに明日は9件の予約が入ってて、お泊りコースが2件追加。
さらに、政府関係者や軍高官からのサロン予約が20件。そのうち泊まりが6件ね。
今の時点で、予約の問い合わせがどんどん増えてるって感じよ。
ソフィア:
今のこのクラブのキャパってどのくらい?
レイ:
現状だと、サロンは最大8件が限界です。エスコート可能なのは3人、お部屋も3つしか空いていません…
ソフィア:
…無理じゃないですか…この状態のクラブを放置してたなんて…來奈め……
とにかく、他の同盟クラブに振り分けるしかない…! 美紗季さん、EHDENに…
美紗季:
うちは無理。 本部の隣にあるクラブが最優先で予約埋まるし、
それに、ここのサロンを利用するお客様は、宿泊予定がない場合でも
EHDENのある白急篠山ビルの白急白山ホテルに泊まる予定だから。
ソフィア:
……なら、剛史お兄ちゃんのグリーンウッドと、
良二お兄ちゃんのホワイティーガーデンに連絡してみる…!
ソフィア
……本日メイド学校から来た新人メイドたちは、実務に入れるのはいつ頃?
レイ:
新人メイドたちですが、クラブでの稼働には最低でも10日は必要です。
美紗季:
何はともあれ、サロンで接客できるメイドが一人でも多いほうがいいからね。
ソフィアちゃん、キミもメイドとして今夜から接客お願いね。
來奈ちゃんがいても、挨拶や商談ばかりで実際の接客が回らないのよ。
ソフィア:
えぇ…? 副オーナーの私がメイドとして接客? それってどう考えてもおかしくない?
美紗季:
EHDENじゃ普通よ。サロンの売上トップは店長の梨音、二位はメイド長のアリエルさん。
だから、ソフィアちゃんにも期待してるよ?
ソフィア:
……やっぱり、こうなるのかぁ……
まぁ、エンパイアクラブ・ミリタリアにいた時から、こういう世界なのは分かってたけど……
副オーナーになった時点で覚悟はしてたし……あー、もう、分かった!やるよ!やればいいんでしょ!
美紗季:
そうそう、その意気よ! じゃ、ソフィアちゃん、さっそく今夜から頑張ってね♪
レイ:
……頑張ってください、副オーナー。
その9 へ続く