Shell moon のえんぱいあな日々 第四話 UNDER/SHAFT その3

 
SE:
ズゥキューン(ビームライフルみたいな音)

SE:
シャンッ!

構造物の上面を光になった弾頭が突き破り、
構造物を盾にしていた戦車に突き刺さる。

ドカーン!

美月:
タンクが隠れた構造物ごと、安全な上空から破壊……いや、消滅させた…

菜乃:
それも一発で…
これ実戦だったら、周囲にいる兵士も――
オーバードライブ使っても、絶対に離脱する前に蒸発する…

優:
マニュアルで読んでたけど…
戦車より装甲があって、火力は要塞陣地砲なみ、
それが戦闘ヘリを超える機動力で飛び回るとか…
もう戦場の悪魔じゃん…。
こんなので戦争したら、世界が滅ぶよ……

(小声で)
こんなの私、ナビゲータとして乗るの……?

梨緒:
効果抜群ですね。
良いように――恐慌状態になっています。

梨乃:
いや、まだ足りない!
ここはイシュタルを持ってきて、
バスターランスランチャーをぶっ放して!

梨緒:
奥様――
あの大砲は核攻撃なみなので、
絶対にヤメテ下さい。

梨緒:
みんな、これが――
守人(もりと)の「リミッター」が付いてない時の動きと火力。
もし、こんなので本気の戦争をしたら?

美月:
確実に、世界が滅びます

梨緒:
それを――どうにか止めるためにあるのが、
君たちが志願した――

私たちの部隊『ロンゴミリアド』だよ。

梨乃:
…説明、梨緒ばっかり…。
ズルイ…。

梨緒:
奥様、ズルイとは何ですかズルイとは。
奥様が説明すると――
アーマーメイドが実際にどうしたら世界を滅ぼすような事になるのかとか、
アーマーメイドの性能がどうのこうのとか、
実際に止めるためには企業としては、スプロールとしては、とか――
複雑すぎるんです。

(ちょっと鋭く)
――そういうことを言おうと思ってませんでしたか?

梨乃:
ぐにゅ……
そういう経過が大事で……

梨緒:
この子たちには今は良いんです。
まずは直感で解ってもらうことが大事。
理解は後です!
奥様は教えることが苦手な自覚、あるんですから――
大人しくしといて下さい。

梨乃:
だって……これじゃ梨乃がいる意味ないじゃん……

美月:
かぁ……可愛い……くっすす……あっ! スイマセン!

優・菜乃:
……(苦笑)

咲夜:
パイロットは大体の動きをすれば勝手に補佐が入るのか……
細かい動きや自由な機動はできないな……

悠名:
それに出力が低いし、リアクタープールの効率が悪い。
長距離の要撃とか無理。
これは「戦略兵器」じゃなくて「戦術兵器」。戦術機だね。
使い物にならない。
単騎で「国家レベルを滅ぼせる」のが「アーマーメイド」なのに。
こんなの玩具だね。ダメダメ。

咲夜:
悠名、絶対にそれを設計者のお嬢様に言わないでね……
そういうことには繊細だから。

悠名:
悠名はこの機体……なんか嫌い。
今回のデモはするけど、もう乗らない。

咲夜:
それもお嬢様に言わないで……
死ぬほど落ち込むから……

梨乃:
咲夜ーっ! 悠名ーっ! おつかれさまぁーっ!

美月:
近くで見ると……ほんとに大きい……。
こんなので、あんなスピードで自由に動いて……
しかもあんな弾を地上に好き放題撃てるなんて……。

優・菜乃:
……(無言で見上げている)

梨緒:
これで、オーナー様たちを…説得できればいいんだけどね。

守人が、黒い影と共にゆっくりと降下し、テラスの前に着地する。
ガシャンっ!

ゴンっゴンっゴンっ !プシューーー!


その4 へ続く