Shell moon のえんぱいあな日々 第四話 UNDER/SHAFT その5

 
お姉さん:
梨乃ちゃん、梨緒ちゃん、今日はお仕事じゃなかったの? 来てくれて嬉しいよ!

梨緒:
お昼ご飯に寄りました。

梨乃:
後輩たちも一緒に連れてきたの。

美月:
このお店のハンバーガー、嬉しいです。メイド学校ではこういう味、なかなか食べられませんでしたから。

優:
さっき通ったのが、私たちが通う学園でしょ? 近いし、気に入ったらいつでも食べに来られるね。
それにこの値段…安い! ほんとに学生向け!

菜乃:
梨乃奥様の立場で、どんなお昼に連れて行かれるのかドキドキだったけど…
こういう学生らしいお店で、ちょっと安心しました…

美月:
こんなお食事も召し上がるなんて…ちょっと意外でした。

梨緒:
奥様は、贅沢な食事なんてほとんどしませんよ。このハンバーガーセットでも、むしろちゃんとした食事の部類です。
放っておけば、スーパーの特売で纏め買いした冷凍ピザだけを一週間食べ続けても平気な人ですから…。
付き合わされる専属侍従の身にもなってください。健康面は、まあ、あの世界なら大丈夫かもしれませんけど…。

美月:
えっ…? 特売の冷凍ピザだけ?

優:
しかも電子レンジでチンだけ…?

梨乃:
梨緒、文句あるの?
それより、みんな「カスタムバーガーセット」でいい? ドリンクは好きなのをお姉さんに頼んで。セットに含まれてるから。

優:
はい、わかりました!

メリー:
ビーフボウルが食べたいのですわ♪ メイド学校にいる間、せっかく日本に来たのに…ずっと本場の牛丼屋さんで食べてみたかったんですの。

來奈:
わかる〜。カナダにも似たような牛丼屋はあるけど、本場の味はやっぱりちがうよね。
アメリカ行った時は良牛でよく食べてたけど、日本のお店で食べるのはなんか特別感ある♪

蘭子:
高級中華とか夢見てた自分がバカだった……良牛とは……はあ……(溜息)

ソニア:
まあ、昼食がアンタの花恋ご主人様の軍用レーションとか、梨音お嬢様のコンビニの肉まんで済ますよりは、だいぶマシだと思うけどね。

由美恵:
本当に……こういうお食事をされるんですか、ご主人様。
昼食が軍用レーションとか、コンビニの肉まんって……。

ソニア:
夕食は初日から、まかないのメイドカレーを「美味しい美味しい」って喜んで食べてたし、
朝食も、二日目からは本人の希望で「パンとチーズだけ」になってるよ。

由美恵:
……そう、なんですね……。

ソニア:
だから、覚悟しといたほうがいいよ。
逆に言えば、由美恵がうまく誘導すれば――もっと贅沢な食事にもなるかもね。

蘭子:
そうそう。由美恵が頑張れば、ご主人様もちょっとは贅沢してくれるかも?

由美恵:
そ、そんな……とんでもないっ!
わたし、そんな目的で近づいたわけじゃありません!

ソニア:
あー…そうか、ご主人様って、自分のためには贅沢しないけど、誰かのためならするんだよね。

蘭子
……うちのお嬢様も奥様方も、なんでこう…メイドより質素な食事してるんだろ。
誰の影響なんだろうね……ほんとに。

エステル:
国連から……?
現在危険域に達している軍拡競争に対する、緊急共同非難決議への参加要請……?
「非難決議」なんて、いったい何の意味があるのかしら。
わたくしも……ですが、人を大量に虐殺してるような連中が、そんなもので態度を改めるとは到底思えませんのに。
とはいえ……返答しないわけにもいきませんし……ああ、どうしたものかしら……。

マリアンヌ:
ご主人様っ! またそんなもので食事を済ませて…!パークス(レスフィーナのこと)ですか? 
昨晩も、ベッドに入ってすぐ抜け出したの知ってるんですよ?
ここ何日もまともに休めてないのに、せめて食事くらいはちゃんとしてくださいってお願いしてるでしょう!?

エステル:
ちゃんと摂ってますわよ? ほら、これ……カロリーはしっかりありますし。
あとでサプリメントも飲みますから、大丈夫ですわ。

マリアンヌ:
……それ、レスフィーナさんと全く同じ言い訳ですっ!!
もう…あの方も、いつもカロリーメイトで済ませてるからって、真似しないでください!

マリアンヌ:
わかりました…。ご主人様はもう、私の言うことなんて聞いてくれないんですね。
……私、泣きますよ?

エステル:
ま、待ってくださいまし!
今この瞬間、わたくし、心を入れ替えましたわ!
どうかお許しを――!

マリアンヌ:
……具体的には、ご主人様。今からどうされるんですか?

エステル:
ええっと……オーナーの方々の到着が予定より遅れそうですので、
今夜はリズさんのファミレスで、マリアンと綾愛さんとご一緒に、ちゃんとお食事をいただいて……
その後はお風呂に入りまして、皆さまが揃われるまでは、マリアンと自室で静かに過ごすことにいたします。
お約束いたしますわ!


マリアンヌ:
本当ですね? その約束、破ったら……私、ご主人様のこと……知りませんから。

エステル:
はいっ! 承知しておりますわ!

エステル:
(オーナー達が今夜中に集まりそうなら、悠里と紅葉さんに頼んで一時的に日本周辺の空路を混乱させて到着を明朝まで遅らせる事も検討しなけばなりませんわね)


その6 へ続く