Shell moon のえんぱいあな日々 第四話 UNDER/SHAFT

 
テーマ曲「UNDER/SHAFT」

〇前話


エリーザ:
こちらが、來奈評議員の控え室になります。

來奈:
……ふふ、悪くない部屋ね。

由美恵:
……えっ……

由美恵:
こ、これが会議に参加するオーナーの控え室……? すごく豪華ですね……

エリーザ:
こちらは、オーナー連合の中でも評議員専用に用意された控え室になります。
一般のオーナー参加者とは別でして、非公開の簡易会談などにも使われるお部屋です。

エリーザ:
総会は数日にわたるのが通例でして、短期間だけ参加される一般オーナーとは異なり、評議員の方々はほとんどの日程に出席なさいます。そのため、お付きのメイドとともに宿泊できるよう、こうしたお部屋がご用意されています。

由美恵:
お付きのメイドと……夜を過ごすために……天蓋付きの広いベッドが一つ……

エリーザ:
そのあたりは……エンパイアクラブですから♪

エリーザ:
こちらのお部屋には専用のお手洗いに加え、白山市の街並みを一望できる展望風呂がございます。ジャグジー付きでございますよ。

由美恵:
す、すごい……。さすが評議員様専用のお部屋ですね……。これ、公務員だったら税金の無駄って叩かれそうなレベルの豪華さです……まさにクラブハウス……

エリーザ:
はい、その通りでございます♪

來奈:
このパイ、おいしそうだけど……食べていいのかな?
もし大丈夫なら、他のオーナーの到着までまだ時間あるし……。

エリーザ:
はい、もちろん召し上がってくださいませ。
日本の旅館でお部屋に置かれてるお菓子と同じようなものですね。本日は確か、かぼちゃのパイだったかと。

來奈:
うん、じゃあお茶にしようかな……かぼちゃなら、コーヒーの方が合うかも。

エリーザ:
かしこまりました。すぐにお淹れいたしますね。

由美恵:
あのっ……場所を教えていただければ、私がお淹れします!

エリーザ:
まあ、そうでしたね。由美恵さんは來奈評議員付きの侍従でしたものね♪
つい私、スプロールの中でもこちらの地上世界でも、どちらでも侍女をしているものですから……手が出ちゃいました。

由美恵:
あの……エリーザさんは、地上のご出身じゃなくて、スプロールGRID連合の方なんですか?

エリーザ:
はい、わたくしはオリュンポスGRID連邦にて、アプロディーテ様の神殿で神官兼侍女を務めております。
由美恵さん、ご友人に星界の方がいらっしゃるのですね?

由美恵:
はい。メイド学校の同期に、オリュンポス連邦から来ていた電脳女神のメリーとアナエルがいます。
その子たちから、星界のことを少し教わりました。

エリーザ:
まあ、アナエル・スカリジェ様──星界名は電脳女神セレーネ様──と、鹿苑寺メリー様──星界名は電脳女神メノイエ様。アナエル様はわたくしのご主人様の妹君でもあります。メリー様はそのご友人です。 お二人のこと、よく存じておりますわ♪

そのお話の続きの前に……まずはご主人様にコーヒーをお淹れしましょう。きっとお待ちかと思いますので♪

來奈:
待ってるわけじゃないけど、ゆっくりでいいよ。
でも──美味しいコーヒー、期待してるからね♪

由美恵:
ひゃっ…! も、申し訳ありませんご主人様っ!
すぐにお淹れしてまいりますっ! エリーザさんっ!

エリーザ:
ふふ、お部屋専用の給湯室をご案内いたしますね。どうぞこちらへ♪

由美恵:
は、はいっ!

由美恵:
ご主人様、おかわりです。どうぞ。

來奈:
ありがとう、由美恵。

ソニア:
警備は万全です。
極東司令部直属、司令長官付きの特殊作戦群から派遣されたエリートメイドが、衛兵として直接配置されています。
私が出張るまでもないくらいで…そのぶん、こうしてご主人様のところにちょくちょく顔を出せる余裕もありますけどね。

ソニア:
今回の総会、エステル議長が突然、緊急招集をかけたので……
オーナーたちが全員いつ揃うのか、正直不明です。

來奈:
揃わないと総会、始められないでしょ?

ソニア:
それが……皆さん急いで日本に向かってはいるんですけど、
鹿苑寺卿みたいにプライベートジェット機を持ってるオーナーばかりじゃないんですよね。

由美恵:
いくらエンパイアクラブのオーナー様でも、
国際空路を自由に横断できるジェット機をお持ちの方は限られているかと…

來奈:
私も持ってないよ……持ってるほうがヘン。

ソニア:
ご主人様のあのインチキっぽい特殊三段飛行甲板の航空揚陸母艦、
ジェットエンジン付きで、太平洋どころか地球一周できそうですけど?

來奈:
あれは私個人で動かせるもんじゃないし…。

由美恵:
ひこう…ようりく…ぼかん?
な、なんですかそれ…?

ソニア:
それはともかく――
今回の臨時総会、開始のタイミングも未定ですし、
何日かかるかも分からない以上……これはもう、泊まり決定ですね。
私は警備宿舎に割り当てられてるので、そっちに泊まります。
夜間の警邏もあるので。
由美恵はこの部屋で、ご主人様と一緒に泊まってください。

由美恵:
えっ!? こ、ここに…ご主人様と…お泊まりですか…!?

ソニア:
ですね。時間があるうちに、下のショッピングモールで
下着とか買ってきた方がいいですよ。
近くて便利ですし。
ご主人様も由美恵も、早めに買い物済ませた方が良さそうです。

來奈:
……クラブに戻れないのか……
ソフィアと美紗季さんに絶対イヤミ言われるやつ……。

ソニア:
それもご主人様のお仕事のうちです。頑張ってください♪

二人とも來奈と電脳通信

美紗季:
ふーん、今夜は確実にお泊まりで、明日も未定? 何日になるかも分かんないんだ。

ソフィア:
こっちは予想外のトラブルでてんてこ舞いなのに…そっちは優雅に豪華なお部屋でのんびりですか?

千沙:
えっ、由美恵ってご主人様とソニアさんと一緒に臨時総会に行ったの? もう現場で働いてるなんて、すご〜い! さすが由美恵だね。

こずえ:
でも仁香もさ、さっき美紗季さんが言ってたけど…昨晩サロンでお仕事したんだよね? メイドになったばかりなのに。

仁香:
あ…うん。悠名やマーニー、パニーたちがずっとそばにいてくれたから…。私はただ、飲み物を運んだり、オムライスに絵や文字を描いたり、お客様を席にご案内しただけなんだけど…

千沙:
えぇ〜!? メイド学校どころか、研修もまだなのに…初日でそれって、由美恵よりすごいかも!

仁香:
だから…ご主人様のお役に立ちたくて…つい、必死になっちゃって…

こずえ:
その気持ちをすぐに行動に移せるのがすごいのよ! ドクターソフィアの専属メイドになるくらいの子だもん、納得かも。

仁香:
はぅ…っ(真っ赤)

千沙:
ドクターに助けられたメイドって多いし、憧れて専属になりたいってお願いした子も何人もいたけど、全員断られてるんだって。私が直接してるだけでも三人ほど断られてるし。

仁香:
やはり…ご主人様は…モテルんですね…

こずえ:
千沙はね、私たちと同じで保護されてそのままクラブ入りした子たちとも仲良しなの。メイド学校って行く子の方が少ないし、行かなくてもメイドにはなれるし。

千沙:
友だちは多い方が楽しいしね!

仁香:
そ、そうですよね…はぁ〜…

モニカ:
ここが…本物のエンパイアクラブのサロンなんだ。やっぱり、メイド学校の練習用サロンとは全然違うね。

ミーサ:
当たり前でしょ? でも…想像以上に豪華だね。

アニエス:
ここが…エンパイアクラブ・シェルムーンのメインサロン…

パンパンっ♪(綾子が手を叩く)

綾子:
みなさーん! 注目です!

スザンヌ:
今から引率の梨花先生からこれからの予定についてお話があります! 先生お願いします!

梨花:
スー、なんで私が先生なのさ…

ソフィア:
昨晩、仁香が働いたのが向日葵さんに伝わったらしくて、サロンでのウェートレスとかキッチン担当なら新人研修にもなるからって、梨花さんが引率して連れてきたのよ。

美紗季:
でも宿舎の部屋がまだ用意できてなくて、それも研修の一環として自分で整えさせる予定なの。
……おかげでこっちの段取りはもうメチャクチャ。

そのぶんEHDENにはForestのさな料理長と花梨副料理長、それに亜美総務部長と陽菜乃副部長が来てくれるから、まあ交換条件ってことで。

研修自体は、EHDENで不要になった梨花営業本部長と、大使館だとこういう時は邪魔でしかないスーが担当するって話よ。

梨花:
おい美紗季、何てこと言うのよ! 聞こえてるってば!

スザンヌ:
美紗季お姉ちゃん、ひどすぎ!

綾子:
ふふっ、でもあのForestの亜美総務部長と陽菜乃副部長がいれば、梨花さんがいなくても何とかなっちゃうのも、スーがこういう時に大使館で浮いちゃうのも、まあ事実ですし。

スザンヌ:
綾子! それは口に出しちゃダメなやつ!

新人メイド達・仁香:
……(苦笑)

來奈:(電脳通信)
まあ…がんばってね。

由美恵:
あの……蘭子さん……私の下着、やっぱり大胆すぎませんか? ほとんど透け透けでしたけど……

蘭子:
それは普段用じゃなくて、お泊まり用の勝負下着だから。そういうのは何枚か持ってたほうがいいのよ。

由美恵:
そ、そういうものなんですか…

ソニア:
私なんて今、相手もいないしね……そういうのは、ちゃんと恋人がいる蘭子の言うこと聞いとくのが正解だよ。

由美恵:
蘭子さんって……グレイスさんのお姉さん、エミリーさんとお付き合いしてるんですよね? エミリーさんって、どんな方なんですか?

蘭子:
一言で言うなら、「白髪の死神」ってあだ名がついてた衛生メイド。でも本性は、カメリアコンプレックスとシスターコンプレックスの合わせ技な、ちょっと異常な人。

ソニア:
エミリー先輩、グレイスのいる家のクラブと、フロリーがいるすみれさんのクラブには出禁だからね。妹ふたりが「命の危険がある」って判断されたらしいし。

由美恵:
カメリアコンプレックスは、なんとなく衛生メイド系に多そうな……属性っていうか。でも、実の妹が危険って……それってシスコンの域、超えてませんか……?

蘭子:
次は夜の道具のお店ね。急なお泊りで、持ってきてないでしょ? 一緒に使う相手と相談しながら選んだほうが失敗しないし、今後買い足すときの参考にもなるから。

來奈:
そ、そうだね……。実物見て買うのって、もしかして初めてかも……

ソニア:
わ、私も実はちょっと興味あります……ご一緒します。ええ、もちろん警護として、ですけど!

由美恵:
えっ? 夜に一緒に使う……って、な、何のお店なんですか……?

SE:
ズゥキューン(ビームライフルみたいな音)

SE:
シャンッ!

構造物の上面を光になった弾頭が突き破り、
構造物を盾にしていた戦車に突き刺さる。

ドカーン!

美月:
タンクが隠れた構造物ごと、安全な上空から破壊……いや、消滅させた…

菜乃:
それも一発で…
これ実戦だったら、周囲にいる兵士も――
オーバードライブ使っても、絶対に離脱する前に蒸発する…

優:
マニュアルで読んでたけど…
戦車より装甲があって、火力は要塞陣地砲なみ、
それが戦闘ヘリを超える機動力で飛び回るとか…
もう戦場の悪魔じゃん…。
こんなので戦争したら、世界が滅ぶよ……

(小声で)
こんなの私、ナビゲータとして乗るの……?

梨緒:
効果抜群ですね。
良いように――恐慌状態になっています。

梨乃:
いや、まだ足りない!
ここはイシュタルを持ってきて、
バスターランスランチャーをぶっ放して!

梨緒:
奥様――
あの大砲は核攻撃なみなので、
絶対にヤメテ下さい。

梨緒:
みんな、これが――
守人(もりと)の「リミッター」が付いてない時の動きと火力。
もし、こんなので本気の戦争をしたら?

美月:
確実に、世界が滅びます

梨緒:
それを――どうにか止めるためにあるのが、
君たちが志願した――

私たちの部隊『ロンゴミリアド』だよ。

梨乃:
…説明、梨緒ばっかり…。
ズルイ…。

梨緒:
奥様、ズルイとは何ですかズルイとは。
奥様が説明すると――
アーマーメイドが実際にどうしたら世界を滅ぼすような事になるのかとか、
アーマーメイドの性能がどうのこうのとか、
実際に止めるためには企業としては、スプロールとしては、とか――
複雑すぎるんです。

(ちょっと鋭く)
――そういうことを言おうと思ってませんでしたか?

梨乃:
ぐにゅ……
そういう経過が大事で……

梨緒:
この子たちには今は良いんです。
まずは直感で解ってもらうことが大事。
理解は後です!
奥様は教えることが苦手な自覚、あるんですから――
大人しくしといて下さい。

梨乃:
だって……これじゃ梨乃がいる意味ないじゃん……

美月:
かぁ……可愛い……くっすす……あっ! スイマセン!

優・菜乃:
……(苦笑)

咲夜:
パイロットは大体の動きをすれば勝手に補佐が入るのか……
細かい動きや自由な機動はできないな……

悠名:
それに出力が低いし、リアクタープールの効率が悪い。
長距離の要撃とか無理。
これは「戦略兵器」じゃなくて「戦術兵器」。戦術機だね。
使い物にならない。
単騎で「国家レベルを滅ぼせる」のが「アーマーメイド」なのに。
こんなの玩具だね。ダメダメ。

咲夜:
悠名、絶対にそれを設計者のお嬢様に言わないでね……
そういうことには繊細だから。

悠名:
悠名はこの機体……なんか嫌い。
今回のデモはするけど、もう乗らない。

咲夜:
それもお嬢様に言わないで……
死ぬほど落ち込むから……

梨乃:
咲夜ーっ! 悠名ーっ! おつかれさまぁーっ!

美月:
近くで見ると……ほんとに大きい……。
こんなので、あんなスピードで自由に動いて……
しかもあんな弾を地上に好き放題撃てるなんて……。

優・菜乃:
……(無言で見上げている)

梨緒:
これで、オーナー様たちを…説得できればいいんだけどね。

守人が、黒い影と共にゆっくりと降下し、テラスの前に着地する。
ガシャンっ!

ゴンっゴンっゴンっ !プシューーー!

 
由美恵:(真っ赤)
ここですかっ?
ここって「そういう物」が売ってる専門店ですよね!
確かに夜ご主人様と一緒に使うものだけどぉ!

ソニア:(小声でブツブツ)
・・・購入したものを蘭子に渡してEHDENのエミリー先輩と蘭子の部屋に置いといてもらえば帰りに取って・・・よしどうにかなる‥

來奈:
女性用は二階か…私達先に入ってるから二階にいる。 ソニア行こう。

蘭子:
どうぞお先に。由美恵が落ち着いたら入りますから

ソニア:
はい、ご主人様参りましょう!

蘭子:
お泊まりが数日続くってさ。
それに、いつも使ってる道具も持ってきてないらしくて――
ねぇ? 今回はご主人様を独り占めじゃない?

由美恵:
ご主人様を…独り占め……はうっ!

蘭子:
夜はご主人様に由美恵を一杯愉しんでもらって、昼間は大事な会議に集中させるのが専属侍従メイドとしてのお勤めだと蘭は思うわよ。

由美恵:
そうですよね……専属侍従メイドとしてのお勤め…せっかくの夜伽のご奉仕……
ご主人様に、いっぱいいっぱい楽しんでもらうのが……
はう…いっぱい……

由美恵:
ご主人様に……いっぱいいっぱいイって果ててもらって……
さらにイかせて……ふぅ~♪ あぁ、私、もっと頑張らないと…はぁはぁ♪

蘭子:
ちょっ…ちょっと由美恵? 目がヤバイ…何妄想してるのか、大体解るけど!

蘭子:
正気にもどって!?
そっと肩をやさしく叩く

由美恵:
あれ? わたし…

蘭子:
とりあえず店内に入ろう。

由美恵:
はい。

蘭:
(この子、性欲暴走機関車タイプだわ……
ソニアから聞いてたより、全然ヤバい娘(こ)……
優萌なみかも…來奈、大丈夫かな……)

由美恵:
はわぁっ……こ、これって体操着とブルマ?
体操着、胸しか隠れてないし……ブルマも……穴が……。
あ、あのっ……こ、こういうのって……やっぱり、喜ばれるものなんでしょうか?

蘭子:
うん、まあ……そうだね。
あとね、学園の服でやっちゃうと、あとが色々大変だから……ちゃんと専用のものを用意しとかないと、その場のノリだけでやると……後悔するから。

由美恵:
なるほど……その場のノリで後悔……気をつけます…… 

蘭子:(小声・ボソッと)
……自分で墓穴掘ってんじゃん、私……。

由美恵:
超オススメ……?
このピンクの、なんだか可愛い……。
えっ、な、なんでリスさんがこんなところに……?
こっちの液体洗剤っぽいのは……ローション?
香りが……全部ちがう……はぅぅ……。

蘭子:
ソニアと來奈、どこ行ったんだろ。
ここ、商品多すぎてちょっと迷路っぽいよね……

メリー:(声だけ)
初心者の方でしたら、まずはこちらから試してみるのがよろしいかと♪

メリー:
ソニアさん、お一人でお使いになるのでしたら、挿れるときに見えづらくなりますし、少し細めの方が扱いやすいかと♪

來奈:
ちょっとお値段は張るけど、このブランド好き。
日本製なのに海外でも普通に買えるし、女性人気も高いのよね。

メリー:
ええ、こういったお品はやっぱり日本製に限りますわ。

ソニア:(顔真っ赤・苦笑)
そ、そう……なんですね……
(えっ、なにこの高級美容器具を選ぶノリで電動ディルト語る超セレブ二人……意味わかんない……)

由美恵:
メリー? どうしてここに……?

蘭子:(唖然・困惑)
(な、なんで鹿苑寺卿のメリー奥様が「こんなところ」にお一人でいらっしゃるの……!?
しかも、何してるの……)

メリー:
急なお泊りになりまして、信久さんに使うエネマグラとローションを買いに来たんですの。
そしたら偶然、來奈様とソニアさんにお会いして♪

來奈:(小声)
信久お兄ちゃん……そっちが好きなんだ……女の子みたいに鳴かされちゃうんだ…

ソニア:(小声)
ま、まあご夫婦ですし……それぞれの趣味ということで……
幸せなら、それでいいかと……

由美恵:
あのさメリー、あんまりそういうの口にしない方がいいよ……
旦那様の名誉が……
 
お姉さん:
梨乃ちゃん、梨緒ちゃん、今日はお仕事じゃなかったの? 来てくれて嬉しいよ!

梨緒:
お昼ご飯に寄りました。

梨乃:
後輩たちも一緒に連れてきたの。

美月:
お店のハンバーガー、嬉しいです。メイド学校ではこういう味、なかなか食べられませんでしたから。

優:
さっき通ったのが、私たちが通う事になる学園でしょ? 近いし、気に入ったらいつでも食べに来られるね。
それにこの値段…安い! ほんとに学生向け!

菜乃:
梨乃奥様の立場で、どんなお昼に連れて行かれるのかドキドキだったけど…
こういう学生らしいお店で、ちょっと安心しました…

美月:
こんなお食事も召し上がるなんて…ちょっと意外ね。

梨緒:
奥様は、贅沢な食事なんてほとんどしませんよ。このハンバーガーセットでも、むしろちゃんとした食事の部類です。
放っておけば、スーパーの特売で纏め買いした冷凍ピザだけを一週間食べ続けても平気な人ですから…。
付き合わされる専属侍従の身にもなってください。健康面は、まあ、あの世界なら大丈夫かもしれませんけど…。

美月:
えっ…? 特売の冷凍ピザだけ?

優:
しかも電子レンジでチンだけ…?

梨乃:
梨緒、文句あるの?
それより、みんな「カスタムバーガーセット」でいい? ドリンクは好きなのをお姉さんに頼んで。セットに含まれてるから。

優:
はい、わかりました!

メリー:
ビーフボウルが食べたいのですわ♪ メイド学校にいる間、せっかく日本に来たのに…ずっと本場の牛丼屋さんで食べてみたかったんですの。

來奈:
わかる〜。カナダにも似たような牛丼屋はあるけど、本場の味はやっぱりちがうよね。
アメリカ行った時は良牛でよく食べてたけど、日本のお店で食べるのはなんか特別感ある♪

蘭子:
高級中華とか夢見てた自分がバカだった……良牛とは……はあ……(溜息)

ソニア:
まあ、昼食がアンタの花恋ご主人様の軍用レーションとか、梨音お嬢様のコンビニの肉まんで済ますよりは、だいぶマシだと思うけどね。

由美恵:
本当に……こういうお食事をされるんですか、ご主人様。
昼食が軍用レーションとか、コンビニの肉まんって……。

ソニア:
夕食は、まかないのメイドカレーを「美味しい美味しい」って喜んで食べてたし、
朝食も、二日目からは本人の希望で「パンとチーズだけ」になってるよ。

由美恵:
……そう、なんですね……。

ソニア:
だから、覚悟しといたほうがいいよ。
逆に言えば、由美恵がうまく誘導すれば――もっと贅沢な食事にもなるかもね。

蘭子:
そうそう。由美恵が頑張れば、ご主人様もちょっとは贅沢してくれるかも?

由美恵:
そ、そんな……とんでもないっ!
わたし、そんな目的で近づいたわけじゃありません!

ソニア:
あー…そうか、ご主人様って、自分のためには贅沢しないけど、誰かのためならするんだよね。

蘭子
……うちのお嬢様も奥様方も、なんでこう…メイドより質素な食事してるんだろ。
誰の影響なんだろうね……ほんとに。

エステル:
国連から……?
現在危険域に達している軍拡競争に対する、緊急共同非難決議への参加要請……?
「非難決議」なんて、いったい何の意味があるのかしら。
わたくしも……ですが、人を大量に虐殺してるような連中が、そんなもので態度を改めるとは到底思えませんのに。
とはいえ……返答しないわけにもいきませんし……ああ、どうしたものかしら……。

マリアンヌ:
ご主人様っ! またそんなもので食事を済ませて…!パークス(レスフィーナのこと)ですか? 
昨晩も、ベッドに入ってすぐ抜け出したの知ってるんですよ?
ここ何日もまともに休めてないのに、せめて食事くらいはちゃんとしてくださいってお願いしてるでしょう!?

エステル:
ちゃんと摂ってますわよ? ほら、これ……カロリーはしっかりありますし。
あとでサプリメントも飲みますから、大丈夫ですわ。

マリアンヌ:
……それ、レスフィーナさんと全く同じ言い訳ですっ!!
もう…あの方も、いつもカロリーメイトで済ませてるからって、真似しないでください!

マリアンヌ:
わかりました…。ご主人様はもう、私の言うことなんて聞いてくれないんですね。
……私、泣きますよ?

エステル:
ま、待ってくださいまし!
今この瞬間、わたくし、心を入れ替えましたわ!
どうかお許しを――!

マリアンヌ:
……具体的には、ご主人様。今からどうされるんですか?

エステル:
ええっと……オーナーの方々の到着が予定より遅れそうですので、
今夜はリズさんのファミレスで、マリアンと綾愛さんとご一緒に、ちゃんとお食事をいただいて……
その後はお風呂に入りまして、皆さまが揃われるまでは、マリアンと自室で静かに過ごすことにいたします。
お約束いたしますわ!


マリアンヌ:
本当ですね? その約束、破ったら……私、ご主人様のこと……知りませんから。

エステル:
はいっ! 承知しておりますわ!

エステル:
(オーナー達が今夜中に集まりそうなら、悠里と紅葉さんに頼んで一時的に日本周辺の空路を混乱させて到着を明朝まで遅らせる事も検討しなけばなりませんわね)