Shell moon のえんぱいあな日々 第四話 UNDER/SHAFT その19
由美恵:
(戦場より緊張する。なんか空気がピリピリしてる……)
(ご主人様……まったく動じてない。こんな場でも、堂々としてる……)
(……ううん、そうじゃない。堂々というより……もう「決めてきてる」顔だ)
エステル:
皆さま……
本日はご多忙の中、当評議会にご参集いただき、誠にありがとうございます。
ここ数ヶ月、皆さまのもとにも、
武装勢力による実行作戦の情報が届いているかと存じます。
そう──
本来であれば戦場から遠く離れたはずの日本。
その地にある“エンパイアクラブ本部”、
まさに今、皆様がこうしてご着席されているこの場所が、
旧評議会議長・セリア・ヴィクトリアを首謀者とする武装組織によって、
アーマーメイドと強制使役されたメイドたちによる武力侵攻の標的とされたのです。
エステル:
この「評議会」こそが、まさに狙われたのです。
この議場そのものが、“戦場の中枢”として計画されていました。
だが、狙われたのは私たちだけではありません。
本作戦では日本政府機関のみならず、
民間都市部すら攻撃対象に含まれ、
多くの一般市民が命の危険に晒されました。
これは内部抗争ではなく、
政治的な摩擦でもなく、
現実に発生した「戦争行為」であり、
我々の日常がすでに「戦場の延長線」にあるという、否応ない証明です。
だからこそ今、ここに皆様が集っている意味があります。
この評議会は、「始まりの会議」であると、私は信じております。
エステル:
この異常事態を受け、各国は即座に防衛力の見直しと、
迅速な即応体制の確立に向けて動き始めました。
今、最も注目されているのが──
量産型アーマーメイドの緊急配備計画です。
その中核を担ったのが、我がメリタリア防衛部隊にて投入された、
量産型アーマーメイド「守人(もりと)」。
この守人を開発・提供したのが、
評議会メンバー・「月空來奈(つきぞら らな)」評議員が率いる、
月空アームドインダストリーでございます。
皆様の中には、すでに「守人」の名をご存じの方もおられるでしょう。
ですが、言葉では伝わらないものもございます。
ここでまず、守人の実戦映像をリアルタイム中継にてご覧ください
SE:
シュビィーーン! シュヴィィーーン!
SE:
ゴガーン!
一瞬で破壊されるF35
SE:
ガシャン!
蹴り飛ばされてスクラップになるアパッチ攻撃ヘリ
会場:
おぉ・・・・
SE:
ゴオオオオオオオンっ!
次々と破壊され爆炎となるM1A戦車
会場:
驚愕に静まりかえる会場
エステル:
──いかがでしたでしょうか?
資料の23ページに、
守人と戦闘機群との性能比較と運用コストがまとめられております。
そして右下に記載されているのが──
守人の本体価格でございます。
(空気が変わる)
……本会議では声に出すことは控えさせていただきますが、
すでにお察しのことでしょう。
(会場、どよめき)
「この価格で…?」
「リース可能…?」
「維持費込みでこの数値…?」
エステル:
──「ご納得いただけたようで、何よりですわ」
エステル:
このプロジェクトは兵器の話ではありません。
これは、新しい秩序と安全保障の選択肢です。
✦ 実戦力
✦ 産業連携
✦ 安全保障の再構築
✦ 民間とメイドの共存
──そして何より、皆様の事業分野との協調によって拓かれる未来です。
ただの収益ではありません。
誇りを伴う投資。
争いを減らす参加。
皆様の「未来への一手」を、
ぜひ、この場から踏み出していただけますと幸いです。
エステル:
それでは、これをもちまして──
第76回エンパイアクラブオーナー評議会 総会 開幕セッション
これにて終了とさせていただきますわ。
明日以降、分野別の実務部会・契約調整が順次開始されます。
本日はどうか、自由にご歓談とご準備の時間をお過ごしくださいませ。
……皆さまのご判断と、未来へのご参加を、心より楽しみにしておりますわ。
その20 へ続く